gaze
よく、資料室の窓際の席に座る彼女を見かけた。
資料室と言っても彼女は調べ物をしに来たわけでも、誰かに頼まれた用事がある訳でもない。彼女いわくいい眺めだから、だそうだ。
「サボりに来たの。内緒ね?」
彼女の視線が窓の外から僕に移る。
「サボりに来たにしては書類が多いですね」
「手ぶらで来たらバレちゃうでしょ」
悪戯に笑う彼女の手は止まらずに、書類に次々と少し癖のある字で確認の印が載せられていく。
話すようになってせいぜい数週間、だからその場に静寂が訪れることも多々あるし、彼女が資料室に来るまでは一方的に僕が認知しているだけだった。何せいつも隣には。
お昼を知らせる時計が鳴り、彼女は頬を綻ばせた。
ゆっくりと手元の書類を片付け始め、暫くして。
「リア」
彼女の名が呼ばれる。入口に視線向けるとリヴァイ兵士長が立っていた。
「お疲れ様」
「お疲れ様です」
じゃあね、と向けられた視線に黙礼で返す。彼女の視線がリヴァイ兵長に戻ったのを見て、僕は昼食の時間を少しズラそうと思った。
「最近よくあそこにいるな、気に入ったのか?」
「そうね、部屋より捗るし」
「居るだけで息が詰まりそうだが」
「そんなことないよ」
答えながら食堂の扉を開ける。まぁでも確かに、本に囲まれてるリヴァイはちょっと面白いかも。
嗅ぎ慣れたパンとスープの匂いに食欲がそそられる。朝食は食べ損ねたから、昼は少し多めに食べても許されるだろうと自分を納得させながら、今度リヴァイも行ってみてと付け加え列に並んだ。
僕は今日も資料室に来ている。窓際の席に座ることはないけれど、いい眺めだよと言っていた彼女の言葉を思い出し、ふと近付いてみる。
確かに訓練所がよく見える。今もまさに訓練の真っ最中だ。あまり見ない顔ばかりだから、先日入った新兵達だろうか。
あたりを眺めていると見知った上官を何人か確認できた。その中には窓際の彼女もいて、なるほどと僕は彼女の言葉の意味を理解する。
いい眺めか、それはそうだろう。
本来ならいつもこの時間はリヴァイ兵長のスパルタ訓練だからな。