I'm sweet enough



部屋に戻ると机の上に新聞の切り抜きが置いてあった。その記事によれば、紅茶の専門店が新しく近くに出来たらしい。考えるまでもなく俺の為だろう。
誇らしげにこの記事を切り抜くリアの姿が容易に想像出来た。
何にせよリアが教えてくれた折角の機会だ。次の非番に存分に味わうとしよう。


記事に詳しく場所が載っていたおかげで、迷うことも無く辿り着いた。徒歩で十分程度だろうか、今日は風も涼しく散歩日和で気持ちが良い。
もし空いていればテラス席なんていいかもしれないなぁ、そう期待を膨らませながら、彼によって開かれた扉をくぐった。
店内に入り席に通されると、間もなくしてメニューが置かれた。時間をずらしたおかげで店内は空いていて、私たちが座っているテラス席に至っては貸切状態。アンティークに装飾された店は私好みで、隣に座る彼の様子を伺えば、リヴァイにも好感だったようで嬉しくなる。


静かで有難いというのが正直な感想だった。時間のおかげもあるだろうが、栄えている通りから少し離れている事が功を奏している。無駄な音がない店内は非常に好ましかった。
リアにも見えるようにメニューを置き直し、一通り目を通す。
一般的に販売されている茶葉は勿論、専門店ならではのブレンドティーや、オリジナルティーも多数並んでいた。その中でも聞き馴染みのない茶葉を選びメニューからリアへ視線を移した。
あれこれ迷う姿を横目で見て安堵する。どうやらリアもそれなりに楽しんでいるらしい。


迷った末この店のオリジナルティーにした。次に来た時は悩んだもう一つの方を頼もうと決意して。
運ばれてくる茶器はどれも統一性のある可愛らしいデザインで、カップには小花があしらわれていた。
リヴァイの喉が上下したのを見て、自分もそっと口をつける。
美味しい、思わず零れた一言にリヴァイも頷く。悪くない。茶葉の甘みが喉を潤していく。
他愛もない話をしながら最後の一杯になったところで、砂糖を一つポトンと落とした。普段はストレートでしか飲まないけれど、たまには趣向を変えてみる。さらに甘くなった紅茶を飲み干し、ポットは空になった。
穏やかな時間は直ぐに去ってしまう。

「リヴァイも砂糖入れてみたらよかったのに」

砂糖なんてあまり手に入らないんだから、と帰りの身支度をしながら一息つく彼に尋ねてみた。
リヴァイがストレートを好むことは承知の上で。

「いいや……もう十分甘かったんでな」

どういう意味、と開きかけた口は、リヴァイの薄い唇に塞がれた。
伝票を持ち、何事も無かったかのように会計へ向かう彼の後ろ姿を、慌てて追いかける。不意打ちで彼から与えられた熱の方が、紅茶に溶けた砂糖よりも甘かった。