2021-12-25
あなたに言ったことはないけど。
まだ私達が外の敵を知らずにいた時の話。
巨人に支配される地獄か、人間同士が領地や食料を巡って殺し合う地獄なら、あなたは後者の地獄を選ぶと言った。少なくとも人類全員が参加する必要は無いからなと。
その理由を聞いたとき漠然と、でも鮮明に、ああ私はだからこの人と生きていたいんだと感じたの。
そういう、リヴァイがいい、と願う瞬間が今まで沢山あった。
♢♢♢
椅子に深く座る彼に声をかける。ん、と一音で返事をした彼の目線は手元の本に向けられていた。そういえば友人達に勧めてもらった読みかけの本を置いていたなと納得し、表紙の柄を指でなぞる彼に読んでみたら、と問いかける。
少し間が空いて、けれど栞の位置は変わらずに戻される。後でお前から聞けばそれでいい、なんて。それ恋愛小説だけど、とふざけてみせると彼が思い切り顔を顰めるから耐えきれず笑ってしまった。
間もなく零時。
多分私は当の本人よりこの日を楽しみにしていると思う。別の部屋に隠していたプレゼントを手に、待ち望んでいたその一瞬、部屋を包む静寂を五文字で破る。何かを噛み締めるように一度ゆっくりと瞬きをした彼に、いつもの人を射るような鋭さは見受けられず、ただ暖かい気持ちが波打つだけ。
リヴァイおめでとう、そしてありがとう。
この世界で私に出逢ってくれて。あなたの幸せを誰よりも祈ってる。
音にできない、敢えてしない、そんな想いも全部伝わったらいいなと口付けをひとつ。離れてすぐ後を追うように彼からもうひとつ届いたから、多分きっと受け取ってくれたのだと思う。
彼がリボンに指を通し箱を開けると、ほんの少し口許が緩む。多分出会った当初では気付けなかっただろう。リヴァイの小さな変化を見つけたとき、胸の奥にじんわりと沸き立つ感情があること、あなたは知っているかしら。
「淹れてくれるか」
「もちろん」
香りをテーブルへ運べば赤く可愛らしい花が出迎えてくれる。
そうね、今日ぐらいは二人だけの世界よ。