ヨモツヘグイ 07




刺された鬼は、悍ましい悲鳴と恨み言を吐きながら、ボロボロと崩れ去った。

其の様を見届けた後、肩越しに後ろを見やれば、幼馴染みソックリの人物が居た。

モノクロの画面越しに見たかの様な幼馴染みの姿に、軽く言葉を失う。



……ザンッ!



##NAME1##の手足を拘束して居る異形のモノ達の手の上に、先程まで鬼の口に刺さって居た刃が振り落とされた。





「ギャッ!」

「ギイィッ」





短い悲鳴。

腕を切り落とされたモノ達は、一斉に地中へと逃げ込んだ。





(白一護)「退け。」





どんッ





「!?」





視界が回る。

護真は、幼馴染みそっくりの人物に、横から思いっ切り突き飛ばされた。


獣が唸る様な、不気味な咆哮が辺りを満たした。あたしは大きく目を見張った。



……オオオオオォォォ……



驚異の集団が、低く唸り、彼へ一気に、なだれ込んで来た。

闇色の底も、再び蠢(ウゴメ)き、ドス黒いモノ達が姿を現した。


腐ったの手が、彼の首筋や足や腕に当てられた。

触れられた部分から、ドロドロと侵され腐って行く。

其の肌が、彼から剥がされて行く。精神の壁が崩されて行く。

彼から、己という存在が、徐々に負の闇に呑み込まれてゆく。





「(冗談じゃ、ない。)」







ギリリと歯を食いしばる。

目が眩む。眩暈。呼吸を忘れる。





「やだ……ッ!」





瞬間。

身に圧し掛かる重苦しい空気を振り払って、駆け出して居た。

そして、スローモーションに陥る世界。



「ッ!?、―――馬鹿!!」





其の声が、スローの世界を崩し去る。

彼に向って振り下ろされた刃が、彼女の頬を掠める。

緋色が、散る。其の色を、彼は確かに見た。




「つ……ッ」




片手で頬を押さえる。

幼いながらも整った形の指の間から滴ったのは、紛れも無く、血。

押さえる為に上げた腕にも、鮮やかな裂傷。ザックリと切れて居て、肌の色をジワジワと緋色へ染まって行く。

傷を負わせ、緋い血を滴らせた##NAME1##を見て、刃を持った異形なモノは、傲岸(ゴウガン)な眸(メ)で、薄く笑った。





「―――――――」




刃を持った異形を持て囃す集団の歓声、傷の訴える痛みを堪える##NAME1##の呻き声。

其の中、彼は、拳を握る。皮膚が避け、爪も割れる程に固く握り締める。奥歯がギシリと軋む。

全身は、強く震えた。其の奥から、沸々と湧き出て来るのは、苛つきに似た、怒り。





「ナメた真似、してんじゃねーよ!!」





刹那、彼の手の中にあった剣が姿を変えた。

時代劇によく出て来る日本刀から、柄も鍔もハバキも無い、出刃包丁の様な形状の刀身のみの、彼の身の丈位の巨大な刀へと。

其れは、感情と云う呪(シュ)の力と、彼の内(ナカ)に宿る力に依って、形作られた刃。



パァンッ!!



鼓の音に似た音色が稲妻の如く意識を裂く。

彼の怒りが、具象化する。空気に纏い、衝撃波と成り、辺りに爆散した。

突風ともとれる透明な攻撃を、まともに受けて、足元の異形の闇地が、散り散りに霧散した。

目の前の集団の、前衛に居たモノ達の武器も、たちまち砕け散った。





「(消えた、の?)」





そうして、負の気配が一気に弾け飛んだ後、漸く呼吸が楽になり、##NAME1##は全身から力が抜けた。

額には、何時の間にか、脂汗が滲んで居る。其れを無造作に拭いながら、##NAME1##は彼を見遣った。



彼は、ゆっくりと護真から離れた。

そして、猛然と空を駆ける。

鬼達は、凄(スサ)まじい勢いで、彼に倒されて行く。



##NAME1##は、見間違えではないかと、自分の目を疑ったが、確かに見えた。

幼馴染みの彼からは、想像も出来ない、嗜虐(シギャク)の色が、其の目に走って居たのを……――――――。















And that's all・・・?
(それでおしまい・・・?)

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解せぬ花