「君、何だってそんなに泥だらけなんだい」
呆れ顔の露伴がわたしを見下ろしている。買い出しの帰りらしく、ビニール袋をぶら下げて。ねえ、わたしの分のおやつはちゃんとあるわよね。
「うわ、引っかき傷があるじゃあないか。どこに行ってたんだ」
公園。雨が上がったから、お散歩。水溜りにお日さまが反射して、とっても綺麗なのよ。でね、いちばん大きな水溜りを覗き込んでたら、子供が泥だらけのボールをぶつけてきたの。酷いでしょ。そのあと近道しようと破れた金網を抜けたらね、引っかいちゃった。そう言うと、露伴はわざとらしくため息を吐きながらドアを開けた。
「子供と変わらんな……ほら、風呂に行くぞ。まったく、余計な仕事を増やすなよな」
わたしの好きなぬるいシャワーが身体を叩く。背中の傷にしみてばたつくと、無理やり押さえつけられた。
「暴れるな。ばい菌が入ったらどうする。他に傷はないだろうな……」
ひゃっそんな!そんなところまで触らないでよ、露伴のえっち!すけべ!ああ、でも気持ちいい。
「ん?お前、もしかして太ったか?」
下腹をむにむにと揉んだ露伴が言い放つ。ひ、ひどい!女の子は少しお肉がついてる方がかわいいって、仗助が言ってたわ!あまりにも腹が立ったので、無遠慮にうごめく手を引っかいてやろうと思い、やめた。露伴の手は大事な手だと知っているから、やめてあげた。
「なんだ名前、拗ねてるのか。自分で怪我をしてきたくせに、まったく勝手なもんだな」
ドライヤーをかけながら見当外れな事を言う。漫画家のくせに、そんなに鈍くていいのかしら。
「傷は深くないから、何もしなくて大丈夫だろ。ほら、乾いたぞ」
頭を撫でられてもそっぽを向くわたしを気にもとめず、ドライヤーを仕舞った露伴は机に着く。なんと、わたしを放って原稿を進めようというのだ。ちょっと、そんなのってないんじゃないの。
「名前、邪魔をするんじゃあない」
ねえ露伴、遊んでよ。ねえ、ねえ。
「後で遊んでやるから」
「……にゃあ」
「いい子だ」
露伴がそう言うなら、仕方がないわ。仕事が終わるまで待っててあげる。
20170301