news of the wind
風が冷たい日だった。遠くの空を覆い隠す雲は、まるで私の心を写したかのようで。
予定の時刻を過ぎても、英雄の凱旋が告げられることは無かった。ぽつぽつと降り出してしまった雨は、彼らの為に止んでくれるだろうか。
それから数時間が経ち、雨は激しさを増していた。窓に叩きつけられる雨の音が、いっそう私の不安を煽る。
予定は未定とはよく言ったもので、帰還日時がずれることは度々ある。とは言えそれが安心材料になる訳ではなくて、やっぱり何度経験しても慣れやしないのだ。
就寝時間が過ぎても私の一日はまだ続く。睡魔はそう都合よく来たりしないし、寝る気にもならない。
記憶に残る彼をぼんやり思い浮かべる。きっと私が起きて待っていたことを知ったら、刻まれた眉間のシワがまた深くなって苦言を呈されるのは明白だけど、風が冷たいこんな日は彼の温もりが恋しい。
だから、どうか無事に帰ってきて。
私の弱い心の声に応えるかのように、どこからか風が強く流れ込み、部屋を仄かに照らしていた蝋燭が消えた。窓は閉めたはずなのに、どうして。
再度火をつける気にはならず、暗くなった部屋でじっとしていればふと、窓の外に仄かな光が見えた気がした。
間もなくして荷馬車の音が聞こえ始め、静まり返っていた兵舎内が徐々に騒々しくなっていく。
控えめな話し声と共に、部屋に近付いてくる足音に私は胸を撫で下ろす。あぁ、本当に良かった。
寝息を立てていることを想定したのだろう、静かに開かれる扉。雨に濡れ不機嫌そうなリヴァイに、私はタオルを差し出し微笑みかける。
消えたはずの蝋燭は、明るく私たちを照らしていた。