※テニプリ公式小説ネタバレを含む内容です。
※なんでも許せる人向け





















※桃城と海堂が同じ幼稚園だったのが衝撃的すぎて書きました。主人公もその幼稚園に在学中の設定です。




「だーかーら!夢山はオレとあそぶのー!」
「ちげぇ!オレとだ!」

合唱祭の時よりも大きな口を開けて夢山の耳元で叫ぶたけしと、彼女の裾をガッチリと掴んで離さないかおるに板挟みにされている夢山。

誰かに助けを求めようと周りを見渡すも、触らぬ神に祟りなしと言わんばかりに皆目をそらし、これを止められる先生もいない。

夢山はどうしたものかと思いながら、落ち着いた表情で2人をなだめ始める。

「2人とも、3人であそぼうよ?」

「「それだけはイヤだ!」」

本当に仲が悪いのかと疑わしくなるほど息をピッタリ合わせて夢山の提案を拒否する2人は、再び彼女越しに睨み合う。

裾が伸びるから離してほしいなぁと思う夢山は案外冷静で、この状況に慣れていることがうかがえる。

「なぁ、夢山はどっちと遊びたいんだ?」
「そうだ、当然こいつよりもオレと遊びたいに決まってるよな?」

傍から見ればモテモテな女児だが、彼女はその齢にしてあることを悟っていた。

それは、この2人は私と遊びたいとか、私が好きだから付きまとって奪い合うのではなくて、お互いに「こいつだけには自分(夢山)を取られたくない」と張り合っているだけだということだ。

所謂、おもちゃの取り合いと一緒だ。

つまり、彼女にとってこれはとばっちりもいいところなのである。

「それじゃあ、キレイな泥団子作った方が勝ちね」
「どろ、ダンゴ…?」
「うん、先生が凄くピカピカにしてたの見たでしょ?あんな風に、上手にできた方が私とあそぶの」

恐らくこの2人は、夢山をきっかけにして遊びたい(勝負したい)だけだと何となく察していた夢山は、2人のバトルの内容を毎回決めて審判になる。
本人もそれを決めることが案外満更でもないようで、次はどうしようかとネタを考えて過ごす日が多くなっているようだ。

「よっしゃぁ!泥団子かなんだか知らねぇが、オレはお前よりじょうずに作って勝ってやる!」
「オレの方がじょうずに作る……!」

「それで、2人とも作り方は分かる?」

そういった途端に、土をかき集める手を止める2人。
普段はジャングルジムや鉄棒で遊ぶことの方が多い2人は、泥団子など作ったことがなかったのだ。

「じゃぁ、まずいっしょに作ろ?」

彼女の狙い通りのオチだったのかは分からないが、結局仲良く3人で遊ぶことに。

「しょうがねぇな、夢山がどーしてもっていうなら……」
「なにすればいい…」

さっきまで一触即発の修羅場だった状況を、ここまで最小限に抑えて尚且つ2人と遊ぶ夢山は、相当思考や判断力が幼児離れしている。
けれど年相応に泥団子を作る姿は、どこか楽しそうだった。


****


「よし、できたぞ!」
「これでいいのか?」

小さな手をめいいっぱい広げて漸く持てる泥団子を作った2人は、審判を夢山に委ねてソワソワと待機している。
夢山は2つの泥団子をさっと一瞥すると、口を開いた。

「2人ともダメ!」

普通は相手の好感を考えれば、2人とも上手だと褒めてあげれば喜ぶと思うだろうが、彼女は敢えてその結果を下したのだ。

彼らの性格上どちらも勝ちなど、宙ぶらりんな結果が最も嫌うものだと知っていたからだ。

「なんでだよ!」
「フシュゥゥゥ…!」

だからといって、負けることも望んでいなかった彼らは泥団子をせわしなく動かしながら地団駄を踏む。

夢山はその泥団子に指を指すと、解説を始める。

「2人ともヒビがまだ残ってるし、私のと比べても全然ツヤツヤじゃないもん」

「……そーだけどよ」
「……」

「それに、私はキレイにできた方が勝ちって言ったよね?2人とも、途中からどっちがおっきい団子に作るかきょうそうになってたじゃない」

「……」
「……」

ライバルに気を取られるばかりで、勝負の本題を見逃してしまった2人は、そこを指摘されてしまいぐうの音もでない。

だが、負けてしまったことよりも夢山に認めてもらえなかったことがショックだった2人は口を揃えて

「どうしたらキレイにつくれるんだ?」
「もう1回つくりかたおしえろ」

と、言うのだった。

またセリフが被って、睨み合う2人の前でえっへんと偉そうに仁王立ちする夢山はそれじゃあまずは土選びからだと、どこかの農業兼アイドル活動をしているメンバーのような発言をして、2人の手をとると、とっておきの穴場に連れていく。

夢山は特に意識していないようだが、たけしとかおるは少し恥ずかしそうに泥だらけの小さな手を握り返した。

この光景を2人の喧嘩を中々おさめることの出来ない先生が、目を丸くして2度見したことは言うまでもないだろう。