僕らは土方歳三の刀、だよね?

戦国時代から帰還した第2部隊の堀川はいつものように報告や着替え諸々を済ませると、相棒である和泉守兼定のもとへ向かった。歌仙と談笑しているのを珍しいな、と思いつつその背中へ声をかけると和泉守がおお、と言って振りむいた。

「還ってたのか、堀川」
「?…うん、さっきね」

いつもなら国広と呼ぶはずの和泉守に堀川と呼ばれたことに小さく首を傾げながらも歌仙とは反対側の、和泉守を間に挟むようにして座った。

「堀川は本当に和泉守のことが好きだね」
「だって僕は兼さんの相棒で助手だもの。一緒にいるのは当然だよ」
「オレぁ、それが不思議なんだがよ。オレらの接点といえば幕府側だったことくらいしかないのに何でそう世話をやいてくれるんだ?…まぁ、有難いっちゃ有難いけどな」

何を言ってるんだろう、と国広は微笑みを浮かべつつも背中にはひやりとしたものを感じた。僕らの接点は土方さんじゃないか、と。幕府側だったことくらいだなんて、変な言い方をするものだ、と。

「それはやはり、堀川は幕臣の刀で、君は将軍の親類の刀だからじゃないかい?かつての主従関係は結構刀にも受け継がれるものさ」
「親類っつっても分家のさらに分家の五男だけどな。もしあいつが将軍家の嫡男だったなら、同じ兼定でもアンタのほうを献上されただろうよ」

将軍の親類とはどういうことだろうか。自分は土方歳三の刀であるから、幕臣の刀と言われても、まぁ少し違うのだが完全に間違いではない。だが、将軍の親類というのは?土方歳三はそんな大層な家柄の出ではない。石田村の庄屋の息子だ。どういうこと、なんだ…?堀川は何も言えぬまましばらく二人の会話を聞いていたが、ついに聞くことにした。

「僕らは土方歳三の刀、だよね?」

しかし和泉守は眉をあげた。

「誰だそれ?」
「え…」
「オレの主はみんな松平家だけだぜ」

何が起こっている?
そこへこんのすけが駆け足で焦ったように話しかけてきた。

「第2部隊は至急戻ってください!さきほどの任務先で歴史の改変が発覚しました!」
「歴史の改変?どういうこと?!」
「その…我々と時代遡行軍の戦闘をみてパニックになり逃げた一部の住民により、当時まだ赤子だった土方歳三の先祖が住民に踏まれて死亡していたんです…」
「そんな…」
「歴史修正力によって史実通り新選組はでき、堀川さんは新選組副長の刀になりますが、それは土方歳三ではないんです」
「だから…」

思わず和泉守を見た。土方歳三がいないから僕らは相棒じゃなくなってしまった。今この本丸には土方歳三がいない歴史が流れている。

「何で僕やこんのすけは正しい歴史を覚えているの?」
「出陣していた第2部隊と私には現在の誤った歴史は通用していないようなのです」
「あるじさんは?」
「ダメでした。ですが出陣の許可はもらっていますので、さあ早く!」










「兼さん」
「お、国広。戻ってたか」
「ねえ、兼さん。僕らの前の主のこと、話して」
「は?どうしたんだよ、急に」
「いいから、話して」
「話せって言っても…土方さんの何を話せばいいんだ?」
「…っ!ううん、もういいよ。ありがとう、兼さん」



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ってことが起きてもおかしくないと思うんだけどなーってアニメ観ながら思った




(2019/10/27/BACK)