僕は3年ぶりに、ふるさとに帰ってきた。
そう…
あの子がいるあの街へ…
〜ダンデライオン〜
中学生になるという時に、父さんの海外転勤が決まり、父さんだけ海外に単身赴任することになった。
母さんと僕は母さんの実家がある静岡へ引っ越す事になった。
引っ越す当日。
母さんと2人静岡に向かう新幹線に乗り込んだ。
「けんいち、せっかく東京の方でたくさんお友達できたのに残念だったわね…さびしいでしょーごめんね」
「別にこっちには杉山もいるし大丈夫だよ」
そう小学校からの親友杉山とは、東京に引っ越してからも、ちょくちょく連絡をとりあい、仲がよい唯一の幼なじみだ。
「でも他にもたくさん色んな友達いたものねーみんなも元気かしら」
「んー」
他の友達かぁ…
新幹線に揺られながら、景色を観る。
確か新幹線と言えば…
3年前…
清水から東京へ引っ越す当日、クラスメートに別れを告げ、東京に向かう新幹線に乗って発車した時に、何を慌てていたのか、1人間違って乗り込んできた、クラスメートの女子がいたなぁ…。
しかも引っ越ししてから最初に届いた手紙がその子からの現金書留(笑)
新幹線の代金だ。
その事を思い出すと自然に笑みがこぼれた。
そういやー…さくらまる子だったよな?あれ、まる子って下の名前だっけ?
…あっ!さくらももこだ。
いつのまにか、僕はその子の事をずっと考えこみ、眠りこけ夢をみていた。
(んっ、もう夕方か。
僕は小川を越えた丘にれんげ畑がにいた。
れんげ畑にはたくさんのたんぽぽと綿毛が、たくさんとんでいる。
後ろから女の子の声が聞こえる。
「古い友達もずっと仲間だよ…ねっそうだよね」
さくら??)
ここでビジョンがきれる。
次は静岡ー静岡ー
「いち…けんいち起きて!もう着くわよ」
「ん…ああー」
夢か…。
さくらの事、考えてたら夢にでてきてしまったらしい。
でも、あれは3年前、本当にさくらに言われた事だった。
転校する間近に、杉山とケンカしている時に言われた言葉だった。
あの言葉はあの時の俺にとって、かなり救われた言葉だった。
そう、さくらってそーいう奴だった。
お節介でやたらと何でも首突っ込むし、おっちょこちょいだけど、言うときはちゃんと言うし、おもしろくて、優しい奴だった。
俺も何回もめんどくせー事巻き込まれたな、恋愛感情なんてもんは、なかったが、でもさくらに頼まれたら、ほっとけなかったな…。
そーこー思っているうちに静岡駅に着いた。
駅には、爺ちゃんと婆ちゃんが迎えに来てくれていた。
爺ちゃんの車に乗り込み清水へと向かう。
都会のコンクリートロードとは違い、田んぼがたくさん並んでいる。
その途中、さっき夢にでてきた、見覚えのある寺町の小川の前を通る。
夢と同じ春の小川。
れんげ畑には、夢と同じたんぽぽが満開だった。
まだ、綿毛にはなっていないようだが、僕はそれを見てなぜか安心した。
走ってるうちにだんだん街が見えてきた。
やっと清水に着いたのだ。懐かしい風景が自然と目に入ってくる。
みまつ屋まだあったんだな…
げっ!まだあのじーさん木の世話してるのかよ。
そういやーここの公園でよく杉山とサッカーしたよなあ。
車からみる景色は、やはり3年前から比べると変わらず、まるで俺だけ時間が進んでるように感じられた。
そして
やっと家に着き、クタクタながらも荷物整理と片付けであっという間に1日が過ぎていった。
次の日僕は、デパートに制服を買いに来ていた。
試着をしていたら、どこからかブーブー聞こえてくる…。
「太郎あんたまだ小さいから、このサイズで十分だブー」
「うるさいブー余計なお世話だブーこれから大きくなるんだからこれでいいブー」
確かあれは…ブー太郎か!?あいつ、まだブーブー言ってんのかよ!?
そう思いながら、試着を終え、サイズが決まったので、母さんが注文手続きをしにいった。
そしたら後ろから…
「ブヒョー!?」
「もしかしたら大野君ですかブー?」
「おう!久しぶりだなっブー太郎。俺こっちに帰ってきたんだ。」
「ブーうっうっ…大野君が…親分が帰ってきてくれてうれしいブー」
「中学生になるんだから、それぐらいで泣くなよ」
「あっ杉山君も元気ですブー」
「おう!今から杉山の家行くんだ。じゃあまた学校でな」
そして俺はブー太郎を後にし、デパートをでた。
「母さん。俺、杉山の家よってから帰るわ」
「杉山君に今度うちにも遊びにくるよう言っておいてね」
「ああ」
僕は杉山の家へ向かった。
杉山と会うのも3年ぶりか…あいつきっとサッカーうまくなってるよな。
そう考えながら、杉山の家へ向かう。
道の角を曲がったとたん
ドンっ!
「きゃっ!?」
メガネをかけた女の子と肩がぶつかってしまった
「あっすいません。大丈夫ですか?」
と僕は落ちたメガネを手渡した。
「いえ、こちらこそ」
とその子はメガネをかけたとたん、それが穂波だとすぐわかった。
「穂波だよな?」
「えっそうですけど、どなたでしたか?」
「俺、小3の時引っ越していった大野だけど…」
「えぇ〜!!あの大野君!?全然わからなかったよー久しぶりだね!こっちに帰ってきたの?」
「おう!またよろしくなっ」
「うん!私、今からまるちゃんと待ち合わせだから、まるちゃんにも言っとくよ。あーまるちゃん覚えてる?」
「ああ、さくらだろ?」
「うん。すぐそこだから、大野君もまるちゃんに会っておく?」
「んーでも俺、今から杉山の家いくから…」
「そっかーじゃあまたね」
「さくらにもよろしくなっ」
あいつらも、相変わらず仲いいんだな。
本当はあの、さくらがどんな風に成長していたか気になったが、なんとなく照れくさくてやめたんだ。
そして杉山宅へ
「よお!杉山」
「大野!すげー久しぶり!
パシッと
思わず手をタッチをする
「とりあえずサッカーしねぇ?」
この杉山の一言に
3年ぶりに会う親友は外見こそは、成長したもの中身はあの頃のままで安心した。
「おう、いいぜ!」
僕たちはあの頃と変わらず近くの公園へサッカーしに向かう
「へっ!ケンタと毎日サッカーしてたから、大野に負ける気がしねぇぜ!」
「けっ!俺は一度も杉山に負けるつもりはねぇけどなっ!」
中々勝負は決まらない
僕たちは、こんな楽しいサッカーが久しぶりでボールが見えなくなるまでサッカーに明け暮れた。
日が暮れて、俺たちはサッカーでクタクタになった。
「ゼェーゼェーちょっ大野待て、俺、ギブっ!」
「ハァーハァー俺も」
「なあ大野。そういやーもう他に誰かと会ったか??」
「あぁーブー太郎と穂波に会ったぜ。穂波はメガネない時みたら、誰かわかんなかった。」
ボソリッ
「あぁ…穂波可愛いくなったよなぁ」
「なんか言ったか?杉山」
「い、いやー別に…」
そんな話をしながら、
あの頃と変わらない会話を繰り返し今日が過ぎていく。
「じゃー明日なっ!」
「おうっ!」
会話がなくても、このサッカー1つで、まるで3年間の空白の時間が埋め込まれていくようだった。
次の日
今日は入学式だ。
「じゃーいってくるから」
勢いよく家を出る
これから中学生かぁーなんか実感わかねぇなぁ
サッカー部に入ったら、杉山やケンタより、もっと強い奴いるかもしんないからー楽しみだな
そんな事を考えながら、歩いてると
「てめぇら、まとめてぶっ飛ばしてやるっ!」
なんだ?あれはうちの制服と、他校の奴か…入学式早々ケンカかよ。2対1か…
2人は弱々しそうなうちの生徒で、他校の不良に絡まれてるようだ。
まず様子を見るか…あ?
なんだあいつら、永沢と藤木じゃねぇか…
「ぶつかったのは僕じゃない!!この隣にいる永沢君だけだ、だから許してくれよー!」
「藤木君。君って奴はつくづく、ひきょうだなっ!」
どうやら、不良と肩がぶつかってからまれてるらしい。
なんだあいつら、つくづく運悪いよなー関わりたくねぇな…
「うるせぇ!ゴタゴタ言ってんじゃねーぞ!コラっ!」
殴る寸前
「たくっ、しょうがねぇな」
2人に拳が向かってこようとしたその時…
パシッ
「やめろよ!」
あぶねぇ間一髪…
僕は不良の拳をとめ、振り払った。
「痛ってな、コラッ!てめぇーは誰だ?」
「俺は…」
「おいっ、何をやっている!」
巡回してた警察官に呼び止まれる。
「やべっ!」
「また、お前か!」
「逃げろっ!」
「こらっ、待てっ!」
不良は、前から警察官に目をつけられていたらしく、急ぎ足で逃げ、警察官も追いかけていった。
はぁー、入学式早々、面倒なことにならなくて良かったぜ…
さあ、行くか。
すると藤木が
「大野君全然僕らの事すっかり忘れてるみたいだね」
「ああ…僕らみたいな地味なタイプは存在すら霞んでしまうのさ」
ビクッ!
「ああー久しぶりだな藤木も永沢も」
「大野君助けてくれてありがとう。相変わらず度胸あるなぁ。それにしても藤木君。君には見損なったよ」
「だって…ごめんよーこわかったんだよ」
「あーあ中学校まで君と同じクラスだけは、よしてほしいな…。
ただでさえ、小学校から一緒なのに、中学校まで君のひきょうに迷惑かけられるのだけは、ゴメンだね!」
スタスタと永沢は学校へと向かっていった。
相変わらず、永沢キツいなー。
「大野君、本当にありがとう!永沢君待ってくれよー」
藤木は永沢を追いかけていった。
藤木も変わらずでひきょうだし…。
こいつらだけは同じクラスになりたくないと思った僕だった。
僕も学校に向かいようやく、学校に着いた。
ポンっ
「よ!大野」
杉山が早速近づいてきた
「おう。クラス見てきたか?」
「俺も今着いたとこだから、まだ見てねえ。見にいこーぜ!」
杉山と一緒に見に行く。
「よっしゃー!大野、同じクラスだぜ!」
「本当か!?やったな!」
どうやら、杉山と同じクラスになれたらしい。
ふーん3組かぁ。
どれどれ、他に誰と同じクラスだ?
3組の掲示されてる所に目をやると、穂波がキョロキョロしている。
すると目が合った
「あっ!大野君おはよう」
「おう」
杉山もすかさず、近寄ってきた
「杉山君もおはよう」
「ああ、それよりキョロキョロしてどうしたんだ?」
「まるちゃんと、はぐれちゃって…大野君、杉山君見なかった?」
「いや俺は見てねえけど、杉山は?」
「俺も見てねえなあーさくらの事だから、またひょっこり現れるんじゃないか?」
「そうかなー?大野君、杉山君ありがとう。私、もう少し捜してみるねー」
「俺も一緒に行くよ」
杉山は穂波と一緒に、さくらを捜しに行ってしまった。
なんだ杉山のやつ…やけに、穂波に優しいんだな。
それよりさくら…
どこに行ったんだ??
俺もちょっと見てくるか…
少し校外をぐるっと見回る事にした。
駐車場付近を歩いてると、高級車とともに黄色い歓声が、こっちに向かってくる。
なんだ?なんだ?
ロールスロイス??
高級車は横を通り過ぎると、その乗車しているのはすぐ花輪だとわかった。
あぁーあいつか。中学校も、じいさんに送り迎えしてもらってんだな…
ちょっと呆れて、歩いてると。
猪みたく突進してくる女子が一人…
どどどどっー
「あーん。待ってー花輪くーん!」
それは一瞬に通り過ぎた。
こ、こえーな。
余りの速さで何かは判別はできなかった。
すると横から女子の声が聞こえる
「あっイタタタ!」
どうやら尻餅をついたらしい。
「おい!大丈夫か??」
「あっ、どうもありがとうございます」
「さくらか??」
その女子が顔上げたとたん、僕はすぐ、さくらだってわかったんだ。
「やっぱりさくらだ。相変わらずおまえ、鈍くさいな」
「……?…大野君!?わぁー大野君久しぶり!元気だったー?この前たまちゃんからも聞いてたけど…
いやーやっぱり都会の男子は違うねえーすっかりいい男になって!」
さくら独特の、のほほんとした雰囲気はあのままだ。
相変わらず口も達者なのは変わってないらしい。
「うるせえよ…おまえは、おばさんか!?それより立てるか?」
僕は手をさしのべた。
「ありがとう♪……痛っ!どうやら足ひねったみたい」
「大丈夫か?歩けるか?」
「うん大丈夫だよってあれー?うわぁー」
さくらがバランスを崩したので、すかさず支えた
さくらの華奢な体が腕にすっぽり収まる
軽い…
「たくっ!無理すんなよな」
全く変わらない、さくらの雰囲気に特に緊張もせず、僕ものみこまれていく。
「おいっ背中にのれよ」
「いや…いいよおんぶなんて恥ずかしいよ」
「足腫れてきてるし、そんなこと言ってる場合じゃないだろっ!」
「うん、わかったよ、迷惑かけてごめんね」
「今に始まったことじゃないだろ…」
僕はさくらを保健室まで、運ぶことになった。
「もう少しで着くからな」
「うん」
保健室までさくらを運んだ。どうやら、症状は軽いらしい。
「大野君もありがとうね」
さくらは素直にお礼を言う
「おう!それより歩けるか?」
「う、うん湿布貼ったらさっきより、良くなった感じする」
「単純なやつー」
そう言うと照れくさそうにさくらは笑っていた。
「やべぇーもうそろそろ、教室に行かないと入学式始まるぞ急ごーぜ」
さくらと一緒に教室へ向かった。
「ふぅーなんとか間に合ったね!ってあれ?大野君も3組?」
「あれ言ってなかったけ?ちなみに、杉山も穂波も同じだぜ。これからまたよろしくな!」
「うん、よろしくねえ!!
「おーい大野」
「あっ杉山。じゃー後でな無理すんなよっ!」
「本当にさっきはありがとうー」
そう言ってさくらと別れた。
久しぶりに会うさくらは、何も変わっていなくて、僕もあの頃に戻ったみたいな感覚に陥る。
でも少し成長していたさくらの肌に触れた瞬間はちょっとだけドキドキした。
「あれ?いないと思ったらさくらと一緒だったのか?」
「ああ、あいつ足ひねったみたいで、保健室まで連れてやってたんだよ」
「そっか、ドジだなーさくらは。お前また、早速さくらの世話焼いて…そんなとこも変わんねえな」
「だなー」
あ゛ーなんか朝から色々あって疲れたな…
少しくたびれて、むかえた入学式だった。
帰りの途中
「おーい大野君ー杉山君一緒に帰ろう」
「おう!」
「帰ろうぜ」
さくらと、穂波と一緒に帰ることになった。
「大野君も杉山君やっぱり部活サッカー部に入るの?」
「おう!俺も杉山もサッカーしかないからなあ。さくらと穂波は?」
「まる子はまだ決めてないけど、たまちゃんはサッカー部のマネージャーかな?」
「ちょっと!まるちゃん。いやー私もまだ決めてないよー」
「でも穂波意外とマネージャー向いてるかもな?なあ大野?」
「おう、別にいいんじゃねーの?」
「え?そうかなぁ…えへへ」
「ねえねえ、まる子は??」
「いやーさくらは、遅刻するから無理じゃね?今でもそうなんだろ?杉山」
「ああーさくら6年生の時も遅刻ばっかりだったぜ」
「そうだね…中学生になったから、遅刻しないように気をつけるよ…トホホ」
と、は新しい中学校生活に期待を膨らませ、あの頃に戻ったような、何気ない会話をしながら僕達は帰った。
初めての中学生活から一週間…
俺と杉山はサッカー部に入部
穂波は、サッカー部のマネージャー。
朝が苦手なさくらは、帰宅部に入った。
まだまだ、そこまでクラスには馴染んでいなく、僕たちは、あたりまえのように俺、杉山、穂波、さくらと4人で行動していた。
「ねえねえ、たまちゃん聞いた?来週遠足なんだってさーでも班は好きな人同士でいいんだって」
「じゃー班は、私とまるちゃんと、後2人は…」
「じゃあ、俺達と組もうぜ!」
「あっ、杉山君!」
「大野、いいよな?」
「ああ、いいぜ!」
「杉山君ーとかなんとか言って〜」
「なんだよ、さくら!」
ヒソヒソ
(「ヒヒヒ…たまちゃんと一緒にいたかったんでしょ?」)
ヒソヒソ
(「ばっ、ばか、お前、穂波の前で言うなよっ」)
「おい、お前ら、コソコソなにやってんだよ」
「あのね…大野君…実は…」
「うっせ、なんでもねーよ、さくらも余計な事いうなよ!」
「はいはい」
(大野君だって気づいてるよ)
さくらと杉山が、話してるのをみて僕はふと思った。
「なあ、穂波?」
「大野君、どうしたの?」
「あいつらあんなに、仲良かったけ?」
「うーん大野君が転校していった後、私達ずっと同じクラスだったんだ。だからかもねーいっつも、まるちゃんと杉山君って、あんな感じだよ」
「ふぅん…」
その時僕は、初めて、3年という歳月が、こんなにも長い時間だったと実感した。
なにもかわらないはずなのに、僕だけがとりのこされているような疎外感…自分でもわからない複雑な気分に陥っていた。
この後も、スムーズにクラスの班決めも終わり、この4人でまわることになった。
その日の帰り道…部活を終えた後、杉山と穂波と別れ、歩いてると
「大野君、今帰り〜?」
「さくらか…おつかいか?」
「うんっ」
二人で歩きながら話をする
「大野君だいぶ清水に馴れてきた?」
「馴れるも何も変わってねえからなぁ色々」
「そう?ん〜そうかもね。」
「お前らも変わってねえし。さくらに関しては、あのまんまだな」
「失礼な人だね!まる子だって、少しは成長したよ!」
ぷくーっと頬をふくらませる、さくら。
プッ、だから、そういうとこが変わってねえんだよ
「大野君は、変わったね!」
「そうか?」
「うん、見た目もそうだけど、あんまり威張らなくなったよねー昔なんて、いっつも、まる子の、みかん盗るしさぁ…」
「なんだよ、まだ根にもってんのか?」
「ヒヒヒ…食べ物の恨みは怖いよ」
「さくらが言うと本気っぽいから怖えな」
「あれ?大野君昔から、怖いものなしなんじゃなかったっけ?」
「はっ?今でもねえよっ」
「へーほんとかな〜?」
「…お前なぁー!?」
後ろ向きに歩くさくらの方に横から車が飛び出してきた
「っさくら後ろ!」
プップッー
とっさに、さくらを引っ張って、自分の方へ抱き寄せる。
ブーン…
「ったく、危ねえな!ボケっとしてんなよ…」
ヘナヘナ
「……びっくりした!」
さくらは、その場で力なく座りこんでしまった
「おいっ!大丈夫か?」
「うんっ、ちょっとビックリしただけ…」
「立てるか?」
「うん!」
しばらくして、落ち着いたのかようやく、さくらは立った。
「なんか、大野君がこっち来てから助けてもらってばかりだね…さっきはありがとう」
「だから、さくらは変わってねーって言うんだよ。今度から気をつけろよ!」
「うん、気をつけるよ」
一応、さくらを家まで送って
「じゃあな!」
「また明日ね」
そのまま、家へ帰る
帰り道…
僕は、少しの間彼女を抱き寄せた感触と、僕なのか…彼女なのか…わからない、心臓の鼓動が、未だに響いて…忘れられなかった。
その日から僕は、いつのまにか、さくらの事ばかり考えるようになっていたんだ。
次の日
「おっはよー!」
と明るく声をかけたのは、さくらだ。
ドクン…
「よう…」
「大野君、昨日は、ありがと…ね…ってどしたの?朝から陰気な顔して」
フイッ
「別に…」
ムッ
「なんか感じ悪いふーんだ」
「あっ、大野くん、まるちゃんおはよ!」
「おはよ!たまちゃん、あっちいこっ!」
「え?うん」
俺はなにやってんだ?
昨日までなんでもねーのに…さくらの顔みたら急に…
「それは!ズバリ恋でしょう!」
ビクッ
「!?なんだ、俺に言ったと思ったら向こうの話か。丸尾の奴も相変わらずだな…」
「おいっ!大野なにボケッとしてんだ?」
「おう、杉山」
「もしかして、大野もようやくかぁー…恋だろ?」
「なんだよお前まで…」
「ちっ動揺しないって事は違うのか?」
「わかんねえ…」
「あっ?」
「なんでもねーよ」
確かに数日の間に僕はさくらに、少しずつ惹かれてるのかもしれない。
恋。
でも、言葉にすると何かが違う感じがする。
何か懐かしく感じるこの感情。昔からあったような…
僕は、考えれば考えるほどわからなくなっていた。
そしてホームルーム
明日は遠足。
そのための説明の時間だ。
「ふわぁ」
ねむ…
僕の一番後ろの席から
2列前の斜め先にいる、さくらはよく見える
プッ
寝てら…
ガタンッ
ビクッ
キョロキョロ
あっ起きた。
プッ
アイツ見てると飽きないよなあ…。
すると隣から声が
「ふーん。クックックッ…」
「な、なんだよ野口?」
「大野君…ちゃんと先生の話聞いてた?」
「聞いても聞かなくてもだいたい同じだろ?」
「そう思ってるならいいけど…」
「?」
ダメだ昔から野口だけは苦手だ。あいつ一体何を言いたかったんだ?
クックックッ…
話を聞いてなかったのは、よそ見をしてた大野君と、寝ていたさくらさんかぁ…
明日どうなるかな…知ーらない。知ーらない。
これからそして、遠足当日。
やべぇ、寝坊した!
今日は、部活の朝練がない事をいい事に、すっかり寝坊をしてしまった。
さっさっと用意して、すぐさまに家を出る
さすがに、人歩いてねえな…急いで走る。
キーンコーンカーンコーン
よしっ間に合ったぜ!
ん?開かねえ…。
すると遠くから。
「はあはあ…大野君いるって事は間に合ったぁ!良かった♪」
さくらだ。
プッ
昨日、怒ってたのに、もう忘れてら…
「さくら、それがよー学校閉まってんだよ」
「ええ!?」
あっ!そういえば野口の奴、なんか意味深な事言ってたよな…。
「たぶん、俺達、集合場所完全に間違えたな…」
ガーン
「うそ!?はは…まる子昨日完全に寝てて先生の話聞いてなかったからなあ…でも、大野君が間違えるなんて珍しいね?大野君も寝てたんでしょ?」
「はは…まあな」
まさか、さくら見てたなんて言えねえ。
「ん?それより、さくらなんで、バケツなんて持ってんだ?」
「遠足の途中、寺町通るでしょ?めだかとりたいと思って」
「はぁ?まだ、とってんのかよ」
「うんっ!毎年たまちゃんと行ってるんだけど、たまちゃん、部活で中々忙しそうだから行けなくて…」
「なあ?」
「ん?」
「どーせ、集合場所わかんねえし、今から寺町まで行かね?さくら、行きたいんだろっ?」
「いいねぇ!行こう!行こう!」
そのころ…杉山、たまえは…
「おいっ、おまえらの班、二人も来てないぞっ!家に電話しても、二人とも出たみたいだし、何か聞いてないか?」
「聞いてない…穂波は?」
「私も聞いてません」
「そうか…まあ、集合場所間違えたんだろうな。親御さんに家に帰ったら、こっち来るように言ってあるから、悪いがお前ら二人でまわってくれ」
「「はい」」
ええー!?杉山君と二人きりなんて緊張するよー。
よっしゃー穂波と二人きりなんて、さくらと大野戻ってくんなよ。
「クックックッやっぱりあの二人間違えたね…」
そして、しばらくして、僕とさくらは寺町に着いていた。
引っ越してきた時に、チラッと見えた景色はやっぱり変わらない。
「やっぱり、今年も、つくしが、いっぱいはえてるねえ」
「また、とんのか?」
「とっ、とんないようだってここは…」
「「犬の小便場所」」
「だろ?」「だから」
二人で顔を見合わせると
「プッ」
「アハッ」
自然と笑いが込み上げてきた。
「あははっ大野君よく覚えてるね」
「まず、あの時さくらが、つくしを食えるって言ったことが衝撃的だったからな」
「だって、つくしは本当においしいんだってば」
そんな、懐かしい話をしてるうちに、わからなくなってた自分の想いがだんだん、形になってくる。
「小川の方もいってみようよ!」
「おう!」
グゥー
「その前にお昼にしよ…」
「もうこんな時間か…」
(もちろん、例の土手じゃないとこで)
遠足のお弁当食べ…二人でゴロンと横になる
「ねえ?大野君」
「なんだ?」
「本当に大野君帰ってきたんだよね?」
「なんだよ今さら」
「4年前も、この同じ場所にいたなんて、不思議な感じがする」
「まあ、俺も清水に戻ってこれると思ってなかったからなあ」
「うん、そうだよね…」
僕もさくらも、そのまま黙ったままで
川のせせらぎの音を聴きながら、横になっていた僕達は、いつの間にか眠りについてしまった。
目が覚めると、あたりの空は夕焼けになっていて
隣にいるはずの
さくらは、いなく…
かわりに、めだかが数匹
入ったバケツが横に置いてあり、水面がユラユラ揺れている。
起き上がると、急に風が吹き、すると、近くのタンポポの綿毛が飛んでいく。
その方向へとむくと、見たことがある風景。
小川の橋の向こうに一本、木がたっている。
僕は風に誘われるように自然と橋の向こう側へと渡り土手を越えると…
あたりは茜色に染まる、れんげ畑。
そして、タンポポは…
「今年も、タンポポがいっぱいだね!」
ひょっこり、さくらが隣にやってきた。
「大野君がいなくなってから、この、れんげ畑のタンポポを見るたびにね、毎年、めだかより、タンポポが元気に咲いてるか気になっちゃって」
「なんでだ?」
「だって、ちゃんと咲いてたら大野君がきっと元気で居てくれるような気がしたから、安心するから…」
「…」
「でっ!はいっ!」
パサッ
さくらは僕の頭に、タンポポで作った冠をのせた
「おいっ!いきなりなんだよ?」
「…おかえりっ!」
「?」
「大野君が寝てる間に、タンポポで冠作って、起きるの待ってたんだ。そういえば、ちゃんと、「おかえり」って言ってなかったでしょ?」
と得意気な笑顔で、さくらは言ってきた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜3年前…
「大野君…杉山君と仲なおりしなよ」
「…古い友達もずっと仲間だよ…ねっそうだよね」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
いつも、裏表ひとつない、言葉で真っ直ぐに言ってくるさくら…。
僕はやっと気づいた…
さくらには、敵わないと。
そして、まだ、なにもわからず、ガキだった、あの頃…そう僕はずっと、ここを離れる3年前から、さくらに惹かれてたんだ。
「さくら…俺…」
「何?」
グイッ
「わぁ」
ギュッ
「俺さくらが好きだ」
「えっ?なん…で…」
僕はさくらを優しく抱きしめた。
夕陽のせいか、わからないが二人の顔は、みるみる茜色で真っ赤に染まっていった。
「だって、まる子だよ?他にもたくさん…」
「俺…気づいたんだ。ずっとさくらに惹かれてた…たぶん、転校する前から。」
「だって、たくさん迷惑かけてたのに?」
「そんなとこも、全部含めて俺にはさくらが必要だ」
「本当に?」
「嘘ついてどーすんだよ?」
「へへっ…じゃあ、もう東京に行っちゃ嫌だからね…」
ギュッとさくらが抱きしめかえす。
僕は思う。ずっとこのまま裏表がない真っ直ぐな君と、このタンポポみたく、一緒に揺られていたいと…。
3年前から変わらない景色とずっと一緒に居たいと…
僕は空高く飛んでいく綿毛を見ながらそう願った。
END
(2010・8・15 )
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