二人の君

*二人目の君

「こんにちは、槙島さん」
「ああ。久しぶりだね」

僕に声を掛けてきた少女の顔を見るのは昨日ぶりだ。昨日の怪我の跡がまだ痛々しく残っている。と言っても、誰かにつけられた怪我ではない。段差に躓いて転んだのだ。

「怪我、痛むかい?」
「痛いですよー。本当に困っちゃいますよね。私は走るなってあの子に言ったんですよ?」
「彼女は少し注意力が足りないからね」
「まったくです!」
「そうだ、一緒にお茶でもどうかな」
「いいですね!ぜひ」




*一人目の君

「聖護さーん、こんにちわー」
「今日も元気そうで何よりだ」

僕に声を掛けてきた少女の顔を見るのは昨日ぶりだ。でも今日の彼女は少し怒っている。

「私ともお茶してくださいよぉー」
「そうだね。色相をクリアにできたら行こうか」
「もー!あの子ばっかりずるい!」
「そうやってよそ見してるとまた転んで怪我するよ」
「え?…うわぁあ!」

また転びそうになる彼女の腕を掴むと、今回は怪我をせずに済んだ。まだ前の怪我が治りきっていないのに、新たな傷を作ってはもう一人がかわいそうだ。



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少女は二重人格


(2019/10/27/BACK)