「僕のプリン食べた奴は誰ですか?」


ゴゴゴゴゴ…と背中に擬音が見えるくらいお怒りな様子のジョルノがドスの効いた声で尋ねながらリビングに現れた。

あたしの手には今まさに食べ終わったばかりのプリンの容器とスプーンが握られていて、あっやべぇこれ名前書いてなかったからあたしへの匿名のプレゼントかと思った…やらかした大賞受賞おめでとうナマエちゃん、と刻み込まれた恐怖から携帯のバイブ機能のようにカタカタ身体を揺らしながらどこか他人事のように考えた。


「やあナマエ、何やら素敵なものを握ってるようですがそのプリンは美味しかったですか?」

「Ho mangiato benissimo…(凄く美味しかった…)」

「殺す」

「いやせめて理由を聞いてよ!!」


絶対零度の瞳であたしを見つめるジョルノに怯えながらも、この状況を打破する為にソファーに寝そべっているミスタの方へとチラチラ視線を飛ばすと、私の熱視線に気づいたのか「んぁ?」と間抜けな声をあげながらミスタがのそりと起き上がった。
が、しかしすぐお怒りモードのジョルノを見つけ、「あ、ちょっと俺用事が…」とそそくさと出ていってしまった。なんて奴だ!!この裏切り者が!!と全然何も悪くないミスタを心の中で罵る。


「ほら、早く理由とやらを言ってくださいよ」


あまりの恐怖に持った容器が物凄い速さで振動している。15歳に怯えるギャングってどうなのかと思ったがこの怒り心頭の15歳もギャングだったわ。
理由が下らな過ぎて言える訳が無いが、正直に話しても嘘をついてもきっとゴールド・エクスペリエンスで殴られる。ならば正直に言った方が良いんじゃあないかナマエちゃん。
そうだ、常に正直であれってあたしの愛するお婆ちゃんだって言ってたじゃあないか。正直に生きよう。うん、そうしよう。


「名前が書いてなかったからあたしへの匿名のプレゼントかと思いました許して下さい!」


容器とスプーンをテーブルに置き、椅子の上で器用に膝を着き頭をくっつける。見よ、この華麗なるジャッポーネ式土下座を。ジャッポーネーズィはこの土下座ってやつをすると何でも許してくれるってアバッキオが言ってた。
どうだ?効いたか?と顔を上げるとゾッとするくらい綺麗に微笑むジョルノと目が合った。ナマエ知ってる、ジョルノが綺麗に笑う時はブチギレてる時だって。
クソ!アバッキオめ!全然効いてないじゃあないか!


「ほう…駅前にできたプリン専門店で売られている開店一時間前に並ばないと無くなってしまう毎日限定50個の、この僕がわざわざ並んで買ったプリンを?自分へのプレゼントだと思ったんですか?随分おめでたい頭をしてますね。ナランチャより頭悪いんじゃあないですか貴女。学校行ってたくせに。学校行ってたくせに!」

「うわ2回言った酷い!ごめんってばジョルノ!痛い痛い頭掴まないで振らないで!!許してよォ!!」

「許しません」

「あたしがその限定プリン買ってくるからぁ…」

「一週間毎日並んで買ってくると誓ってくれたら許しましょう」

「エ゛ッ一週間!?……並びます並びます!!あたしナマエはジョルノの為にプリンを買ってくると誓います!」

「…分かりました。許しましょう」


ふぅ、とため息を吐いたジョルノがあたしの髪の毛を掴んでいた手を離してパソコンに向かった為、あたしは晴れて自由になる事ができた。
うう、慣れない土下座をしたから膝が痛い。
痛む膝を擦りながら、はて、ジョルノはどうしてパソコンに向かったのだろうかと思い彼の方を見る。なんとジョルノはガガガガと恐ろしい音を出しながら高速でタイピングしていた。何やってんだあれ。気になったので傍に寄ろうとすると、ターンッとエンターキーを押した音が響き、数秒後プリンターが起動する音が鳴った。


「何してるの?」

「アホな貴女が約束を忘れないよう誓約書を作ってあげました。感謝して下さい」


うげぇそこまでするのかよ、とわざとらしく顔を顰めてやったが「ブサイクですね」と一蹴された。許さん。
これからはバレる前に容器を片付けよう、と固く心に近いながら、プリンにだけは目がないジョルノが作った誓約書に名前を記入した。


Budino-la grande guerra!


「で、なんでジョルノも一緒に並んでいる訳?」
「貴女一人じゃちゃんと買えるか心配だったので」
(意外と面倒見良いんだよなぁこいつ…)

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