Secret flavor
「なぁ、リア」
それは夜、二人だけの時間。日課とも言えるティータイムを過ごしている時だった。
「お前は紅茶をいれるとき何かいれてるのか?」
リヴァイが紅茶のカップを小さく揺らしながら尋ねる。鮮やかな紅色が波打って、彼の喉を潤す。
「これと言って……あぁでも隠し味はいれてるよ」
「隠し味?」
「そりゃあもう、たくさん」
紅茶の隠し味、流石のリヴァイも理解できないといったように眉間のシワが深くなる。
それもそう、色や香りを変えるものは何一ついれていないのだから。 時間にすれば数十秒、思考を巡らせていたリヴァイに、
「乙女心が分からない人には難しいかな」
そう意地悪に言ってみれば、リヴァイはお手上げとばかりに視線を逸らした。たまには揶揄う側も楽しい。
「でもどうして急に?」
「……この前別の奴に振る舞われた紅茶じゃなにか物足りなかった。だからお前は特別なもんをいれてるのかと思っただけだ」
思いがけない言葉に胸が騒がしくなる。私の想いはちゃんとあなたに届いているのだと。最高の褒め言葉。
「で、答えは結局なんだ」
「本当にわからない?」
素直に頷いてみせた彼に教えてあげよう。
私のとっておきの愛の隠し味を。
「リヴァイが、今だけは何も背負わずただのリヴァイでいられますように、そう祈りを込めながらいれてるの」
隣に座る彼を見やると、良いもんだな、と予想外な答えが返ってきた。思わず聞き返す。
「意外だなって……リヴァイなら呆れるかと思った」
「そんな冷てぇ人間だと思われてるのか俺は」
そうじゃないけど。納得しただけだ。つまり私の紅茶が一番ってこと?
調子に乗って聞いてみれば肘で小突かれた。
幸せだ。この穏やかな時間こそ私が守るべきモノ。
世界で私しか作れない紅茶の味、どうかいつまでも忘れないで。