槙島聖護という人がいた話

※槙島さん生存ルート50年後






いつも窓際に座っている人だと思った。レースカーテンから漏れる淡く優しい日光に真っ白な髪をキラキラと反射させて、紙の本をペラペラと捲る。その姿は神々しくて神様のような厳かな雰囲気さえ感じる。

「槙島さん、お昼ご飯ですよ」
「ああ、ありがとう」

トレーに載せた天然食材の昼食を持ってくると、ページを捲る手を止めて、本を閉じた。本を端に寄せて空けられたスペースにトレーを置くと膝をついて槙島さんの顔を覗きこむ。

「体調とか何かお変わりありませんか?」
「無いよ。何も」

どこか虚ろな退屈そうな顔でいつも同じ返事をくれる。短い会話を二、三すると私は立ち上がり、槙島さんにしたことと同じようなことを別の人たちへ繰り返していった。




それから一週間後――――…

朝食の時間が来ても槙島さんが起きてこないことを心配して訪ねてみると、彼は今まで見せたことのない穏やかな笑みを浮かべ、亡くなっていた。

「槙島さん…」

あなたはずっとこの世界から出たかったんですね。







私のなかで槙島さん生存ルートっていうとこういうのしか思い浮かばん。槙島さんを幸せにはしたいけど絶対死なせるのがこのサイトの特徴。槙島さんは長生きしたくなさそう。




(2019/10/27/BACK)