02.05.16 Mon




絶叫マシンとかメリーゴーランドに乗る遊園地デート、水族館でイルカショーを楽しんだり、ショッピングモールで伽菜の買いものの付添いしたり、海沿いで夜景を見たりするのもいいなあ......。

今年のGWは伽菜とどこに出かけようかなー。

映画館で話題の新作洋画を鑑賞したりするまったりデートコースもいいかもしれない、と思いつき、俺と伽菜のアパートの中間地点にある映画館を検索する。

リビングのソファの定位置でGWの予定を考えていると、玄関で呼び鈴が鳴った。

「はーい、」

アマゾンで何か注文したっけ、とか考えながら、玄関のドアの覗き穴を覗くと、宅配のおにいさんとかではなく、子どもの頃から見知った女性の顔が見えた。ーー今日来るなんて聞いてなかったけどな。

ドアを開ける。

「ーーみゆきおばさん、いらっしゃい」

「葵くん、お久しぶり。突然お邪魔しちゃってごめんね」

伊兎と同じく眼鏡をかけ、ブランド物のバッグを持った伊兎の母親が入ってきた。

「葵くん、元気にしてた?」

「はい、お陰様で元気です。イトは、ちょっとそうじゃないみたいで......」

「そうね、うちの子が調子悪いみたいだから、急いで神奈川から来たのよ」

「どうぞ入ってください」

リビングに招き入れると、息子と話してくるわね、と声をかけられ、彼女はすぐに伊兎の部屋に向かった。

もう俺はお役御免だ、と思ってソファに戻る。
ーー伽菜にGWはどこに行きたいかラインで聞いとこーと。

「......外に出れないということでしょ?それは病気のせいなのよ」

トーク画面を開いて文字を打っていると、伊兎の部屋からおばさんの声が聞こえてくる。話がヒートアップしているみたいだ。

「ひとの頭の中なんて、読み取れるわけないでしょう?ね?それはね、あなたの妄想なのよ」

おばさんにも俺と同じことを話しているらしい。

第三者が聞いても、異常な会話だ。

「じゃあ何故、そのビーエムアイ?とかいう技術の対象に、あなたが選ばれたの?」

伊兎の話し声は小さいので、よく聞こえない。

「そんなわけないでしょう?伊兎、よく考えたらちゃんと分かることよ!」

狂気の世界から、常識あるこちらの世界に戻ってきてほしい。おばさんの声音には、そういう願いが込められている気がした。

「だからね、あなたは、病気なの」

「違う」

伊兎のはっきりとした声が聞こえてしまった。

ーーこのあいだ俺に打ち明けたときは、自分がビョーキだって認めてなかったか?

「大丈夫。クリニックに通えば、いつかちゃんと治るわ」

「おれは精神病じゃない。行きたくない......」

「伊兎、お願いだから、クリニックには行ってちょうだい。病気じゃないとしても」

話はもつれこみ、先に進まなそうだ。

盗み聞きを続けるのも悪い気がして、俺はiPhoneを持って自室に向かった。
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