「夕焼けサイダー」



夏休みも終わり

残暑もまだまだ厳しい中

相変わらず

俺たちは飽きずに日が暮れるまで

遊び倒していた

そんなある日の帰り道

大野と別れたあと

穂波の家の前に通りかかると

夏に聴いた曲

ずっとずっと忘れられない

あの曲

が聴こえてきた

つい立ち止まり考える

なんで、あの曲が…いや、まさか!

その時
ピアノの音が止まり人が出てきた

「じゃあねーたまちゃんバイバイ」

「まるちゃんまたねー!」

さくらだ

穂波の家から出てきたさくらは

道端に居た俺に気づき話しかけてきた

「あれ?杉山くんどうしたの?今帰りー?」

「まあな…なあ、さくら」

「ん?なーに?」

「今日って穂波と2人で遊んでたのか?」

「うん!そうだよー今帰るときにね、たまちゃんがね、りえちゃんが弾いていたピアノの曲、亜麻色の髪の乙女を弾いてくれたんだよー!」

「そっか…そうだよな」

あいつがここに居るわけないか…

「ん?で、あたしはピアノの事はよくわからないけど、難しいって、たまちゃんが言ってて、りえちゃんってやっぱり凄いんだねーって話しててさ…」

居たらすぐ、さくらの事だから慌てて教えてくれるだろうしなあ

「ってやばい!ベストテンに、百恵ちゃん出るんだった!帰らなきゃ!杉山くんまたねー!」

「おう、またな!」

嵐のように通り過ぎたさくらを見送り

まだなんとなく家に帰りたくなく

近くの自販機でサイダーを買い

巴川の橋にもたれかかりながら

夕日を見ながらサイダーを一口飲み干す

「はぁ…俺なにやってんだろ…」

夏休みが終わっても

まだ忘れられない

あいつと過ごした夏

出会った時に幽霊と勘違いした

というのは否定はしないが

同じ年なのにあまりにも大人っぽく

背伸びをして強がってしまっていた

それすら見て見ぬフリをしていたのか

わからないけど

やっぱりあいつには敵わないと思った

人に想われる事が多くても

自分が想う側になると

こんなに苦しいとは思っていなかった

自分では自覚はないが

これがきっと

初恋

というものなのだろうか

「あーもうっ、わっかんね!」

自分らしくない感情に

戸惑った俺は

残ったサイダーを一気に飲み干した

クヨクヨしても仕方ねえ

あいつに会ったらまた笑われちまうな

「また絶対会えるよな…」

そう半ば願いを込めながら

夕日が沈むのをずっと眺めていた

そして同じ頃

さとしが眺めるずっと東の方

東京のある家から

ピアノの練習の音が鳴り響く

トントン

ノックされたため

少女は手を止めた

「りえーそろそろ晩御飯よ」

「うん、もう少しで行くね」

「あら、またこのサイダー飲んでたの?」

「うん、これ大好きなの」

「晩御飯前はほどほどにするのよ?」

「わかってるわよ」

「ふふっ」

「どうしたのお母さん?」

「夏休み、静岡から帰ってきてから、前よりお外で遊ぶようになったり、サイダー好んで飲むようになったり、少しでも身体が丈夫になったみたいで、お母さん嬉しくて」

「そんな、おおげさなんだから。でも静岡楽しかったなあ、また行きたいなあ…みんなとまた花火したい…また、会ったら仲間に入れてくれるかな…サイダー…くれるかな…」

「あらあら、好きな子でもできたのかしら?」

「うん!ってお母さんったら!」

「ふふっ冗談よ!またお父さんにも頼んでみましょう」

「うんっ!」

「じゃあ片付けたら下へ降りてらっしゃい」

「はーい」

周りを片付けながら

開けていた窓を閉めようとした時に

あまりにも綺麗な夕日だったので

見惚れてしまった

そういえば杉山くんが教会に訪ねて来てくれた時も

こんな時間だったな

みんなとは短い時間とわかっていたからなおさら笑顔で過ごそうと思っていたのに

杉山くんに喘息の事を見抜かれた時は

悔しかった反面嬉しかったな…

部屋に飾っている色紙を見ると

元気が出るけど

やっぱり最後お別れの挨拶してもらえば良かったかしら

杉山くんとなんて、少し強引に色紙渡しちゃったし…

って私が弱気なんてらしくないわ

と少女も

残ったサイダーを一気に飲み干す

とにかくピアノをもっともっと練習して

また弾きに行くから

またみんなに

あなたに。

会いに行くから…

「待っててね…」

と夕日を見つめながら

みんなに届くようにつぶやいた



〜END〜






















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