25.04.16 Mon
言語学の授業は退屈だ。言葉と人間の脳の関係がどうのこうのなんて、どうでもいい。莉子もこの講義取るって言うし、俺も単位稼ぎたかったけど、興味が無い内容だと苦痛だ。
講義が終了し、立ちあがる生徒たちがちらほら出てきた中、俺の前で一生懸命ノートを取っていた菅くんが振り向いた。
「なあ、controversialってどういう意味か聞いていい?正直、講義中何言ってんのか分かんなかったんだけど」
「議題に上りやすいような、って感じじゃない?」
「そうそう、論争になりやすいテーマに付く気がする」
菅くんの質問に、柚樹と真未が答えてやる。
「じゃあendeavorは?」
「to try very hard=B俺たちに聞くな、自分で調べろ」
大講堂の片隅で、三人の会話を聞き流しながら机上のノートやらシャーペンやらをバックパックに片付ける。さあ、退屈な時間は終わり。今週末は何しよっかなー。
まず飲み屋で合コンでしょ、それからサークルの集まりに参加して、あと伽菜との時間もつくりたい。
「ねー、葵。Chapter 3の全範囲を次までに予習するなんて、相当キツくない?」
そう聞いてきたのは、俺の隣で熱心に教授の話に耳を傾けていた莉子。一年の頃から成績優秀、皆から好かれるタイプで、しっかり者。
「んーと、これ全部ってことでしょ?......キツいね」
「じゃあさ、よかったらまた皆で集まって勉強しない?分担して訳して、最後に訳した部分を教え合うの」
ーー確かに、その方が効率的。
「それいいね。来週までだから...、いつにする?」
講堂を出て、4月の花咲くキャンパス構内を5人で歩く。真未と柚樹と菅くんにも勉強会の提案を回し、皆予定の無い木曜の夜に集まることに決まった。
「柚樹、次ある?」
「5限は宗教学でイスラームについて。ラクしてくるね」
「私も次あるからD棟行かなきゃ。じゃあみんな、またね」
「私はこのまま練習いってくる」
「俺も予定あるんだ。じゃあまたな」
キャンパスの中心にある広場でそれぞれ別れる。ただひとり菅くんだけ残して。。
「俺ばっかヒマっ子かよ!いいもん、漫喫で東京喰種読みまくってやるから!!」
経済学部棟付近にある、ブナの巨木を囲むように設置してある木製のベンチに座り、彼らを待つ。そよ風に揺れる葉の音と、遠くに聞こえるアカペラサークルの歌声をBGMに、恒例のラインチェック。
音々:明後日はヒマ?よかったら会わない??
......これは一旦保留で。
伽菜とのトーク画面を開いてタイプする。いまヒマだよー、伽菜忙しい??
......5分経過。一向に既読にならない。。すると、経済学部棟の入口が少し騒がしくなったのでそちらのほうへ視線を移す。
あ、出てきた。。
「葵だ!あ・お・いーーーっ!!」
......ハズいから、俺の名前を大声で叫ぶのはやめてくれ。お前に呼ばれるとただでさえ注目の的だ。
超絶笑顔で可愛らしく両手をフリフリしながらこっちに向かって駆けてくる彼は、双子の弟の方で、佐和滋。滋にややケイベツの目線をやりながらこっちに向かってノシノシ歩いてくる彼は、兄の方で、倶嗣。通称トモ。
「ごめんねー、葵。待った?」
「待ってないけど、滋、うっさい」
「あはは、マジごめん、葵の姿見えたら興奮しちゃって。木の下でスマホ構ってる葵もやっぱり可愛いね!」
興奮気味に早口で捲したてられる。
「そうかそうか。滋は今日も元気で何より」
なんとなく滋の頭を撫でてやる。
「えへへー、褒められちゃった!」
「......葵は褒めてねーし、お前ら、端から見たらきもちわりーぞ」
周りもドン引きだ、と呟きながらトモが滋の隣に気だるげに立つ。倶嗣はTシャツの上に黒の革ジャンを羽織り、ドクターマーチンのごついブーツを履いている。倶嗣は大抵全身ブラック。右手には煙の出るもの。
「ねね、今日のコーデどう?可愛い??」
滋はトモの言葉をまったく無視して、俺の前でひらりと一回転してみせる。上は、レトロな花柄のスカジャンなのに、かなりビッグサイズでだぼっとしてて、萌え袖の域超えてる。パステルブルーの色が、金髪で白人みたいに肌の白い滋に合ってる。パンツは、染色のかなり薄いダメージジーンズで、膝小僧が覗いている。金髪の毛先だけピンク。
「ふむふむ。......ちょーー可愛いよ、滋。。」
「でしょーー!葵の服もさり気ないのに可愛いよ!!」
「なあ、終わった?ファッションチェックとやら終わった??さあここから移動しようか、早急に」
滋と倶嗣は、俺と違って顔とスタイルがいいからよく目立つ。一卵性の双子だから2人の顔形は同じだけど、仕上がりがこうも違うとは。。特に滋はこんな見た目でこんな中身なので、キャンパスの有名人だ。
「ゆっくりハッパが吸いてーよ。こいつと居ると落ち着かない」
「じゃあとりあえず、ガスト行かない?」
「ガスト!フリードリンクっ!フリードリンク飲みたい!!」
すれ違う女の子の視線を感じながら(俺じゃなくて双子へのね。透明人間になった気分でちょい傷つくけど。。)、ファミレスにあまり慣れてない二人と一緒に、キャンパスの外へ出る道を歩いた。
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