I need...
12月。年の瀬も近くなり何処と無く忙しくなるこの月を、私は盛大な溜息からスタートした。
目の前に小さな壁を作り出しているこの憎き報告書の束のせいではない。それはそれで、だいぶ憂鬱なのだけど。
ここ数週間、非番の日には街を練り歩き、彼が好きそうなものは一通り目にしてみたが、どれもしっくりこない。そう、こんなにも頭を悩ませる理由はただ一つ。手持ちのカードが少なすぎること。
付き合って日が浅い私はまだ、彼のことを理解するに至っていないし、手札を増やすには時間が足りなすぎる。ミスったなぁと何度目か分からない溜息をついた。 仕方ない、こうなれば。
「ということで、何か欲しいものあります?」
「ない」
ですよね。手元の書類から目を離すことなく、当の本人は言い切った。最初から返答は分かりきっていたので驚きはしないけれど。
何を聞いてもNoを答えそうな彼から、どう情報を引き出そうか頭を悩ませ始めると、彼は思ったよりも早く、と言うより意外な言葉をかけてきた。
「なんでもいいのか?」
「……私が用意できるものなら」
彼と目線が交わる。少しの沈黙の後、彼の言葉の意味を理解した私の心臓は、本来あるべき場所から飛び出てきたのかと思うほど煩く耳元で鳴る。
「なら、一つ歳をとったお前を」
その一言の衝撃に私の頭は対応しきれなかったらしい。 そこから先はよく覚えていないから。
♢♢♢
「あなたってたまに凄いこと言うじゃない?」
何気ない一言が過去へと誘う。覚えのない指摘になんのことだと問えば、腕の中のリアは最初のプレゼントの話、と静かに微笑む。
「お前も律儀に守ってるじゃねぇか」
「それはまぁ、嬉しかったもの」
それに、とリアが続ける。
「このプレゼントが無いと、リヴァイが寂しいかと思って」
女がゆるりと口角を上げる。まったく、癪に障る顔だ。先に仕掛けられるとつい逆転の手を探してしまうのは、兵士の性かそれとも。
「あぁそうだな」
素直に肯定されるとは思っていなかったのだろう、ぴくりと固まった女に、今度は男がゆるりと笑う。
「そういうところよ」
まるでつまらないとでも言うように顔を背け悔しがる彼女に、悪いなと思う。生憎わざと勝負に負けてやるような男ではないのだ。
だがこれ以上は悪手だろう。もっと拗ねられては此方としても困る。ひとつ息を吐いて、仕方ない奴めと心で悪態をついた。
「なぁ、まだ全部貰ってねぇぞ」
「仕方ないなぁ、もう」
柔らかく微笑む目元に自分がとった選択は間違っていなかったなと確信する。
「お誕生日おめでとう、リヴァイ」
やはり負けたくはないが、たまには勝たせてやるのも悪くないなと、一等機嫌を良くしたリアを見てふと思った。