いつからこんな癖がついてしまったのかは、もう思い出すことはできないけど。現在の自分がどれだけ浅はかで阿呆なのかはよくわかる。
「鼻血がどまりまぜん銀ざん!!」
「お前またやらしい妄想してたんだろ」
「し、してな…くもないでふ」
「ひくわー。銀さん超ひくわー」
「そんな銀さんもハアハア」
「知り合いだと思われたくないから近寄らないでくれる?」
辛辣な銀さんに先を歩かれ、私はぼたぼた滴り落ちる鼻血を必死に抑えながら後をついていく。
実は私と銀さんの付き合いはまだたったの一か月。すでに私の正体(というか妄想癖)を知られてしまい、最初は可愛い可愛いって言ってくれていたのが今ではすっかりこの調子。さっちゃんと変わらない扱いありがとうございまあああす!
私はいわゆる、トリップというやつを経てこの銀魂の世界にやってきた。まあ、そういう設定の記憶喪失ということにしても良い。なんでもよい。私は妄想さえできればそれでよい。よいよい。
本当はトリップするなら一番行きたかった本命の世界が別にあるんだけど…
この際それは私のわがままなのでここにいるだけでもありがたいと感謝してる。
「銀さーん」
「鼻血止まったら呼んでくださーい」
「止まりましたー」
「嘘つけ!そんな早く止まるわけねーだろ!」
「銀さんが優しくしてくれたらすぐにでも止まりまーす!」
「妄想の糧は与えませーん」
ちえ。ばれたか。
「最初とは大違いだよなー。本当、だまされたよ」
「私、一応人見知りなんで」
「えっ、もしかして、銀さんですか!?えっどうしようえっ、あの、ずっとファンでした…!((ノェ`*)っ))タシタシ って言ってた可愛い子はどこに行ったんだろうな」
「はいはいここに居ますよここに可愛い子」
「詐欺で訴えたい」
なんでよ!?どこからどう見ても可愛いでしょ!今は鼻血出してるけど!
「あーあ、変な拾いもんしちまったな」
「ただでさえ仕事なくてお金もない万事屋なのにね」
「まだ一か月そこらの従業員がそんなこと言っちゃいけませんー」
「そろそろ土地勘出来てきたし、私も仕事しようかな!」
「お、いいね、頑張って稼いできてくれよ」
「何言ってるの?仕事見つかったら万事屋出ていくに決まってるじゃない」
あ、ひでー!薄情者!恩知らず!
と何か言っているけど、そっくりそのままお返しします。私は別に、登場人物の近くに居なくてもいいの!とにかく毎日遠くからでも見て萌えを供給してもらえたらそれでいいの!勝手に妄想して楽しめたらそれでいいの!
でも外で鼻血はやばいから妄想は室内でほどほどにしなきゃね…。
「なまえ」
「えっ…」
銀さん?そんな真剣な顔して唐突の壁ドン…
「本当に…出ていくつもりならさ」
「えっえっ…?」
「銀さん、何しちゃうかわかんねーよ?」
「な、な、な、」
「何しちゃうんですかー!?!?!?」
「うわっ!?汚っっ!?!?」
ブーッと噴出した鼻血が地面を赤く染めていく。はい、お察しの通り妄想が爆発しました。私トリップ前はこんなに鼻血キャラじゃなかったはずなんだけどな…。これがトリップ補正?異世界クオリティなの?
「銀さん…今度銀さんの血を私に注入してくだはい」
「無理」
ですよね。