白い人、透明な人

「なんか、色相が濁らないらしい。白なんだってさ、何しても」
「色があるだけ恵まれてるじゃないか」
「そうだね。本人は何やっても白のままだから自分はシビュラに見放されてる、とか思って孤独を感じてるようだけど」
「シビュラに見放される、か。それなら僕らは何なのだろう。ああ、でも…僕らは孤独なんかじゃない。みんな一緒だ」
「…そうだね」

彼のつぎはぎのある輪郭に目を落とす。この頬は誰のもので、この耳は誰のものだったのだろう。時々、そんなことを考える。ゆったりした動作で足を組み直す彼はいつもどこか物憂げだ。

「私からしたら白にしかならないなんて、シビュラに好かれてるように感じるけど」
「彼には僕と反対の人が必要なのかもしれない」
「反対?濁らせるってこと?」
「そう。きっと自分の色相が少しでも濁れば、シビュラに見放されてたのではなく、ただ濁りにくいだけだったのだと安心できるはずだ」
「…そっかー。色相を濁らせてくれる人、か」
「恐らく、ただの犯罪者じゃダメだ」
「難しいなぁ…」

そのとき、腕の端末が鳴った。宜野座さんだ。

「はい」
『すぐに戻ってこい、槙島絡みの事件だ』
「はーい」

適当に返事をしてソファから立ち上がる。

「じゃあ、また来ますね。先生」

セラピストに姿を変えた鹿矛囲に手を振り、私は部屋を出た。




(2019/10/27/BACK)