許せない、許せない、許せない!!

ずんずんと早足で小川近くの木陰に向かう。根元にしゃがみ込んだ金髪の姿が見え、ニヤリと口角が上がった。…居た。


「ディオ・ブランドー!!」


名前を大声で呼ぶと、緩慢な動作で顔を上げたディオと目が合う。そのまま視線を下げ、唇をじいっと見つめた。

私の大親友エリナのファーストを奪ったクソ野郎の唇め…!!

既に私の腸はグツグツと煮えくり返っている。エリナを泣かせた罪は重いぞ。その身をもって償うと良い。私はずんずんとディオの元へと歩き、左手で胸倉を掴みあげた。


「何をするんだこの暴力女!」

「うるさい!エリナの敵め!」


空いた右手を振り上げ、思い切りパーでディオの頬を叩く。パシーンと良い音が響いた。


「よくも僕を殴ったな!?」

「殴ったんじゃあない叩いたのよ!グーじゃ無かっただけマシだと思いなさい!」


地面にドサッとディオを落とし、ハンカチで手を拭う。ハンサムな面してるからって調子に乗ってんじゃあないわよ!
頬に手を当てて目を潤めながらこちらを見上げる間抜けな姿のディオをフンと鼻で笑う。全く、根性が無いわね。


「君はさっきエリナの敵と言ったが、あいつの友人なのかい?」

「そうよ。大親友よ。だったら何よ」


俯いてクククと笑うディオ。何笑ってんのよ、女の子に叩かれて頭おかしくなっちゃったわけ?
これ以上こいつと同じ場所に居たくない。そう思った私は家に帰ろうと踵を返した。が、ディオに腕を掴まれ阻止される。


「触らないでよ!」


振り払おうともがいてもビクともしない。おかしい、さっきは私に胸倉掴まれてた癖に。強い力で木に押し付けられ、ディオに逃げ道を塞がれてしまった。
両手を頭の上で縫い止められ、右手で顎を掴まれ無理矢理顔を上げさせられる。


「な、何を」


するのよ、という言葉はディオの唇によって塞がれてしまった。…はあ?


「いやぁぁぁぁぁ!!!」

「ぐっ」


火事場の馬鹿力でディオの手を振りほどき、彼の身体を突き飛ばす。今、今ディオにキスされた!!この男はエリナじゃ飽き足らず、私のファーストも奪ったのだ!!
最悪、最悪、最悪!!!服の袖でゴシゴシと口を拭う。好きでも無い男とキスをしてしまった。うへぇ、気持ち悪い。


「このクソ野郎!!地獄に落ちろ!!」


右手を振り上げ、思い切りグーで殴る。凄い勢いで飛んでいったディオは、バシャーンと派手な音を立てて川へと転落した。

走ってその場から逃げ出す。ああ、二度と会いたくない。金輪際お関わりになりたくない。


初めての感覚
※続くかも

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