伊達刀と主の具足

「あーあ、こんなに錆びちゃって」
「…そうだな」

二人の目の前には伊達政宗の鎧と兜がある。土中に埋葬されていたそれは赤く錆びついて、有名な三日月型の前立ては朽ち果てて残っていない。すぐそこには前の主の眠る霊廟があるが、もちろん会話などできない。

「よくこの具足と一緒に出陣してたなぁ…」
「そうか」

江戸時代に入ってから伊達家に来た大倶利伽羅は戦場での主を知らない。しかし光忠は懐かしそうにその具足を見ていた。

「こんなに錆びてボロボロになってさ…僕の記憶の中ではよく磨かれて綺麗だったのに」
「当たり前だ。何百年経ったと思ってる」
「そうだけど…人間だけじゃなくて、鉄もあっという間にボロボロになっちゃうんだなって」
「……」
「悲しいね」
「…そうだな」

人間はすぐ死んでしまう。でも、刀や鎧だってきちんと手入れをしてもらわなければ朽ちてしまう。記憶だっていつか曖昧になってゆく。柄を握る主の手の感触すら既に薄れてきてしまっていた。

「さて、久々に政宗公に挨拶しに行かないとね!」

光忠はいつものように微笑むと前の主が眠る霊廟へと歩いていった。




*
政宗様のお墓参りしてきた記念!三日月の前立ては木製らしいです。




(2019/10/27/BACK)