というお話が書けたらいいな
※ウルトラスペースに巻き込まれたOL
何故私だったのだろう。
この三ヶ月間そんなことばかり自問自答していた。何故私でなくては駄目だったのか、何故他の人ではいけなかったのか。何故私はあの場に居てしまったのか、――何故あの闇に取り込まれたのか。
出口の見えない問題を繰り返しては、答えの出ない解答に口籠ってこの世界に恨み言を吐き捨てる。
だって、もう少しだったのだ。
仕事もようやく慣れてきてそこそこ重要な案件も回されるようになり。仕事の出来る、社内でもイケメンと評判の上司とも打ち解け週末に飲みに行く約束もしていた。久し振りにクラスの同窓会の連絡が入り参加の連絡をしてネイルサロンや美容室の予約もしていた。友人と近頃出来た石釜焼きピザを提供するイタリアンのランチを食べに行く約束もしていた。
彼氏こそここ一年出来なかったものの、何もかも充実。仕事もプライベートも順調に進んでいた。そう、アレさえ、あの出来事さえなければ。
「……エンニュート、火炎放射」
思い出してしまえば腹の底から沸々と怒りが込み上げる。思わず握り締めていた拳を振り払うかのように掌を翳し技を指示すれば、私の怒りと同調してかエンニュートの火力がいつもより上がった気がした。
スカル団から巻き上げた端金を財布に仕舞う。今までは、ものの十分で二千円が手に入るなんて思わなかった。上手くいけば時給一万二千円。前の世界の私なら、その金額を聞いて風俗でもしているのと顔を顰めたことだろう。
この世界ではバトルにさえ勝てればお金なんて簡単に調達出来る。物価は少々高いが、問題なく賄える範疇だ。島という閉鎖的な空間のせいかそれともお国柄か、見ず知らずの私に親切してくれる人は多い。それを心置きなく受け取り、利用し、時には涙を見せ、でっち上げた必要悪な不幸話を語り聞かせお涙頂戴し、この世界で私という地位を築き上げた。
だって、仕方ないのだ。
この世界は私が元居た世界とは全く違う。この世界で何も後ろ盾のない私が、人間らしい生活を営むには皆の良心を利用するしかなかった。
でっち上げた、適当な記憶喪失の話に同情してくれる姿を見て痛む心などとうに捨てた。全て生きていく上で必要なものだからだ。
私が、生きて元の世界に帰るための。