サッカー部のイケメンや憧れの先輩なんていうのはテレビで見るアイドルと同じようなもので、縁なんてなかった。きっと自分はカッコ良くないけど優しそうだね、みたいな人と結ばれるんだろうなぁと成人する頃にはすでに思っていた。そもそも好みのタイプはイケメンじゃないし。そんな私なのに今の恋人は誰もが認めるイケメンだ。結局イケメンが好きだったんだろうって?うーん…嫌いではないけど好きでもない。なぜ付き合ったのかと言われれば、びっくりするほど熱烈なアタックに折れたからだ。それに彼はイケメンなだけでなく、気遣いができて料理もできるという中身もイケメンだった。勿体ない…私には勿体ない。もっと彼に相応しい女の子がいるのになぁと時々思う。少なくとも彼との結婚は無い。私にまだ結婚する気がないっていうのもあるし、やっぱり光忠は完璧すぎる。欠点がない。まぁ、そのうち私に愛想つかすだろうから、それまではイケメンと付き合ってる私を楽しもうとは思ってるけれども。
って、ついさっきまで思ってた。
「へぇ、そうなんだ。僕?僕はすごく幸せだよ、分けてあげたいくらい。…え?うん、可愛くて愛しくて仕方無いんだ。猛アタックしてよかったよ」
放課後の教室から聞こえてくるのは光忠の声だ。もしかして私のこと話してる?なんだその…聞いてるこっちが照れるような台詞は。
「きっと運命だったんだろうなぁ」
どこの乙女?
しかし、次の言葉によって背筋がひんやりとした。
「絶対に逃がさないよ、何があってもね。ん?あー、まぁ考えたくないけど…もしそうなったらできちゃった婚狙おうかな」
なに、いってるの?
「もし妊娠したら、嫌がられても絶対結婚するよ。あはは、そうだね。逆のパターンはよくあるよね。でもまぁ、僕の希望としては新婚生活も楽しみたいから何年か経ってからが良いんだけど」
ちょっと待って、まだ付き合って2ヶ月だよ。妊娠も何もキスすらしてないのに。
「早く僕にめろめろになって、僕無しじゃいられないようになってほしいなぁ…」
逃げなきゃ。
光忠にはこういう闇というかヤンデレっぽさがあるといいなって思います