「━━!……━、━━……!」

━━誰かの呼ぶ声が聞こえた。
ゆらゆらゆら。羊水にも似たこの中まで、わたしを呼ぶあなたはだれ? とても気になるけれど、でも残念。目覚めるにはまだ早い。ぶくぶくぶく。呼吸が泡になって消えていった。そして意識も水底に。

▽▽▽


「じ━━━! ……ァァ━━━━━!! ━━アアアア……!!!!」

━━誰かの悲痛な叫び声が聞こえた。
ゆらゆら。何を叫んでいるかはわからない。それでも喉を潰さん限りに響くその声を聞くと、なんだか安心してしまう。どうしてだろう。何処か、ここではない場所で、わたしはこの声を聞いていたのに。とても気になるけれど、でも残念。ちっとも思い出せやしない。

▽▽▽


「……分か━━。━━ない━━な━━━! ━━、━━━━━━!」
「だって……━━━━━━━ない! ━━━ない! ど━━━━━━━━!」

━━誰かの祈る声が聞こえた。
ゆら。私はこの祈りを知っている。ああ、憎らしいまでに、私はこの声をしっているのだ。愚かな小娘の、悲痛な祈り。内側から響いてくる激しい慟哭。ああ、きっと。きっと。もうすぐ、もうすぐ私は目覚めることができるのだ。

▽▽▽


「サーヴァント、アヴェンジャー。召喚に応じ参上しました」

━━目覚めた先は、知らないの場所。
私は、また新たに生まれたのだ。人々の、そうあるべきだという信仰を拠り所にして。聖処女(あの女)の在り方を否定して。
かつて、誰かの願いで産み落とされたわたしではない。私は、アヴェンジャー。復讐の魔女。誰に望まれることも、求められることも、愛されることもない、哀れでちっぽけな小娘。そんな私の力を、この憎悪の旗を、望み、喚んでくれると言うならば━。

「……どうしました。その顔は。さ、契約書です」

━━私は、それに応えましょう。
だから覚悟なさい。あなたには、地獄の底まで付き合ってもらうのだから。



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