※ちょっとぬるエロです


私には自動販売機より背の高い変人幼馴染がいる。

字面だけ見ると物凄いパワーワードだが、マジでその言葉が当てはまる男だから仕方ない。

しかし、こんなパワーワード野郎を好きになる私も大概だろう。
毎日自身の自信作だと称しながら怪しげな汁を私に飲ませようとしてくるし、飲まないとしつこくどこぞの番組集金のように付け回される。

乾汁とやらを、欲しくなさすぎる幼馴染特権で開発当初から飲んでいた私は、何故か舌が鍛えられて多少不味いなと思うぐらいにしか味覚には効果がない。
なので、乾汁の効果を見たいけれど全く飲んでくれそうにない部活の部員達の代わりに、私が飲まされた回数は数えきれないほどある。

それでも仕方なく付き合ってやるのは、やはり惚れた弱みというものだろう。
夏休みの自由課題で作っている新作乾汁の効果と味を聞くためだけに今日も私は彼の家に呼び出されて来ている。くだらない。

こんなことしているなら英単語のひとつでも覚えた方が絶対役に立つのに、貞治に会いたくてつい来てしまう自分も、貞治も。

「待っていたぞ、夢子」
「ん、おはよ、貞治。おじゃましまーす」

いつも通りおばさんに挨拶をしてからお菓子を貰って貞治の部屋へ。
データはきっちりとるくせに部屋は少し散らかっているので、足元には気をつけてベットに腰をかけた。相変わらず壁のよくわからん落書きは増え続けている。

「んで、今回のはどんなの?」
「ふふ、今回は夢子のための特注品だ」

さっきまで曇りがかったような不機嫌さだったが、貞治が私のために作った、と言われて、コロッと機嫌が良くなるなんて私は現金なやつだなぁ。

逆光で見えないメガネの奥の瞳から見る貞治はは、どこまで私の気持ちをお見通しか分からないが、あくまでそれを悟られないように興味無さそうな反応を返した。

「ふぅん、ま、味見くらいはしてやってもいいけど」
「では早速…」
「あ、ちょっと待って」
「どうした?」

どこから取り出したのか、例のアレはコップから紫色の汁が泡をたてては弾けている。
言わずもがなこんなのまずいに決まっているが、今更ながら何故こんなにも不味いのか、疑問を抱いていたことを思い出す。

味か良くない大抵の理由は確かあの理由のことが多いはず…。

「あのさ、貞治。これ、味見した?」
「……していない」
「はぁ?!」

自身か作っておいて味見すらしていなかったとはどういうことだ。
私は貞治が不味くても味見しながらデータ通りに懸命に作っていたはずだから、きちんと飲まないと貞治に悪いと思って飲んでいたのに、裏切られた気分でいっぱいになる。ムカつく。

「馬鹿貞治。ちょっとそこに座りなさい」
「何故だ」
「いいから!乙女の気持ち踏みにじって、ただで済むと思わないでよ!」
「わ、分かった。座ろう」

昔から私が貞治に怒鳴りつける時は本気で怒っている証拠だと分かっている彼は、ギシリと音をたて、私の方を向いてベットに正座する。

「貞治、確認だけど、本当に1度も味見してないんだね?」
「……そうだ」
「それを今までずっと私に飲ませてたんだね?」
「……はい」

なによ、それ。

私は貞治の幼馴染だからって、そこまでに雑に扱われたくないのに、これじゃまるで都合のいい女どころかそれ以下のモルモットじゃないか。
貞治の馬鹿野郎。

「……」
「……夢子?」

大概怒ったら強烈なデコピンをする私に構えていたのか、恐らく目を瞑っていた貞治は私が何もしてこないことを不振がっている。

それを尻目に、私は黙ったまま乾汁をひとくち飲んだと同時に、貞治の眼鏡を奪うと、例のブツを口に含んだ。

やっぱりめちゃくちゃ不味い。旨み以外の味覚が全て自己主張激しく不快に押し寄せてくる感じだ。
しかしこの程度で私特注なんて、今まで鍛えられてきた私の舌を侮らないでほしい。

ニヤリ、と口角をやや上げ、それを口に含んだまま私は貞治にグイッと近づく。


私を怒らせたこと、地獄で後悔するんだな。

「……!」

貞治の後頭部を抑えて、唖然として空いている口にキスをする。

唾液の混じったどろりと生暖かい液体を、貞治の中へ無理矢理送り込み、吐き出さないようにそのままキスし続けてやるとようやくゴクリと音が聞こえ、飲み込んだことを確認する。

唇を離すと、上手く送り込めなかった液体がお互いの口の端からこぼれ落ちて、シーツにシミを作った。

長いキスのせいか、どちらも息がやや上がっている。

どうだ、不味いだろ。ざまぁ、貞治。

「……」
「……なによ、なんかリアクションしなさいよ…」
「……死ぬほど不味いな…」
「いつも私にそれ飲ませてるの誰よ」
「本当にすまなかった。……味の調整もやはり考えなくてはな…」

そう言うと、貞治は味をもう一度見るためか汁を口に含んだ。
そうそ、やっぱり自分がまず不味いって思うものは人に飲ませちゃダメだよ。ちゃんとそうやって味見を……。

「!」

再び唇に熱がじんわりと広がったと思えば、今度は私が貞治の唾液の混じった温い汁を飲み干してしまった。

……不味い、ぬるい。

飲み終わったというのに、一向にキスをやめない貞治は、私を割れ物のように優しく抱きしめながら深いキスを始める。

分厚くて熱い貞治の舌は、私の口内を犯すように繊細に激しく動いていた。

なにこれ、貞治キス上手すぎじゃないの?
こんなことどこで覚えてきたんだこの眼鏡。

「…ぁ!」

上顎をなぞられ、ゾクゾクとした感覚が襲いかかる。
データはもう把握済みだと言わんばかりの舌使いで、私の弱いところばかりを攻めてくる貞治の目は、幼馴染のそれではなく、1人の男の目だった。

怖いのに、もっとそれが欲しい。

私も彼を求めるように舌を絡ませると、少しだけ驚いたのか目を少し見開く貞治は、ギシリとベットを軋ませた。

何十秒とキスをしているのか、もはや検討すらつかないほど頭が溶けてしまっている私は、彼にされるがままにお互いにキスを貪る。

「さだは…る…」
「…夢子…」

途中、1階にいるおばさんがご飯の支度をしはじめたのかガタンと音がこちらまで聞こえた。

どうしよ、もしここでおばさんが上がってきたら。

しかし、今の私たちには、それすらも背徳感という名の快感にしかならない。

もっと、貞治が欲しい。

貞治の長くて白い、マメだらけの手に触れると、貞治もそれに答えるように指を絡めて手を繋ぐ。

幸せすぎてなんかちょっと苦しいかも。

「…はぁ…はぁ…」
「…こういう味見ならいくらでも大歓迎だな」
「…へん…たい…」

流石は運動部、肺活量が違う。
呼吸の乱れていない貞治を睨みつけると、誘っているのか?と、ニヤリと笑いながら近づいてきた。

「好きにすれば…?」

目線が合わせられなくて、そっぽを向きながら呟く。
それが余計に貞治に火をつけてしまったのか、私はベットに押し倒されてしまった。

「今日は作業が捗りそうだ」


溺れてしまいそうなほど、深く沈んだベットで私の耳元で、彼は囁く。

「…協力してもらうよ、夢子」