『彼はいつもあの子の瞳の中』


「たまちゃん、今帰り?」

たまちゃんと呼ぶ彼。


「あっ、ひろし君」

いつも

カメラばかり触って

撮って、撮って、撮って

まるで、私のお父さんを見てるみたいだけど、


だからなのかは、わからない

そんな彼に焦がれている


カメラを構える真っ直ぐな瞳の彼にいつの間にか惹かれてた。


「親父さんさー明日は休み?」


「ん〜確かそうだった思う」


「なあ、やっぱりそろそろたまちゃんも、カメラやろうぜ!基礎は、親父さんのおかげで、知ってるし、むいてると、思うんだけどなぁー俺ちゃんと教えるし」


「えっ、私はいいってば」

今、この場で真っ直ぐに私を見つめてくれてても、カメラのファインダー越しには


いつもまるちゃんが映っている


「やっぱダメかー。もったいないけど、わかった。親父さんによろしくな、またな、たまちゃん」


「うん、さよならー」



“たまちゃん”って言う呼び方も


きっと、まるちゃんが呼んでたから、いつの間にかそう呼ばれていた。



だけど、彼の“たまちゃん”は心地がよい


そう呼ばれるだけで


私の胸の鼓動がまたひとつ増えるように早くなる


だって、その瞬間だけは、彼のファインダーには私だけが映っているから。


きっと、これからも、その瞬間だけ。


その瞬間なら絶対、シャッターチャンスを逃さない自信はあるのに…

なんて

やっぱり、少しお父さんの血をひいてるかもなんて、思いながらも、やっぱりカメラを触ることはないと思った。

〜END〜

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