18歳春。私は東京の短大に入った。
明日からこの清水から東京へ上京する事になる
なので着々と荷造りをしていた。
「これは、いらないしー。これはー使うか…後はー」
「あんた、そんなに荷物もってて、どうすんの!しかもガラクタばっかり」
「お母さんにはガラクタかもしんないけど、あたしには、宝物なんだよ」
「なんで昔からあんた変わった物集めるの好きなんだろうねぇ…夕方までには終わらせるのよー」
「わかってるよ」
「さー晩御飯の用意しないと」
「あーもう最後までうるさいお母さんだね。」
とその時だった
片付け物からヒラリと何か落ちた。写真だ。
んっ?小学校のあたしだ。
写真の裏には、
まる子とひろし君
子供の日の思い出
1974年5月5日
と書いてある
「あー!懐かしいなぁ…。ひろし君と初めて会った時に、撮ってもらった写真だ!…ひろし君…」
あれはちょうど2年前の3月。あたしは高校1年生で、3年生が卒業した後だった。
それは、ひろし君がこの街からいなくなる2日前の話…
ひろし君に呼び出され、家へと入った。
ひろし君の話す事に私は耳を疑った
「えっ?アシスタント?だって!?カメラの専門学校行くって、言ってたのに…しかも東京なんて…」
「あぁーでも、うちは母子家庭だろ?学校行くと色々金かかるから母さんに迷惑かけらんないし。
しかもアシスタントから入った方が、最初給料安いけど、色々勉強できるからな!」
「もう、アシスタント入りする人決まってるの?」
「あぁ、去年学祭で、写真部の写真展開いただろ?」
「うん」
「あの時に、たまたま、プロのカメラマンが観に来てて、俺の写真みて、お前、筋がいいって言われて、もし何かあったらって名刺もらったんだよ。」
「えー!すごいっ!」
「俺も最後まで迷ってたけど、このカメラマンがアシスタント募集してなかったら、奨学金制度もあるし学校いこうと思ってたさ、でもせっかくのチャンスだし、しかも、これから、海外とか、色んなとこ行くんだぜ…楽しみだな!」
夢を想う彼の笑顔は、まぶしいほどキラキラ輝いてた。まるで、夢を語る子供のように…
昔と同じ表情で…
「夢の第一歩だね!おめでとう!!あたしも漫画書くのがんばらないとねっ!」
「おう!がんばれよ!」
「でも、でも寂しくなるね…」
ひろし君がこの街からいなくなる…そんなことは考えた事もなかった。
「そっか…いつから働くの?」
「明日からもう、東京の方に行くんだ。」
「ええー明日!?それまた急だね…」
「本当は先週に決まってたんだ…バタバタしてたのもあるけど、中々言い出せなかった…ゴメンな言うの遅くなって」
「うん…忙しかったからしょうがないよ…」
本当は行ってほしくないっ…けど言えなかったんだ。
夢を想う気持ちは、あたしにも痛いほどよくわかる。
第一に彼の邪魔をしたくなかった…そもそも、あたしが行かないでって言ってたところで、何か変わるわけでもない事はわかっていたのだ。
付き合ってるわけでもない…ただ夢をわかちあえる唯一の友達なのだから
「あたし明日、見送りに行くよ」
「いや、別にいいよ、だってお前絶対泣くだろ?」
「…泣くかも」
「だろ?俺お前に泣かれたら…困るよ…参ったな…」
「ひろし君が嫌でも、あたし絶対!絶対!行くからねっ」
「嫌なわけないだろ!わかったよ。朝9時の電車に乗るから、その前に来いよ」
「うん♪」
カシャ!
「あーまたいきなり〜!!」
「今すっげーいい笑顔してたからさぁ」
「もうっ!
…じゃーあたしそろそろ帰るね色々荷造りとかの用意あると思うし」
「あぁー呼び出して悪かったな」
「じゃー明日ね」
ひろし君の家からでる
本当は、残り少ない時間いっぱい話したかったけど…これ以上いたら泣いてしまうので、ひろし君の前にいれなかったのだ
「東京か…私も東京に行けば夢に近づけるだろうか…」
そう思いながら帰り道…ひろし君と初めて会った空き地へ自然と足が向かっていた。
土管に座って空を見上げる
ひろし君と初めて出会った場所…
明日この街からひろし君がいなくなってしまう…
今年からは一緒に子供の日を過ごせないんだね
「東京…遠いよ…しかも海外なんて…」
なぜ私の大切な人はみんないなくなってしまうのだろう
小学校3年生の時の男の子もそうだった。その子もいつも輝いていて、大きな夢がある子だった
絵描きのお姉さんだって、北海道にお嫁に行ってしまったけど、夢に向かって進んでいた。素敵な人だった。
大切な人…確かに今の2人は大切な友達(ヒト)だった。
でも今回は違った。
ひろし君も大切な人、そう、私にとっては初めて友情から愛情に変わった人だった。
その感情が芽生えたばかりだったのに、こんなに別れがくるのが早いなんて思ってもいなかった。
でも私は、何も伝えるつもりはなかった…彼を困らせるくらいなら、この感情を抑えた方がいいと思ったのだ
その後私は、日が暮れるまで、空を見上げていた
そして次の日
昨日は中々眠れなかったけど、寝坊せず、急いで用意して駅のホームへと向かう
「あっ!ひろし君おはよ!」
「おはよー」
彼の笑顔がまぶしい
「今日は寝坊しないで来たなっ」
私の頭をワシャワシャなでる
「もう、今日は大事な日だよ!寝坊するわけないじゃん…」
「そうか…」
その時だった私はギュッと彼に抱きしめられて、彼は優しく頭を撫でてくれた
私はグッと涙をこらえる
「アシスタントがんばってね…」
「おう…あっ手紙書くよ」
「うん…待ってるよ」
ボソッ
「ももこ…ごめんな…」
「えっ?」
「じゃーそろそろいかなきゃな…」
ゆっくり私の体は引き離される
彼は電車に乗り込む
「じゃあね…またね…」
「ああっ!ももこも元気でな」
プルルルルー
電車のベルがなる
〜まもなく電車が発車しますご注意下さい〜
プシュー
ドアが閉まる
彼は笑顔で、手を振ってくれた
私も涙をこらえて、一生懸命笑顔を作って手を振りかえす
だんだん電車が離れていく
私は、電車が見えなくなるまで、ずっと、ずっと見送った…
ひろし君…
(オレは大人になんかならない。好きなことを捨てちまうのが大人になるってことなら、オレは子供のままでいいっ)
初めて会った時は彼はこう言ってたのに…ずるいよっ!
先に大人になっちゃうなんて…
今までこらえてた涙が、一気に溢れ出す。
ひろし君さようなら…私の大切な人…また会えるよね?
涙で視界がぐちゃぐちゃだ。涙はずっと止まる事はなかった。
この頃から私は、今以上にマンガを描く事だけに集中した、少しでも早く夢に近づけるように…
バイトもして、お金を貯めるようになった。
もしかしたら早く東京にに行ってひろし君に会いに…
夢に向かってがんばるひろし君に近づきたかったのかもしれない。
あれから2年の間
最初はひろし君から手紙がちょくちょく来ていた。
まだ、始めたばかりなので、機材を運んだり、ロケ地まで運転したり、そういうような事をばかりしているという。でも、楽しいという内容だった。
しかし、半年くらいたった頃だろうか…パッタリ手紙が来なくなった。
ひろし君どうしたんだろう…忙しいのかな?
それからずっと、待っても待っても手紙が来ることはなかった…
ひろし君がいなくなって一年、私は、何度も何度も、マンガを編集部に送ってやっと、もう一息賞というとこまで来ていた。
そして、高校3年生の半ばには何度もマンガが入賞し、私は、これはマンガ家になるための一生に一度のチャンスだと思い
改めてマンガ家になると決意をした。
まだデビューは決まっていなかったが、東京に出版社の本部があるので、親の反対をおしきり、東京の短大に行くことに決めたのだった。
そして、2年たった、今年…短大は見事合格し、今にいたるのである。
私は、まだ、子供の日の思い出の写真を見つめていた
ねえ、ひろし君…ひろし君に会ったら、たくさん話たい事があるよ。
ひろし君…今、どこにいるの?
ひろし君に会いたい…
「ももこっ!ボサッとしてもう荷造り終わったの?もう少しで晩ご飯だよ」
「んーもう少しで終わる」
私はその写真を大事にしまった
そして私は、明日、清水から東京へ旅立つ。
2年前の彼と同じように
そして…東京に来てから、3ヶ月がたった…
東京にはようやく少し慣れたものの、
私の生活リズムは清水にいた時と変わらず、学校、バイト、マンガの3拍子だった。
相変わらず、マンガも入賞はするが、デビューまでには至っていない。
「さぁー今日もマンガ描くぞ!あっ、インクが切れてたんだ買いにいかないとっ!」
私はを買いに画材屋へ走った
その途中、珍しいものが目に飛び込んできた。
「あれっ?こんな所に写真展なんかやってたっけ?あっ、日付が昨日からになってる」
とりあえず、宣伝用のパンフレットだけ、とって画材屋へ向かいインクを買い家に帰った
写真展のパンフレットを広げて見てみると、
「確かこの名前…ひろし君がアシスタントしに行った人の名前じゃ…」
ひろし君からきた手紙を引っ張り出して、照らし合わせてみる。
やっぱりそうだ!
私は思いがけない繋がりに驚き嬉しかった
明日写真展にいってみよ!もしかしたらひろし君の事何かわかるかも!?
次の日
私は、写真展に踏み込んた
「わぁ…綺麗…」
写真は、主に風景から、人物、動物様々だ。
ひろし君も、この同じ風景を見てたのだろうか…
「お嬢さん…」
振り向くとおじいさんがたっていた
「写真気に入ってくれたかね?」
「はいっ、とても綺麗で一つ一つの写真が生き生きしてる感じが素敵です」
「この写真はワシの息子が撮ったんじゃよ」
「そうなんですか!?」
「あぁ、息子は昔からカメラが好きでねぇ、ワシも昔趣味でカメラをしていたんだが、それを見てかわからないが小さい頃、カメラをほしがってな…
誕生日に一眼レフのカメラ買ってあげてから、ずっーと写真を撮るようになった…大きくなってからも、カメラの事しか考えておらんかった…」
まるでひろし君みたいだな
「それがまさか、プロのカメラマンになるとはのう…今では、アシスタントまで雇って、ちょうどお嬢さんくらいの年の青年だ。偉くなったものだ…本当に」
それって、やっぱりひろし君だ!
「息子はずっとアシスタントなんてもんは、ずっととらんかったのだが…よっぽど気に入ったのか、
2年半前くらいから雇い始めたのじゃ…今もアフリカまで一緒にいっておる。」
「えっアフリカですか!?」
「あぁー今回は、アフリカの自然と動物をメインに撮るって言って日本にでてから、もう2年くらいたつじゃろうか…
よっぽど忙しいのか全く連絡がなかったのじゃ」
だからひろし君も手紙だせなかったんだ
「だが、つい先日エアメールが届いてのう…今週日本に帰ってくると連絡があったんじゃ」
「それはいつですか?」
「確かアフリカから、カイロからの直行便で成田空港に帰ってくるはずじゃ、土曜日到着するって、書いてたのう」
「そうですかっ!?ありがとうございます☆また来ます!」
「あぁ…またぜひ来てくだされ〜!
ん?しかしなんであのお嬢さんは、息子の帰る日を知りたかったんじゃろうか?よっぽど写真気に入ってくれたのかのう…」
私は勢いよく写真展を飛び出した。
ひろし君が帰ってくる!
あまりの嬉しさに、全速力で走り、あっという間に家に着いた
プルルルルルー
あっ電話が鳴ってる
「はいはい今でますよーっと」
「もしもし?」
「あっももこ?」
「お母さん、どうしたの?」
「ももこ宛に、エアメール届いてたみたいだから、そのまま、ももこの家に送っておいたから」
ひろし君手紙送ってくれたんだ!
「ありがとう!お母さん」
「それより、あんたっ!手紙うちに届くって事はまだ住民票新しく移してないでしょ!?」
「あっ!忘れてた…」
「もうあんたって子は…」
お母さんの説教は何十分も続いたが、全然苦ではなかった
ひろし君がちゃんと手紙を送ってくれた事
私の事忘れてなかった事が嬉しくてたまらなかった
それから次の日、お母さんに送ってもらったエアメールが届いていて、早速読んでみた
内容は、手紙ずっと送れなかった事の謝罪と、今週の土曜日に帰国する事が書いてあった
「午後の便で帰ってくるのかぁ…迎えに行って驚かせちゃおう!」
少しでも早く会いたくて土曜日の日に私は迎えに行くことにした。
「それまでに、このマンガ完成させないと…デビューできるかどうかの大事な時期だもんね…
よかった!終盤の方までできていて。今日は月曜日だから、あと5日かぁ、がんばんなくちゃ!」
マンガも急いで、仕上げの作業にとりかかり、バイトも土日は休みにしてもらった。
この週すごく忙しいかったせいか、あっという間に金曜日になった。
「よしっ!郵便局にマンガもだしてきた事だし、やることは全部やったね☆」
そしていよいよ明日はひろし君が帰ってくる日
「うわーマンガ〆切前だったから髪ボッサボサ…明日、午前中は、美容室言ってから成田空港へ行こう」
そして次の日、早速美容室へ
「えっ!こんなに髪伸びたのに切っちゃっていいの?」
「いいんです。ショートボブにして下さい」
私はひろし君がいなくなった後からは、髪は一回も切らなかった
せっかく伸びたけどいいんだ
ひろし君の前では、変わらない私でいたいから。
あの時のままで会いたいんだ。
「ありがとうございました」
美容室から出た私は、成田空港へと電車で向かう
へへっ、ちょっと早すぎたかなっ
到着時間より1時間早かったかが成田空港に着いた
もう少しでひろし君に会えるんだドキドキ♪
ひろし君どうだろ?
あたしに会ったら、大人っぽくなったなーなんて言ってくれたりして、へへっ☆
んっ?なんだろう、なんかやたら警察いるなぁー報道陣もいっぱいいる。
とても慌ただしい雰囲気だ
芸能人でも来るのかなぁ
そんなのんきにしてられたのは一瞬の事だった。
カイロから成田行きの電子掲示板を見ると、私の表情は凍りついた
嘘?…でしょ?…
ちょうどひろし君の乗ってる飛行機が、つい先ほど墜落したと、テロップにてでていたのだ
さらに私の近くにいた報道陣らが、なにやらニュースを伝えているようだ
「午後13時過ぎ、カイロから成田に向かう航空機○○便が海に墜落したというニュースがはいってきました。
原因は未だ明らかになっておりません…乗客およそ200人のうち日本人客は、およそ半分以上は日本人客で…捜索中ですが…乗客の生存は絶望的だと…」
嘘だ…嘘だよっそんなの嘘だもんっ!ひろし君…
今日帰ってくるって…手紙に書いてたもん!
私はあまりにも突然のできごとで現実を受け止めはれないでいた
まだ、到着予定時間は14時半だから、まだ時間あるよ!
それでも私は待った
1時間たってもひろし君は姿を現してくれない
気がつけば、周りには
ひろし君と同じ便に乗っていた人の家族と思われる人たちの、悲痛な叫びや悲しい泣き声が響きわたっていた
その声を聞いてようやく私も我に返る
最初からわかってた、でもまだ中々現実として受け止められない…
ひろし君が死んだ?
だって今日は…ひろし君を驚かせて、おかえりって言うつもりだったのに…。
もう聞けない…
夢を語る声も…
触れない
優しく撫でてくれる手も…
そして見れない…
あのまぶしい笑顔も…
泣いてもひろし君はもう戻ってこない、わかってるけど、今日やっと会えると思ったのに。そんなの…そんなのってないよ…
「うっ、うっ、うわぁぁー」
私はその場に泣き崩れた
ねえ、ひろし君。
話たい事たくさんあったし、聞きたい事もたくさんあったよ。
いっぱいいっぱい話したかったよ…なんで…なんでいっつも先に行っちゃうの…だからひろし君はずるいんだよ…
そして、あれからどれくらいたっだろうか…私は、どうやら3時間くらい私は空港で泣き疲れぼーっとしていた。
ニュースでも墜落した飛行機の乗客が何十人か遺体で発見されたというニュースが流れてきた
ここにずっといるわけにも行かないし、もしかしたら家に何か連絡が入ってるかもしれないので、とりあえず帰る事にした
もう外はすっかり暗くなっていて
帰りの電車の中でも、私の心は抜け殻状態で、ただ、外から見える真っ暗な景色をただ見つめていた
家の最寄り駅についても、私の足取りはフラフラだ…
写真展の前を通るが、もちろん私はそこを見ることができなかった…
家までの道のりが長い
とても日曜日に走って帰れた道とは思えないくらい長かった
ようやくアパートに着く
あっ、街灯つけてないから暗くてなにも見えないや
自分の部屋まで着くと…
「おいっ!遅っせーよ!」
誰かが呼んでいる
横に人影があるが、誰かはわからない
とりあえず家の鍵をあけて街灯をつけた
「!?」
私は目を疑った
だってここにいるはずもない人が立っているからだ。そう、ひろし君だ。
私は余りのショックで幻影まで見てしまってるのだろうか…
「何、ボーっとしてんだよ?久しぶりの再会だって言うのに…」
私の頭をワシャワシャ撫でる
やっぱりひろし君だ!
でもなんで?
私は混乱しすぎて最初に言った言葉は
「死んだんじゃなかったの?」
「お前なーそれ普通最初に言う言葉じゃ…おっと!」
未だ信じれず私はひろし君に抱きついた
ひろし君の匂いがする
「本当だひろし君だ…」
ひろし君も私を優しく抱きしめてくれる
「ただいま…」
「おかえりひろし君…
ひろし君!死んだかと思ったよー!!うわぁーん」
私は大泣きをした
「生きててよかったー」
状況ののみこめない、ひろし君は頭をポンポンとしてくれながら
「とりあえず近所迷惑になるから中に入ろうぜ」
と言って
そして私の家に入った
「ごめんな連絡とれなくて、2年半近くアフリカに行ってて…まさか、ももこがこんなに心配してるとは…思わなかった」
「ヒック…違うの!今日ひろし君の事、驚かせようと思って成田まで迎えに行ったけど…ヒック…
ひろし君が乗ってくるはずの便の飛行機墜落したから…ヒック…しかも海に、私だから…死んだかと…ヒック…でもなんで?ひろし君ここにいるの?まさかやっぱり夢?」
「大丈夫俺は、ちゃんと生きてるから!なっ!だからもう泣くなよ」
彼が頭を撫でてくれたせいか、だいぶ私も落ち着いてきたみたいで、涙も少しずつ止まってきた
「そっか…そしたら悪い事したなあ…
俺1本早い便で帰って来たんだよ。午前の便で。
成田に着いた後、東京で降りないで静岡にそのまま帰ったんだよ。あの…その…早くももこに会いたくて…」
ひろし君の顔は真っ赤だ
「でも、ももこの家行ったら、ももこ東京で1人暮らししてるっていうから、住所と番号、おしえてもらった後すぐに東京に戻ったけど、中々帰って来ないからさーももこ。電話しても出ないし
でもそんな事になってたとはなー…そっか…俺今日全然テレビ見てなかったから知らなかったよ。本当心配させてごめんな」
「ううん、でも本当良かったよ。この便に乗ってなくて」
「俺死んでたかもしんないのか…そうか…今、生きているのも、ももこのおかげだなっ!」
「へっ!?なんであたしのおかげ?」
ひろし君が何かガソゴソ探してる
「あった!これこれ…」
ひろし君は1枚写真を出してきた
「これはーあたし!?」
しかもこの写真は2年半前に、ひろし君が、私にカメラマンのアシスタントになる事を告げられた日に撮られた写真だった。
照れながらひろし君は話す
「いつも元気のない時、この写真見て元気だしてたんだ。
アフリカから帰る前も、荷物整理したら、この写真が、出てきて、見たら早くお前に…ももこに会いたくなった。
師匠に無理言って、1つ早い便にしてもらったんだ。だからももこのおかげだよ。ありがとな。」
「じゃー師匠が助かったのもあたしのおかげだね!へへっ♪」
「やっと笑ったな」
ギュッと抱きしめられる
「会いたかった…」
「あたしもずっと会いたかったよ…今度は我慢しない…好きだよひろし君」
「俺も愛してる」
そして私たちはキスをする
キスして見つめ合って…そしてまたキス
話したい事はたくさんあった。
聞きたい事もたくさんあった。
でも何よりも先に彼に触れたかった
「もうどこにもいかないで…」
「ああ当分は東京にいるから…もう突然いなくならないよ…ずっとももこの傍にいるから」
何度も何度もキスをする一回一回が愛おしい…まるで空白の時間を埋めるように
この日私達は1つになり結ばれた
チュンチュン…
次の朝…目が覚めたら。ひろし君の姿はなかった
えっ!?どこにいったの?…それとも夢だったの…
すると…
ガチャ
「ああ…やっと起きたか…冷蔵庫見たらなんもなかったから、コンビニで朝飯買ってきたぞ」
「お、おはよー」
ホッ…良かった夢じゃなかったんだ
「あぁー!お前、今、また急にいなくなったと思ったんだろ?」
ギクッ!
「そ、そんな事ー」
「もう、大丈夫だからな?」
ポンポンと頭を叩く
あぁ、やっぱりこのゴツゴツした手好きだな…
そしてご飯を食べて…
「俺、やっと師匠の撮影の補助やらせてくれるようになったんだ」
「へーすごいねぇ♪今度見に行ってもいい?」
「今日バイト休みかー?」
「うん」
「じゃー後でスタジオ行こーぜ!」
「行く行く♪」
交わす会話はいつもと変わらなくて…
「そういやーマンガ大丈夫なのか?」
「うん、私ねー何回か入賞してるんだよん♪」
「えぇっいつの間に!?すっげーな!お前もがんばってたんだなぁ」
「へへっー☆後、ひろし君帰ってくると思ってちゃんと〆切間に合うよう、今回がんばったよ」
「俺よっぽっど愛されてたんだなぁー」
「ばっ!…そうだよぅ」
「素直でよろしいっ」
「もうっ!恥ずかしいなぁ」
変わらない笑い声が部屋に響く
「さぁー飯も食ったしそろそろ行くか!」
「うんっ!じゃー行ってきまーす」
「誰に言ってんの?」
「いやなんとなく…」
パタン。カチャ。
「手…」
「うんっ!」
今、あの頃と違うのは…
繋がっている想い…
「師匠ってどんな人ー?」
「うーん…顔は加藤茶を2枚目にしたような感じかなー」
「あははーそういやーあのおじいさん加藤茶とそっくりだ!」
「えっ?なんで師匠の父さん知ってんだよ?」
「秘密ー」
「なんだよ、おしえろよ」
「ねえねえそれより性格は?」
「うーん性格は…」
もう離れ離れになったとしまっても、大丈夫!
「優しいけど厳しい時は厳しいぜ」
「へぇーいい人そうだね」
「おう」
この手が離れない限り…
[END]
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