心も体躯も 人生に入り混じった 小さな刃に 無慚に切り裂かれていた 手前に広がり 色彩いろの散った残像を 唯、漠然と見据えていた この瞳 私を満たした 生温い深紅 愴みなんて 疾うに棄て去っていた気で 一縷の希望を抱き 太陽を迎え続けた 途方も 宛すらも無く 漸く立ち止まった、この一瞬に 総ての経緯いきさつを 懐旧して 足許に連なっていた 痕を見たの これこそ痕が 私が 薔薇であるのだと、 証明した。
薔薇