「ペア、変わってくんない?」

やっぱり来ると思ってたよ。


私が引いたくじは見事にアイクと同じ番号で、数字を見た時は嬉しさで思わず笑ってしまいそうになった。
が、つかの間の幸せは彼女のその言葉が発せられて、1分で終わりを告げたようだ。

正直転校生の対策はあまり練っていなかったので、どうしたものかとしどろもどろに視線を背けていると、アイクが

「決められたペアで踊れ。あんたのペアが不憫だ」
「えー!だって!私はアイクと踊りたいもん」

きめ細やかなお手入れを入念にしているのだろうと分かるほっぺを膨らませて怒る姿は、一般の顔立ちがやればただの痛い奴だが、彼女がやると思わず甘やかして宥めたくなるような、そんな可愛さがあった。

これが顔面偏差値の格差というものだろうか。勝てる気がしない。

あ、なら、こんな私が、アイクと踊っていいのかな?

「いい加減戻れ。そろそろ始まるぞ」
「…いいよ、変わっても」

そういった瞬間、アイクはどんな表情をしていたか、斜め後ろにいたから分からなかったけれど、私の目の前の美少女はとびきりの笑顔を見せて目をキラキラさせた。
なんて世の中は不公平なんだろう。妬ましいくらい可愛いなぁ。

「いいの!?やったー!」
「…うん。アイクもいいでしょ?」

顔も見ないで問いかける。
今見たら、きっと後悔すると思うから。

「…俺は、名前と踊る」

「は」

なんだか少し苦しくなった。

でも、これは嬉しくて、胸がいっぱいの苦しさなんだ。
アイクにとっては、転校生のペアを思っての発言だったかもしれないが、私はそれでも嬉しくてたまらなかった。

「んー、、分かったよ。アイクがそうしたいならやめとく!」

引き際をわきまえている彼女は、何事も無かったかのようにペアの元へ帰っていく。

「名前、昔からお前はわかりやすいな」
「いきなり何?」

別に、と、いたずらっぽく笑うアイク。
この顔はからかってる時にでるから、ほかの人にはきっと見せてないと思う。
私だけの、知ってるアイク。

宝石箱の中に、大切に閉まっておきたいくらい架け替えがなくて大切なこの表情は、いつまで私だけのものだろうか。
いつの日か唐突になくなってしまうのかもしれないけれど、

せめて、今だけは…。