夜も更け始めた頃、船内の一室には隊長達が首を揃えていた。

「晴れてナマエが仲間になった訳だが、一つ問題がある。」
「何だよわざわざ全員揃えてまで。」
「ナマエが何番隊に所属するか決めないといけない。」
「「「!!」」」
「まあナマエはナースじゃないからねえ。」
「どこにも属さないってのも仕事もやりにくいだろうし船に居づらくなるだろぃ。それで、ナマエが自隊に欲しい奴は居るか?」
「!はいはいはい!!」
「俺のとこだよ!」
「是非うちに欲しいけどねぇ。」
「おい!誘ったのは俺だぞ!」
「やっぱこうなるか……。」



「て事で親父に相談した結果、ナマエ、自分で選べよぃ。」
「え。」

一夜明けて、朝。今度はきちんと船員として乗船の為さあ何を仕事とするかと意気込んだナマエには突然の話であった。確かにこの船は船員が多い為部隊に分かれそれぞれ分担して回っていたが、まさか自身に選択を委ねられるとは思ってもいなかった。

「どこでもやる事は大差ないとは思うが…。」
「え、そうなんですか?」
「ナマエには錬金術があるからねぃ、雑用よりそれ頼りになるよぃ。」
「なるほど。」

そう言われれば尚の事悩んでしまう。まだやる事がそれぞれあるのならば選ぶ理由になっただろう。無いと言われれば決定打が何も無い。

「ナマエ!」
「おはようエース。」
「勿論俺の隊に入るだろ!?」
「ずっとこれだよぃ。」
「俺がこの船に誘ったんだぞ!」
「それとこれとは別。」
「なっ、何でだよ!」
「船員の一人になるんだからきちんとやるべき事は見極めたい。」
「真面目だねぃ。」
「あと書類仕事が遅そうな上司の所は嫌。」
「うっ、」
「今殆どの隊が消えたねぃ……。」

反論出来なくなったエースと苦笑いのマルコ、そしてどれだけ期限を破っているのかと呆れるナマエと三者三様だ。

「マルコさんの所はどうなんですか?」
「うちは期限は守るがそもそも集める所だから他より忙しいよぃ。」
「他より忙しいのに守らない他の隊は何をしてるんですか…?」
「ヒッ!!」
「やめてやれエースが死ぬよぃ。まあうちは医療班も兼ねてるから他とはまあ毛色が違うな。」
「医療班ですか。」

確かに初めてこの船に来た時、救護室に連れて行ってくれたのはマルコであった。マルコの悪魔の実の能力を思い出せば納得である。

「マルコさんの隊に入れますか、私。」
「なにぃっ!?」
「そりゃうちは歓迎するが、何でまた?」
「私もそれなりにあっちでの医療の知識があります。違う事も多いでしょうけど人体構造に極めて大きな違いはないでしょう。私が役に立つ自信もありますしこの世界の医学に興味があります。」
「ほぅ?それは助かるねぃ。」
「おいマルコ!歓迎するな!俺の隊に来るんだよナマエは!」
「本人の意志だ、諦めるよぃ。」

いざ隊が決まると救護室の説明や隊員への紹介があると言うマルコさんに着いていく。エースも着いてこようとしたが2人がかかりで持ち場に戻らせた。そういうところだよエース。

「来た事あるだろうが、ここが救護室だ。うちは見ての通り雑なやつばっかだからねぃ。ナマエなら適当に使う事もないだろうから中のものも好きに使うといいよぃ。隣が備品庫で薬草とかもそっちに図鑑と一緒にしてある。分からないものがあれば俺に聞いてくれ。」
「分かりました。」
「5日おきと大規模な戦闘後は在庫の確認がある。出来れば手伝って貰いたいんだが……。」
「その程度なら是非。」
「助かるよぃ。うちは医療班だから早々回ってこないが隊毎に毎週仕事が割り振られる。掃除とか洗濯ってもしかして錬金術で出来たりするか?」

出来るか出来ないかで言えば、出来るのが問題だ。だからって出来るのに嘘をつくのも後ろめたい。大所帯で家族とは言え、一つの組織だからその仕組みを根底から覆す訳にはいかない。さてどうしたものかと、言いあぐねている私を見兼ねたのか、マルコさんは救護室の小さな椅子に腰掛けた。私も続いて近くの椅子に腰掛ける。

「何か言いにくいか?」
「…出来る出来ないであれば、出来ます。汚れの分解をすればいいだけなので。順に濡らして泡立てて流してを全て錬金術でする事も可能です。ただ、そうですね……例えば晴れた日に干した洗濯物独特の幸福感までは私には再現出来ません。掃除しながらふざけるなんて事もさせる暇なく全て終わります。便利に見えて面白みはないですよ錬金術は。」
「まあ確かにそれは味気ないよぃ。」
「それに私が担当する時だけ楽が出来るとなると他の隊から反感を買いませんか?どうせ次私がやるから手を抜いてもいいかってなりませんか?」
「……。」
「あまりお勧めはしません。」
「わかったよぃ。ならそこら辺は今まで通りナマエも一緒に手作業でやってもらうかねぃ。」
「要は使い所ですから。」

手を伸ばし冷め切ったコーヒーの入ったマグカップに手を合わせてから触れる。すぐ様温まったマグカップからは湯気が立ちコーヒーの香りが増した。

「贅沢だねぃ。」
「お世話になる隊長へのサービスですよ。」

エース筆頭にみんなに振り回されているだろう日頃の労りも込めてだが。温め直したコーヒーをそのまま手に取り一息吐くぐらいには疲れているらしい。まあエースが突然私を連れてきて家族にすると言い出して、昨夜の会議では私の所属が決まらず今も案内をしてくれているのだから疲労の一端が私の所為と言っても過言ではない。

「マルコさんがそれを飲んでいる間、ここに散らばってる書類を読んでも良いですか?」

そう私が聞くとマグカップを持った手とは逆の手で好きにしろと手を振られる。実に様になっている。どうやらここでの上司は仕事も出来てかっこいいらしい。
入隊


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