n巡目

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9月26日、午後11時55分。


「一階の準備はOK?スージーQ」

「バッチリよ!先に行って待ってるわね!」

「俺達も位置に着くぞ」

「Va bene.」


場所、ジョセフの部屋の前。

扉の前に立ち、シーザーと共に耳を澄ませる。
…音はしない。ぐっすり夢の世界に旅立っているようだ。
2人で顔を見あわせ、腕時計を確認する。

3...2...1...

ドゴォンと勢いよく扉を蹴破り(リサリサ先生の許可は既に取ってある)、眠っているであろう標的の枕元へ全速力で近づいた。


「せーの!」

「次にてめーは「お誕生日おめでとうジョセフ!」と言う!!」

「お誕生日おめでとうジョセフ!!…ハッ!!」


パァン!と軽快な音が鳴り響き、ハラハラとクラッカーの中身が宙を舞った。


「うるせェェェェ!!!耳元で鳴らすかフツー!?」

「ご、ごめんジョセフ!」

「ったく、サプライズが台無しじゃあないか」

「だってよォシーザーちゃん、折角の誕生日にグースカ眠ってる訳にはいかねえだろォ?」

「はぁ…叩き起す手間が省けたと思う事にしよう。ほら、行くぞ。スージーQが待ってる」


シーザーの言葉に「what?」と目を白黒させるジョセフ。
さすがにジョセフもサプライズは予測できても今から宴会をするとは予測できなかったようだ。


「お祝いだよお祝い!お酒とか美味しい料理とか、あと手作りケーキとか!」

「えっと…ナマエちゃん、今何時か分かってる?」

「0時10分。10分も過ぎちゃった」

「いや俺今から寝るつもりだったんだけどなァ…」

「いつも色々してやられているからな。今日は付き合ってもらうぞ」

「ほらほら、起きて起きて!」


シーザーと協力してジョセフを引きずり出し、両脇をがっちりホールドして一階へと向かった。





スージーQやリサリサ先生、ロギンズ師範代とメッシーナ師範代を加え、夜中だからと軽いおつまみ中心で盛り付けられた皿が並べられた豪華な食卓を皆で囲み、ジョセフの巧みな話術で笑いながら和やかに誕生日会は進んだ。


「おーい、シーザー?スージーQ?…駄目だこりゃ、潰れちゃったみたい」

「ナマエちゃんは平気なのねン」

「私そんなに飲んでないから!皆潰れちゃったらジョセフが寂しくて泣いちゃうと思ったの」

「ナマエちゃんが優しいィィ!!ジョセフ感激!!」


酒瓶片手におーいおいと泣く巨体。見事な酔っぱらいが出来上がっている。こりゃあ相手にするのは大変だ。
時計をちらりと見ると針が二度回った後だった。そろそろ若者組はお暇する時間だろう。


「ほら起きてシーザー!」


シーザーの頬をペちペちと叩き、こちらの世界へ帰ってきてもらう。


「ん…あ、頭が痛い」

「自業自得でしょ。ほら、可愛いシニョリーナを部屋まで運んであげて」


目線でスージーQを指し、「後はよろしく」と肩を叩いた。私はまだやるべき事がある。


「リサリサ先生、師範代、お先に失礼します」

「お休みなさい。いつも通り修行はあるので忘れないように」

「ゲ…」


大人組に挨拶した後、フラフラのジョセフを背負うように支えて彼の部屋へと向かう。クソ、重い。息が乱れないよう波紋の呼吸を使っているが、これ一種の修行なんじゃ…


「つ、着いた」


シーザーとサプライズを仕掛ける為に来た時はすぐだったのに、2倍時間がかかった気がする。半壊した扉を蹴り飛ばし、中のベッドにジョセフをずり落とした。


「痛ってえよシーザー!!ってアレ?ナマエちゃん?」

「嘘でしょ…気づいてなかったの!?」

「俺を運んでるのずっとシーザーだと思ってた…」


ナマエだったら酔い潰れた振りなんてしないできちんと歩いたのに。

ボソッと声が聞こえ、てめーわざと体重かけてたのかおいコラ、と思わず怒鳴りそうになったがギリギリで堪える。違う、怒りに来たんじゃあないだろ!

部屋の棚の下に隠してあった包みを取り出し、ジョセフに渡す。


「はい、誕生日おめでとう記念のプレゼント」

「……や、やったァジョセフちゃん嬉しい!!お礼にチューしてあげようか?」

「黙って開けろ」

「はいはいっーと……お?なんだこれ」


ガサゴソと包みを開けて取り出したのは手編みのマフラー。私が一生懸命作り方をスージーQから教わって作った物だ。


「ちょうどお店で売ってたから買ってきた。…どう?」

「めっちゃうれピー!!大切にするぜ!!」


マフラーをぎゅっと抱きしめ、私へVサインをしたジョセフ。サンタクロースからのプレゼントを見つけた子供みたいな、そんな満面の笑みを向けられ、心臓がギュッと鷲掴みにされたような錯覚が起こった。


「どうしたのナマエちゃーん?」

「…よ」

「よ?」

「汚したら許さないんだからね!おやすみ!!」


ジョセフの笑顔に見とれていたのを誤魔化そうとしたら、ついツンデレみたいな台詞が出てしまった。
慌てて部屋から飛び出してしまい、向かい側の自室へと飛び込みベッドでうわあああと呻き声をあげる。

計画では可愛く、女の子らしく渡すつもりだったのに!

マフラーだって嘘をつくつもりは無かった。だけど、要らないって言われたらと思ったら駄目だった。

ああもう、これだから恋する乙女は面倒くさい!

頬をバシッと叩いて気合いを入れる。

せめてジョセフの誕生日くらいは可愛い女の子でいたい。だったら起きたらまた頑張れば良いじゃあないか。
幸い彼の誕生日はまだまだ始まったばかりだ。
修行が終わったらデートに誘って街に行こう。

よし、と意気込み、修行に備えて眠りについた。





(全く、ジョセフ様を騙せると思ったら大間違いだぜ)


ごろんとベッドに寝っ転がりながら、明らかに手作りです感満載の手編みのマフラーを伸ばしたり縮めたりと手で弄ぶ。
これは間違いなく彼女の手編みだ。その証拠にナマエの指は絆創膏だらけだった。間違いない。

普段は男勝りで姉御肌な彼女が、こんな乙女らしい一面を持っているだなんて。
どうしてか、ナマエを愛しいと思う気持ちがどんどん溢れて止まらない。

まだ9月だが折角ナマエが作ってくれたんだ、今日は一日中着けてやる。そう思ってマフラーを首に巻く。
顔を埋めてすん、と匂いを嗅いでみた。お日様の良い香りがする、ような気がするような。

ああ、くそ。とんだ爆弾落としやがって!

本人は気づいてなかっただろうが包みを渡す時の緊張して真っ赤になった顔や、マフラーを嬉しいと言った後ホッと安堵のため息を吐いた後嬉しそうにはにかんだ顔が瞼の裏にちらつき消えてくれない。

髪の毛をガシガシと掻きむしり、半壊した扉から見えるナマエの部屋を睨みつける。

起きたら覚えておけよ。修行中もその後も付け回してやる!

何故こんなにも心を乱されるのかよく分からないままだったが、昂る鼓動を押えつける為に布団を頭から被り目を瞑った。


Happy Birthday!!! Joseph=Joestar 9/27

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