ジャッジメントI
内部粛清の【ジャッジメント】を開催する!レオの声が、Knightsのスタジオに響く。唖然とした顔をしている三人と、訳が分からないという顔をしている一人。ちょっとぉ、いきなりどういう訳?いち早く立ち直った泉が、名前を見る。
「わからないです。とりあえず言われた通りに手続きだけしました」
「名前、『王さま』にでろ甘じゃなぁい?」
承諾する前にお兄ちゃんに相談して承諾得るとか、考えもしなかったわけぇ?つんつんと名前のおでこをつつく泉に、なんだなんだ!?とレオが目を見開いた。
「お前、ついに『テンシ』と縁を切ったのか!あっはは!いいぞいいぞ!面白い!ただセナの妹は良くないぞ〜、あいつネチネチ口うるさいかな!」
姑もびっくりだ!腕をくんでうんうんと頷くレオに、まだそこの段階まで行ってないですよ、と名前が突っ込む。まぁ色々あっていち、に、さん、よん、四人目の兄ですかね。指折り数えた名前に、はぁ!?と泉が叫ぶ。
「俺の前に三人もいるの!?誰!チョ〜うざぁい!」
「えっ……言うんですか」
「言うの!」
「兄さんでしょ、それからけーくん、れーくん、泉先輩」
「そのけーくんとれーくんってぇ?」
「蓮巳先輩と朔間先輩」
「あっれ〜おかしいなぁ、なんかこの世に居ないはずの人の名前が聞こえてきたんだけど」
なんでこう、夢ノ咲の人間しかいない訳!スタジオの隅で憤慨する泉を、まぁまぁと嵐が宥める。ズシン、と肩に重みを感じて見れば、凛月が名前を逃がさないとでも言わんばかりに後ろから抱きしめていた。
「知り合いだったの?」
「まぁ昔色々あって、ですね?」
「『れーくん』って、呼んでるんだ」
じゃあ俺も『りっくん』って呼んでよ。名前の首筋に鼻を寄せてすん、と嗅いだ凛月は、今日もおいしそうな血と舌なめずりをする。血は怪我した時しかやりませんし、さすがに今からりっくんはハードルが高すぎるので凛月先輩で勘弁してください。と凛月の頭をおしのけながら言う名前に、えぇー、と凛月が不満そうな顔をする。
「ハードル高くないよ。めっちゃめっちゃ低い。海抜より低いから。ほら『りっくん』」
「りっ…凛月先輩」
「……………」
「な、なんですか、ひっ、首に歯が当たってる、や、やめて下さい!」
「くまくん、殺すよ」
「いった…地面に投げられたんだけど……セッちゃん怖ぁ」
しくしくと泣き真似をする凛月、たとえくまくんでも"妹"に手出したら殺すからね!と怒る泉、そんな二人を宥める嵐、そしてこんな状況でインスピレーションが湧き始め笑いながら作曲するレオ。混沌に満ち溢れた場で遠い目をする名前に、あの、と司が声をかけた。
「司ぁ〜」
「わわっ、いきなり抱きつかないでください!」
そう言いながらもトントンと宥めるように名前の背中を撫でる司。ところで聞きたいことがあるんですが、釈然としない表情の司に、ジャッジメントのこと?と聞けばはい、と肯定が返ってくる。えっとね、説明しようと言葉を選ぼうとした名前に、レオのできた!と大きな声がかぶさってくる。
「ってことで!【ジャッジメント】は来週!おれ、今のところ一人だけど今からメンバー集めるし、名前は貰ってく!じゃあな!」
「えっ、」
ぐいと手を引かれてよろけそうになるのを踏ん張る。じゃあ名前、行くぞ!歩き出したレオに引きずられる様にスタジオを出ていけば、レオはふんふんと鼻歌を歌ったまま右往左往していた。
「レオくん」
「なんだ?」
「メンバーに目星は付いてるんです?」
「それを今から探すんだろ〜?」
「………………」
まずは教室だ!名前と手を離し、教室に向かって歩くレオの後ろを追いかける。たのもーう!そう叫びながらガラリとレオが教室のドアを開けば、中にいた人がギョッとしたようにこちらを見た。
「なんだ月永か、学校に来てるのならもうちょい早く来い。もう放課後だぞ」
「お、クロだ!うっちゅ〜☆と…………ナ、ナ、ナズ?」
「俺の名前は仁兎なずなだっ!」
「おぉー!ぴょんぴょん跳ねる!それにしてもお前、ちっちゃいなー!」
「レオくんも大して変わらないと思うけど。こんにちは、鬼龍先輩、仁兎先輩」
「宝生か、月永のお守りか?」
「ちっちゃいとかお守りとか、おれのことバカにしてるのか!?」
がるると唸るレオに、色々手続きもあるのでさっさとしないと私Knightsの方に行きますよ、と脅せば、待って待ってちゃんとやるから!とベージュのカーディガンが伸びる。予備のカーディガン色違いで何枚か買っておこうかな、と伸びていくカーディガンをぼんやりと眺めていれば、話は決まったらしい。紅郎となずながレオの臨時ユニットに加わってくれることになった。これで三人。あと一人はどうするのかな、と生徒会室で貰ってきた臨時ユニットの申込書に名前を書く二人を眺めれば、レオがこちらをじっと見つめていることに気付いた。
「レオくん?」
「なぁ、名前。ちょっと頼みたいことがあるんだ」
いつになく真剣な表情のレオに、名前は何事かと困惑する。私にできる範囲でなら、やれることはやりますよ?頷く名前に、レオがあっははは!と笑い始めた。
「やっぱり持つべきものはボンクラ『皇帝』の妹だな!」
「レオくんそれるかちゃんに同じ言葉言えますか?」
「おれが悪かったです」
♪
へぇ、面白そう。いいよ。そう言いって名前の手から臨時ユニットの申込書に名前を書き込んだ英智に、本気?と名前が問掛ける。至って本気だよ、構成メンバー欄の一番最後に自分の名前を書き込んだ英智は机から取り出して承認印を押す。
「ところで月永くん」
「んー、なんだ?」
「このユニットの名前はもう決まってるの?」
「いや!それもこれから考える!」
「じゃあ僕が決めちゃうね」
「おー、まかせる」
五線紙に音符を書きながら上の空で返事するとレオに、じゃあ勝手に決めちゃうね、と英智がユニット名の欄に文字を書き込む。その手元を覗き込んだ名前は、うわぁと顔をひきつらせた。
「相変わらずネーミングセンスがひどいわね」
「人生欠点が一つや二つあった方がいいって言ったの、名前じゃないか」
「それは言ったけど今ここで発揮しなくていいじゃん」
Knight Killersなんてそのまんまじゃない、もうちょっとなんか捻れなかった?ボールペンでしっかりと書き込まれたそれはもう修正するのも面倒くさく、名前はひたすら文句を言う係に回る。一応ナイトクルーズをイメージしてるんだけど、付け加えた英智に、何言ってるのかちょっとよく分からない、と名前が顔を顰めた。
「とりあえず来週にB1のステージを作るとして、曲とか衣装とかステージは?」
「曲はレオくんで適当に作るらしい。ステージは今考えてるし、衣装はちょっとお姉さまと相談してどっちか白か黒か決めたいところ」
「僕は黒の衣装がいいな」
ほら、fineって白い服多いから、たまには違う色合いもいいなぁ。ニコリと笑いながら首を傾げた英智に、じゃあこっちは黒を使うって伝えとく、と名前はスマホを取り出してメッセージを打ち込んでいく。レッスンルームはもう一週間分まとめて予約してるし、あとは好きなようにしてていいよ、生徒会室を出ていこうとする名前に、えっ、待って、と英智が待ったをかけた。生徒会室のドアを開けたまま、名前がなに?と振り返る。
「作戦とかないの?」
「………ないよ?」
「いやいやだって、【ジャッジメント】だよ?」
「作戦はないよ?一応出てもらう順番は考えるけど」
化学実験の助手の校内アルバイト遅れるからまたね、レオを生徒会室に置きっ放しにして、名前はまた明日、と手を振って部屋を出た。