!ジョルノの妹
ジョルノがパッショーネのボス
「妹?おまえの?」
優雅にサラミをスライスしていた手を止め、男は警戒心と好奇心を併せた眼でわたしをとらえた。
「詳しい事はわからないんです。スピードワゴン財団の人間が、それだけ言って寄越してきたので」
「妹ったって……髪も眼も、色がおまえと全然違うじゃあねえか」
「ミスタ、君は知らないだろうけど。僕は君たちのチームに会う少し前までは、彼女と同じ色の髪と眼をしていたんですよ」
金色の三つ編みを携えた青年の話は説得力の欠けるものだったが、彼は揺るぎない自信を持って続けた。
「スタンド能力が発現した時に、この色になったんです。父が英国人で、ブロンドでした」
スタンドとは何のことだろうか。
口を開く前に、ミスタと呼ばれた男が納得したように唸り声をあげ、天井を仰ぎ見た。暫しの沈黙の後、三つ編みを揺らして振り返った青年が再び口を開く。
「君、歳は幾つに?」
「……四月で十八に」
「僕と一緒だ。妹は妹でも、僕たちはどうやら双子の可能性があるようです」
同年には見えない落ち着き払った言動と自信に満ちた瞳。幾つもの修羅場をくぐってきたであろう事は明白で、やらわらかな物腰のその裏、きっと何人も殺している。そもそも此処はギャングの住処であるし、彼はギャングだ。そういう類の人間が街を浄化している事は承知しているが、それはひどい矛盾だと思う。直接的な関わりを持つのは出来る限り避けたいと思うのが普通だ。
二人の視線、見えない圧に耐えきれず後退りしたところで、金髪の青年がわたしの腕を掴んだ。
「やだ、あ……ッ」
ダンスでも踊っているかのように身体が回転し、 青年の胸に背を預ける格好となった。眼前のミスタがニヤニヤと不躾な視線を投げかけてくる。
「ジョルノ、何を始めようってんだ?」
「失礼」
あろうことか、青年──ジョルノは頸からセーターを引き下げ、わたしの肩口を大きく曝け出した。慌てて胸元を押さえてそれ以上の露出を食い止める。
「離して!」
身を捻ってみるが到底抜け出せそうにない。ジョルノの指先が肩口に触れ、息を飲んだ。
「……ミスタ、これを」
のそのそとやって来たミスタが暴かれた左肩を覗き込み、まじかよ、と呟いた。次いでわたしの顔を覗き込み、数度ジョルノと見比べる。ミスタの瞳からは、小馬鹿にしたような色は消えていた。
「……俄かには信じ難いが、君がもし本当に僕と血の繋がりのある兄妹ならば、いずれ君にもスタンドが発現する可能性がある」
腕が解放され、弾けるようにジョルノから離れた。数歩後退りをしたところで何かにぶつかり、
こちらを見下ろすミスタと目が合った。最悪だ。
「兄妹?スタンド?何の事だかさっぱりだわ!」
わたしを胸板に収めた彼は、両の二の腕を柔らかく、しかし決して離さない意志を感じる力で掴み込む。彼のボスは、突如寄越された女の処遇を考えてあぐねているようだった。
「で、どうするよ」
嗾けるようにミスタが尋ねる。
「こうなった以上、スピードワゴン財団の真偽を測りかねている場合ではないでしょう。そのアザが何よりの証拠だ」
「アザねえ……」
「ちょっと!」
ミスタが無遠慮にセーターを引き延ばし肩を覗き込む。
「僕との関係が知れたら君の身に危険が及ぶでしょうし、しばらくうちで面倒を見ましょう」
混乱する彼女は、一先ずペリーコロに任せた。今後彼女にスタンドが発現すれば、能力により利用出来るだろうし、上手く丸め込まねばならない。
「なんだか昔を思い出しますね」
静かな声に、ミスタは苦笑しながら頭を掻く。
「また女の子を護衛するのかぁ?」
「まあそうなりますね。よろしく頼みますよ、ミスタ」
20180722
続かない