刑事課×政府

2200年。刀剣男士の運用が始まる五年前のこと。私は2112年の東京に来ていた。

歴史修正主義者たちの元を辿れば、その多くは潜在犯に堕ちた歴史学者だという。ということはシビュラシステムの運用がなければ歴史修正主義者は現れなかったのだろうか。今回の視察はシビュラのもたらす“平和な社会”を見てくることが第一の目的だった。私の生まれた時代はすでにシビュラシステムはなくなり、シビュラを踏襲した別のシステムが運用開始している。免罪体質者の脳の集合体を用いるなんてこともなくなった。相変わらず危険な思考の人間は隔離されるが、以前よりは人間味のある判決をしてくれるようになり、平均寿命も21世紀並みになった。

2112年では公安局刑事課と事前に話を通してあったため、刑事課一係の宜野座、狡噛という二人の刑事と共に潜在犯の収容施設に来ていた。私の詳しい身元を知らない二人はいくら局長命令といえど、一般人の私を潜在犯と会わせることに反対していた。狡噛は勝手にしろ、という感じだが宜野座はイライラしているようだった。しかし、私だってこれは仕事の一貫なのだ。殺処分をぎりぎり免れた幕末史を専門とする歴史学者に対面すること。そして話すこと。

目の前にいる男は後に歴史修正主義者になる。今ここで殺せてしまえばそれが手っ取り早いのだが、それでは彼らと同じように歴史をねじ曲げることになってしまう。私がするのはあくまで23世紀の彼が更生するための鍵を探すこと。そのために彼と話をして、思考を知らなければならない。





「施設から出る前に色相のチェックをしておいたほうが良い」
「そうですか?」
「あんなに長時間潜在犯と一緒にいたんだぞ」
「…そういうもんですか」

彼と話し終わると宜野座にそう言われた。測っても無駄だと思いつつ、彼の腕のデバイスが私の色相を読み取るのを待つ。しかし、結果は表示されなかった。

「私の色相も犯罪係数も、たぶん、測定できませんよ」
「なんだと?」
「白にすらならないでしょう。透明。そこに人なんていないみたいに」
「なぜわかった。お前は何者だ」
「それは明かさないって取り決めのはずですよ。さて、行きましょうか」

過去の修正は罪でも、未来の修正は罪ではない。



(2019/10/27/BACK)