レンズ越しに君をみると
いつも隣で笑っている
君のその笑顔も
小柄で華奢な体も
フィルムにだけではなく
ずっと僕の腕の中にすっぽり収まっていてほしかった
でも、
空の色が変わっても
星がまわっても
君とのリズムが交わらない
年の差の数に僕は時々もどかしくなってしまう
『Distance』
カシャ!
「あー!また勝手に撮ってぇ。今度からモデル料とろうかなぁ」
「いっつも隣にいるからだろ」
「だって、ひろし君といると色んなところいけるから楽しみなんだもん」
「あーあバイクの免許とったらこうだもんなぁ」
「だって1年も待ったんだよ」
「しょうがねえだろ、免許とってから1年は人、後ろに乗せれねぇから」
「でも1年あったおかげで、じゃん!」
「おっ!」
「へへーついに、マイヘルメット。お金貯めて買っちゃった」
「中々いいじゃん。でもよーまる子、俺と遊んでいていいのかよ?」
俺は嬉しいけど
「へ、なんで?」
「だって、今年受験だろ?」
「ひろし君まで…お母さんと同じ事言うんだ…」
あっ、拗ねたな…ったく。受験の話すると、こうだからなぁ。しょうがねえな。
「わかったよ!今日は、まる子の行きたいとこ連れてってやるから…ちゃんと帰ったら勉強しろよー。」
「やったぁ!どこにしようかな♪」
プッ単純なやつ
「今日は、港の方がいいなあ」
「よしっ、じゃあ行くぞ」
「うん♪」
ブルルッ、ブルルッ
ブゥーン…。
「やっぱり早ーい!」
「あ?なんだって?」
「たのしーい!」
機嫌なおったみたいだな
「よしっ!もうちょっと、とばすぜ」
ブゥーン。
そして港に着いた
「着いたー!今日は、天気がいいから、富士山がよくみえるね?って…もうっ!また写真ばっかり!」
カシャッ
「こんなに、富士山キレイに見える日滅多にないからな、おっ!いい感じにカモメが飛んできた」
「もうっ!…はぁーいいなぁー高校生は。気楽そうで」
「今さら何言ってんだよ。まる子は、いつも気楽だろ?」
「ちょっと、ひろし君。あんたも失礼な人だね!まる子だって、色々悩んでるんだからねっ!」
「あははっ悪りぃ、悪りぃ。まあ受験のことだろ?」
「うん…だってね、勉強の事もあるけど、ひろし君と同じ高校に行けても、1年しか一緒の高校にしかいけないんだよ?」
「そんなの…中学のときもそうだったろ?」
彼女が言いたいことは、わかってる。
「違うよ!今度は…ひろし君が進学でも就職でも、静岡からいなくなっちゃうから…」
彼女も、うすうす気づいていた。今みたいに、君と居られる時間がそう長くないことを。
「…行かねえよ」
ポンッ、ポンッ
「えっ?」
「どこにも行かねえよ」
「ほんと?」
「余計な事、考えなくていいから、だから、今は勉強に集中しろ…受験終わったら、もっと遠いとこに連れてってやるよ!」
励ます…これが、今の僕が彼女に精一杯にできること
例え、彼女が言ってる事が正しいとしても
「ほんとっ!?やったぁ!」
「そのかわり、俺と同じ高校に、絶対入れるよう、がんばれよ!」
「うん、わかった。がんばるよ!」
今は、余計な事を考えず、まる子が同じ高校が入れればそれでいい。
「でも、まる子と同じ高校になったら、毎日バイクに乗せなきゃいけなそうだな、遅刻しそうだし」
「だって、そのためにマイヘルメット買ったんだよ」
「えっ、マジかよ…」
「なーんて嘘だよん」
「いや、お前の場合シャレになんねぇーから…」
「えっ、真顔で言われてるあたしって一体…」
あと、何回このバイクに乗せてあげられるだろうか…
もし、同じ歳に生まれて君に出逢えてたら…もっと長く一緒に居られるのに
もし、離れても、何年たっても君が隣に居てくれるのなら…
色々考え出すときりがない。
「ねえ、見て!夕陽がキレイだよ!」
「……」
「ぇ…ねぇってば!写真撮んなくていいの?」
ビクッ
「あ、ああ」
「どうしたの?」
「いや、別に…」
「ひろし君も悩み事?まる子で良かったら、どーんと言ってよ」
シーン…
「ブッ、アハハハハッ」
「えっ、なんで?笑うのさ!」
「ハハハ…まる子に心配されるとはなぁ」
「むーまた、子供扱いしてぇ」
「うそ、うそ、心配してくれてサンキュ!」
ワシャワシャ
「本当に大丈夫なの?」
「おう!」
まあ、いいか。今は彼女が心配してくれたから、それだけで十分だ
「あっ!富士山に夕陽が沈んでいくよ」
カシャッ
「キレイだね…」
「ああ…」
パシャッ
もし、離れてしまっても、この瞬間を忘れないように
「もう、暗くなるから帰るか?」
「うんっ!」
君と過ごす、貴重な時間を、忘れないように、フィルムと瞳のアルバムに焼きつけ…
ブルルッ、ブルルッ
ブゥーン…
また、一つ僕等の夏が通りすぎていく…
〜END〜
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