※夢主=涼乃設定
奏壱ルートED後
裏で藍も助かってるけど一連の事は黙ってる
アンロジカルを終えてしばらく。奏壱さんの同棲のお誘いに、応えはしたものの実行には移せずにいた。
というのも、アンロジカルの事後処理は勿論。奏壱さんは参加者のカウンセリングで忙しく、私も滞ってた仕事が積もりに積もっていた。逸る気持ちはあれど、完全に私情なそれにただでさえ忙しそうな藍を巻き込むのも申し訳ない。話し合った結果、今受け持ってる仕事が落ち着いたらきちんと計画を立てる事にして落ち着いた。
どちらの部屋に住むのだろうか。それとも新しい部屋を借りようか。お互い仕事柄土地を選びはしないけれど。ああでも同棲をし始めたら今までの様に藍が泊まりに来る事も、私が泊まりに行く事も無くなるなあ。それはそれとして仕事では顔を合わせるけど。合わせるけども、奏壱さんは、一応男である藍と私が仕事とは言え顔を合わせる事をどう思うのだろうか。
そんな事を考えながらひたすらに仕事に没頭した。早く少しでも長く奏壱さんと過ごせる様に。早く同じ部屋で暮らせる様に。それはもう過去稀に見ない集中力であった。藍からも期限前に全て提出された事を訝しがられた。奏壱さんとお付き合いを始めた事は報告したが同棲の予定があるとは確定では無いしわざわざ言うことでもないかと黙っていたのだが、藍の観察眼は誤魔化せなかった。
白状すれば止まらない心配と小言達。戒君の事もあったからか余計にこのスピード感は心配を与えたらしい。けれどこれは私と奏壱さんの話でお互い納得はしてて、でも藍も大事な相棒で。藍も奏壱さんの事を信用してない訳じゃないのだろうけど、それだけ私を大事に思ってくれてるが故の心配だと思うと無下にもしにくい。どうしようと頭の中がめちゃくちゃになりそうになる前に、私は藍との事を奏壱さんに相談した。私1人で悩んでても解決しないし、何より話し合いましょうと約束したから。
「って、事なんですけど…。」
「えぇ…?」
漸くお互いの仕事が少し落ち着いた頃。久しぶりに奏壱さんの部屋でお家デートが出来た。ついでだと藍との話を包み隠さず奏壱さんに伝えると、呆れや不愉快では無くただただ不思議そうな顔をする。そんなおかしな事を私は言っただろうか。
「第一にですね。」
「はい。」
「しますよ。」
「え?」
「嫉妬。めちゃくちゃします。するに決まってるじゃないですか。」
「えぇ…?」
今度はきっと私が心底不思議そうな顔をしている事だろう。それに対して奏壱さんは凄く真剣です!と言わんばかりの顔だ。
「仕事で仕方ないとは言え、異性と2人っきりなんて嫉妬も心配もしますよ勿論。名前さんもそうでしょう?」
「そりゃあ、しますけど!」
その上私は貴方の過去の女性にまで嫉妬をすると以前言ってしまっているのだから否定のしようがない。
「ね?それでも、仕事です。それにあなたが作る物、ラトレイアの作る物の邪魔はしたくありません。僕だって新参とは言えファンですから。」
「んんっ……。」
普段大人びているのに突然少し幼なげな顔で自慢そうに言われると何も言えなくなる。お互いに仕事だから。どうしようも無い事は分かっているけれど、それでも少しでも彼の憂いを減らせるのであれば出来るだけの事をしたいと思う。
「しかし…そうですね。永守さんと僕がお互いの事を知らないから、と言うのも原因の一つかも知れません。彼とは最初のバトルの少しの時間でしか関わっていませんから。」
「ゆっくりお喋りって場合でもなかったですもんね。」
「えぇ、ですから改めてご挨拶も兼ねてお会いしたいですね。」
「き、聞いてみますっ。」
「はい、お願いします。」
「お邪魔しま〜す。」
「ありがと〜藍!」
「わざわざすみません永守さん。」
「いや俺も弥坂さんと話してみたかったので。」
「ならよかったです。」
そうして集まったのは奏壱さんの部屋だった。充満する肉の焼ける良い匂い。以前焼肉も食べたいと話して結局実行出来ていなかったのをそろそろと言う時、焼肉なら人数も増やしやすいと藍を呼んだ。しかし良く食べる奏壱さんとまだまだ食べ盛りな藍でお肉の量はおおよそ3人分とは思えない事態になっていたが。(別案で個室のある店というのもあったが2人して学生なもので敷居の高さに慄いた為却下となった)
「それにしても、俺お邪魔して良かったんですか?てっきり名前の家だと思ってたんですけど。」
「それがですね…。」
「同棲は奏壱さんのこの部屋でしようと思って。」
「へぇ、新しく部屋探すと思ってた。」
肉を食べながら純粋に驚いた顔をする藍はいつもより年下っぽく見える。どことなく奏壱さんも微笑ましそうにしている気がするのは気のせいだろうか。
「それも考え、探したのですが中々条件が良いところがなく……。ここでも多少彼女の学校から遠くはなってしまうのですが、どうしてもと譲って頂けなくて。」
「へぇ、何が気に入らないんで……え、弥坂さんじゃなくて?」
「はい…。」
他の部屋となると、物の散乱していたこの部屋からの引越し準備は大変そうだなとか、ここから近い美味しいパン屋に行きにくくなるなとか、この部屋にする理由は色々あった。けれど一番の大きな理由は。
「藍の家にこっちの方が近いんだよね。」
「は?ちょっと、それ、本気で言ってる?」
「うん。」
「その、お恥ずかしい話…僕等お互い頑固なので割と喧嘩もしちゃうんですよ。なので無いようにはしたいですが、万が一にも出て行かれた時場所が分かるのは強いなと。」
「そりゃ名前が頑固なのは知ってますけど……えぇ?」
「永守さんも何かあったらシェルター代わりにして下さい。」
「それに奏壱さんの仕事柄のお陰でこのマンションめちゃくちゃ回線強いよ。」
「!」
「お二人ともそこのポイント強すぎませんか?」
ゲーマーじゃない奏壱さんには回線の強さが如何に"強い"かが伝わらないらしい。けれど藍の顔は「なら仕方ないのか…?」と納得しかけている。
「それぞれの自室も作るつもりなのでお仕事でもここを使って頂いて構いません。」
「いや、俺が構うって言うか……その、弥坂さんは良いんですか?俺みたいな男が名前の近くに居て。」
「嘘は言いたく無いので正直に伝えますが、勿論永守さんに対しての嫉妬はあります。どう足掻いても彼女の過去を僕が知る事も出来ませんし相棒にもなれません。だから永守さんの事が羨ましいです。」
「……。」
「けれど僕は彼女の笑顔が好きですしその理由の一つが永守さんなんだから仕方なくないですか?僕だってラトレイアの活動は嬉しいですし。」
いつかの私のように仕方がないと言う奏壱さんに思わず笑ってしまう。私は欲張りだから、奏壱さんの事も藍の事もどちらかなんて選べない。奏壱さんもそれを分かってるから尊重してくれている。
「そして何より、永守さんが居なかったら僕等は出会って無かったかもしれない。だから感謝こそすれど、僕は永守さんと名前さんの関係を変えて欲しいなんて思ったりしませんよ。」
「そっ…、すか……。」
真っ直ぐな言葉は何よりも真実で、心配性の藍にもしっかりと伝わる。だからか、普段あまり見せない照れた顔が無防備にも晒されている事が嬉しい。
「ほらほら、藍も奏壱さんも折角のお肉が焦げちゃうよ?」
気付けば止まっている2人の箸を指摘すると、照れ隠しの様に食べ始める藍とそれを分かって居ながらも気付いてないフリで食べ始めた奏壱さんにまた笑みが溢れてしまった。
ねえ、藍。私の彼氏最高でしょう?
ねぇ、奏壱さん。私の相棒最高でしょう?
「あ〜美味しい!」