Scene of a rainy day



リヴァイに頼まれた買い物を済ませ、帰路についた時だった。
ポツ、という音と共に足元の石畳の色が濃くなる。空を見遣れば今にも本降りになりそうな色に、小雨のうちに走って帰ってしまおう、と荷物を抱え直し爪先に力を入れた……のだけど。

思ったよりも急速に機嫌を損ねた雲と、その時丁度通り掛かったのが馴染みの紅茶店だったこともあって、私は店内で雨宿りをさせてもらっていた。
謝罪と感謝の気持ちを込めて頭を下げると、気にしないでおくれとタオルを差し出された。
ご厚意に甘え、少し濡れた髪の毛とジャケット、荷物の水気をとる。

止む気配のない雨。急ぎの買い物でなくて良かったと安堵する。そう言えば、彼が好きな茶葉も残り少なかったような。お礼も兼ねて何点か購入する。
今日寄るつもりはなかったけれど、これも縁。

包んでもらっている間、暫く窓の外を眺めていると店主から声がかかる。

「止みそうにないし、急ぎなら馬車でも使うかい?」

そう、勿論考えた。リヴァイと出会う前の私なら間違いなく呼びとめていたし、きっと他の団員もそうする。まぁ今回は馬車を使う距離ではないというのもあるけれど、一番の理由は。

「いえ、今日みたいな日は使わないんです。とめる時に泥が跳ねるでしょう?」

店主は虚をつかれたように目を丸くした。

「珍しい事を言うね、よっぽどの綺麗好きときた」

ええ、そうなのと肯定の笑みを向ける。主人がね、という追記は胸に留めたままで。
視線を窓に戻そうとすると、来店を知らせるベルが鳴る。

「いらっしゃい。おやおや」

振り向けば見慣れた人。今度は私が虚をつかれる番だった。

「リヴァイ、何でここに?」
「出るとき傘を持ってなかっただろう」

貸せ、と半ば無理やり荷物を取られると、代わりに傘が手渡された。
ほら旦那、と店主から包みを受け取るリヴァイ。

「サービスしといたよ」
「いつも悪いな、助かる」

それから何度か言葉を交わして、少しだけ勢いの止んだ雨音に二人揃って店を出る。
それで?先程の答えを促す。

「だから迎えに来てくれたの?」
「あぁ。お前のことだ、どうせ馬車は使わないだろ?」

そう自信に満ち溢れた目に射抜かれて、思わず傘を開く手が止まる。彼は自分が何を言っているのか理解しているのだろうか。もう本当に、この人は。
締りのない顔を見せるのはなんだか癪に思えて、強めに傘を開く。

誰のせいで使えないと?さぁな。
荷物持ちで免じてあげる。
軽口を叩けば鼻で笑われ、早く行くぞと急かされた。
じんわりと胸の奥が暖かくなる。雨も悪くない。
天気とは真逆に私の心は晴れていった。