※ギャグです。
※なんでも許せる人向け。



イップスにかけられたかと思ったが、僅かに指先だけは動いた。
冷や汗と同様と羞恥心が一気に押し寄せて、心臓は今にも破裂してしまう勢いで暴れ回る。

酸素は充分すぎるほど吸い込んだというのに、何故か比例して浅くなっていく呼吸は、冗談を許さない妙に張り詰めた空気を吸っているからだろうか。

とりあえず……え、今、なんて言いましたか?

「キ……ス…?」
「それが1番手っ取り早い契約なんだ。どうだい?」

そんなの私も真田さんも嫌に決まってるだろう。出会って5分でキスってなんのラノベタイトルだ。
きっと嫌がっているであろう真田さんの表情をチラリと盗み見ると、ばっちり目が合ってしまい逸らされた。気まずい……。

「…ん?…1番手っ取り早いってことは、他に契約方法があるってことですよね?」
「気づかれちゃったか、残念…」
「幸村……!」

面白いものが見れそうだったのにと残念そうに微笑む幸村さん。ちょっとサイコ感あるなぁこの人。

「ほかの契約はわりと面倒だけどいいのかい?」
「流石にキスは真田さんにご迷惑ですからね」
「そうかい、なら……」

この時、キスより手間がかかることなんて知れているだろうと思っていた私を殴りたい。

「魔法少女(仮)として真田と共に活躍するんだ」
「魔法少女…かっこかり……」

なにその一昔前に流行った女の子とイチャイチャ出来るゲームの名前みたいなノリの魔法少女。
そして何故やたらめったら幸村さんは私を真田さんと絡ませたがるの。

「いかにも。いわば見習い魔法少女だ」

真田さんが魔法少女って発言するの似合わなさ過ぎて笑いそうになったけど、なるほど試用期間か。

「すみません、2つ質問です」
「なにかな?」
「その魔法少女(仮)の仕事内容って具体的にどういうものがあるんですか?あと、見習いはどのぐらいの期間で終わるんですか?」

なんだか本当に魔法少女になるのかってくらい夢のない現実的な質問だなぁ。

「具体的な魔法少女の仕事はもちろん人助けだよ。困っている人は真田と一緒に見つけること。見習いの期間は決まってないよ。君の働き次第だ」

どの質問の回答も抽象的過ぎるけれど、条件を飲まないとあのアカウントが晒されてしまう。キスは逃れられるし、人助けも重い荷物持ってるおばあさん助ける程度のものでいいはず。ここは黙って頷いておこう。

「よし、いい子だ。さぁ、君を新たな魔法少女(仮)として歓迎するよ」

「…よろしくお願いします」

なんとも実感のわかないまま、齢15歳にして魔法少女になりました。

あ!そうだ、もっと大事なこと聞くの忘れてた!

「あの、魔法少女になった時の服装ってどんな感じですか!」

レイヤーとしてちょっと、いやかなり興味がそそられる疑問だ。
見ず知らずの困ってる人にコスプレ姿を見られるのはちょっと恥ずかしいけど、どうせ魔法で記憶消せるだろうし、変身するのがちょっと楽しみかも…!

「え、君、自前で持ってるだろ?」

「え」

幸村さんは携帯を再び取り出すと、私の例のアカウントの写真を私に向けてきた。
真田さんもいるんだからそんなに公開処刑すな!!!

「なかなか可愛い服じゃないか」
「でしょ?これイベント直前に仕上げたんですけど、結構上手くいって……じゃなくて!
魔法少女って普通なんか謎の光に包まれて変身するじゃないですか!?ああいうフリルまみれの服とかペンダントとか、ないんですか!?」

「ああ、それなら」

真田さんがなにやら懐から小さなアクセサリーを取り出すと、私の手にそれを差し出す。

手のひらを覗くと、よく修学旅行のお土産で売ってる龍の巻きついた剣(つるぎ)がついたペンダントがあった。うわぁ…なにこれ。

「一応、仮とは言えど君は真田との契約者だからね。それと真田が一緒にいれば、変身が出来る」

真田さんがいなくちゃいけないあたりやっぱり完全に見習い魔法少女だな。

「…あ、あのぅ……」

「ああ、裸にはなったりしないから大丈夫だよ」

なんで先読みしてんだ。怖。
でも、真田さんに裸をモロにみられる心配はないみたいだ。良かった。

「じゃぁ早速、今変身してみるかい?」

「え!いいんですか?悪者もいないのに…」
「僕が許可するよ。真田」
「ああ、分かっている」

やはり何故か幸村ワールドが発動しがちだが、変身した服が楽しみだ。
ワクワクしながら次の指示を待っていると、突然真田さんの目がカッと開眼したかと思えば、

「ミラクルンルン!!!キューティーマジック!!!キェェエエエエ!!変身せんかぁアアア!!!」

いやお前が言うんかい!!!!

「ハッ!身体がアニメのキャラの温泉回で大事なところを隠す白い煙みたいなもので覆われていく…!」
「しかと目に焼き付けるがいい!これがお前の変身姿だ!」

一瞬で光に覆われ、強く瞼を閉じる。

一体、私はどんな姿に…!?