memo


思いついたものたちのゆき先。
小ネタやSSSのはきだめ。
いつか短篇(長篇ネタ)になるかもしれない。

ドラコ・マルフォイ

 鴇色に染まった耳朶の縁にまで纏わりつくようなやさしい声が、柔らかな縁へ何度も、何度も、彼女の名前を囁きかけては、白絹のように色白な頬を指の腹でそっと撫ぜ上げる。彼の指先に触れられている箇所だけが、まるで微熱を持ったように熱く火照ってしまうので、思わずその手に手を重ねると、膝の上で無防備に横たわっている彼の秘色が、彼女の瞳へひたむきに注がれた。背中へ流していた黒髪の一筋を器用に引っぱり出して、指の、かすかに節くれだった関節にくるくると巻きつける。耳に掛けていた髪の一束が、一緒になってするりと滑り落ち、ふっくらとした唇の膨らみに触れる。果実色の表面に塗られたリップクリームにぴたりと貼り付いた髪を見て、ドラコ・マルフォイはくすりと微笑みを零す。丁度好い厚みのある太腿の上で、悪戯っぽく頭を揺らしてみせる。その口許は、既に可笑しそうに緩んでいるのだから、困る。ひどく愛おしい気持ちになって、彼女はドラコの唇に自分の唇を押し付ける。ちゅっ、というリップ音が短く響いて、ドラコが一瞬、面食らったような貌をする。ホグワーツの中庭には、昼食時だからか珍しくひと気がなく、完璧に、奇跡的に、二人きりだ。この好機を逃すわけもなくドラコは、真剣な様相をして彼女の唇に唇を押し当てる。薄い唇の表面は驚くほどしっとりと潤っていて、皮剥けや荒れ等ひとつも起こしていない理想的な状態だった。彼女は思わず、感嘆の声を上げて言った。

「ドラコの唇、とても綺麗」
「そうか?……まぁ、君には負けるさ」

 彼女の細い人差し指が、薄い唇の輪郭をゆっくりと辿ってゆくと、少し気恥ずかしげにその端が緩められる。擽ったいだろ、と言いながら彼女の頬を撫でる彼の表情は、俄には信じ難いほどに穏やかでやさしい。彼がこんな貌をすると知っている人間は、この世にどれだけ居るのだろうか。


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