2017.09.18 Mon 世界を恨んでいるか(1)
pkmn/ダイゴ/成り代わり/プロットなので校正してません。故に誤字脱字多、設定の相違・矛盾有りかも

 己の名と一文字も掠りはしないというのにハルカちゃん! と私が"はるか"以外の何者でもないと信じて疑わない様子で声を掛けてくるから、思わず。

「……誰?」

 と返してしまったのは致し方ないことだろう。だが、目の前の男がそれはもう、驚愕と悲しみを綯い交ぜたような表情をするから、自分の発した言葉は間違えていたのだと悟らずにはいられなかった。

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「まさか……覚えてないのかい?」
「なにを、ですか」

 一体何の話をしているのだろう。変な髪色をした見知らぬ男性に、こんな質問をされる筋合いは私にないはずだ。私の記憶は、麻酔を注射してもらったところで終わっている。記憶を掘り返しても、この男と同じ顔は見つからなかった。なら、病院関係の人? 否、良いとこの会社員みたいな服装をしている人なのだ。洋服に疎い私でも判別がつくくらいなのだからきっと良いお値段がするのだろう。それが、院内の仕事着だとでも言うのか。取引先に挨拶周りに行っている方が似つかわしい。

「もしかして、記憶喪失になったんじゃ……」

 一体何を言っているというのか。私が記憶喪失? 随分馬鹿げた話だ、物心ついた時の記憶から今の今まで記憶はある。しっかりと覚えている。それなのに、私が件の"はるか"でないだけで記憶喪失なんて決め付けるなんざ阿呆らしい。

「あの、病室間違えているんじゃないですか?」

 親切心でそう言ったが間違えていないよと青年は言う。おかしい、明らかに話が通じない。
 兎に角、先生を呼んでくるよと言って病室を去った男性を呆然と見送ったあと。思い出したように己の病室を見渡した。
 何も変わっていない。私が最初、此処に来た時と同じ──否、テーブルの上にたくさんの荷物が置かれている。これは、アチャモのぬいぐるみ? 他にも似たようなポケモングッズが置かれていた。何故? 私の知り合いにこんなものを持ってくる人なんていないのに。
 違和感に首を傾げつつ顔洗ってこようとベッドから降りる。床へ足をつけた瞬間、また違和感。……視界が低い?
 どういうことだと洗面所の前へ駆け寄り、息を呑んだ。

「……だれ?」

 眼前には、碧眼を真ん丸に見開いた茶髪をした子供がいた。


▲▼

 貴女は誰、と問い掛けた唇が右手を挙げた動作が頬を引っ張った動きが寸分の狂いなく私と一緒に行われているから嫌でも理解した。

──この見知らぬ少女は"私"だ。

 一体どういうことだ。私はこんな顔をしていない。私はこんな子供ではないし茶髪でも碧眼でもない。知らない、これは私じゃない。誰? 顔面を蒼白にさせふるふるとうち震えている眼前の少女は一体誰だ? まさか、さっきの男が言っていた"はるか"なの? この身体は一体、

「まだ起き上がってはいけません!」

 そんな声に後ろを振り返れば看護師さんが慌てた様子でベッドに戻るよう言うが、無視して看護師さんの腕に縋るように叫んだ。

「私は、一体誰なんですか…!」

 そんな私の様子に瞠目して、後ろに居たらしい──先程の青年に一度視線を送ってから私に向き直ると目線を合わせ頑是無い子供を宥めるように言い聞かすように一言一句区切って言った。

「貴女は、ハルカよ」

 違う、と発したはずの言葉は空気を呑む音となって何も出なかった。
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