スタフェスII
「よし!クリスマスパーティーをしよう!」
「なんですか、唐突に」
打ち合わせが終わり、いきなりそう言い出したレオに、全員が困惑する。王様の言うことは絶対!などと言って全員にあれこれと指示を出したレオは、じゃあまた夕方にここで集合な!と言い残し、嵐を連れて出ていった。ケーキを任された凛月は、じゃあ時間もないしと部屋を出ていき、残りの食材を任された司は、プレゼントも含めどこで買おうか考え中。部屋の飾り付けを任された泉は、ぶつくさと言いながらも近くのショッピングモールを調べていた。名前はと言うと、大人しく部屋で待ってろというレオの命令に大人しく待っていられる訳でもない。コタツから出て、コートを手に取れば、どこに行くつもりなの?と泉に捕まった。
「え、外です」
「どこ?」
「家に」
「何しに?」
「プレゼントを取りに…?」
「なんでそこ疑問形なの?」
かさくん、泉の声に、はいと司が返事をして顔を上げる。コートをもう既に着込んだ名前に少し驚きながらも、どうかしましたか?と言った。
「名前が家に寄るって言ってるから、着いてってくんない?俺は商店街の方いくから」
「はぁ」
「食べ物もついでに買ってくるから、なんか食べたいのあったら言って」
「いえ、それは私に任された仕事なので」
「私一人で帰れるんですが…?」
「だぁめ、かさくんに着いてってもらうこと」
「過保護!」
「なんとでも言えば?」
「ぐぬぬ」
ほら、決まったならさっさと行く。スタジオの鍵閉めるからね、とくるくると鍵を回した泉に、しぶしぶと名前は司と一緒に学校を出て家に向かう。昨日の夜も雪が降っていたため、校門前の大通りはまだ雪が積もっている。凍結に注意した道で滑らないように気をつけながらもさくりさくりと雪を踏み締め、歩き出す。しばらくすれば、名前の住んでいる一軒家が見えた。鍵を出そうとした名前を、司が止める。
「どうしたの?」
「今家には誰も居ませんよね?」
「居ないはずだけど…」
「ですよね。しかし明かりが付いてたので、気になってしまって」
「え、」
空き巣?不安そうな顔をする名前に、そうでは無いと言いたいのですが、と司が名前から鍵を取って鍵穴に差し込む。一応鍵は掛けたらしく、ガチャンと音を立てて空いたそれに、司は名前を後ろにさがらせてドアを開けた。
「おかえりなさいおじょ」
「空き巣ですね!お覚悟を!」
「えっ!?ちょっ、お待ちください!」
「あら?高岡」
「えっ?」
名前と目の前の男を見比べ、老けた…?などと言う司に、名前は思わずクスリと笑う。父の方の高岡よ、と言えば、現在は愚息がお嬢様に着いておりまして、と高岡が頭を下げた。それに慌てたのは司だ。申し訳ありません、と頭を下げる司に、使用人に軽々しく頭を下げるものではありませんよ、と高岡がたしなめる。
「なんで家にいるの」
「愚息が本邸のパーティーの手伝いに駆り出されたのを見かけまして。代わりに私が」
「ふぅん、仮にもあなた執事長でしょ、こんなところで油売ってて大丈夫なの?」
「大丈夫ですよ。ぜんぶ愚息に任せてきましたので」
「成長の冬ね」
「左様でございます。それにまたお嬢様のお世話ができると思ったら爺は」
「あなたまだ爺って年齢じゃないわよ」
さぁさぁ外は冷えますから、中へどうぞ。家の中に招かれ、司は中に入る。リビングに通されお菓子とお茶を出され、それにウキウキと手をつけてハッと司は我に返った。
「ここでのんびりしている時間はありません!」
「あー、確かに」
「おや、何かございましたか?」
「実はかくかくしかじかで」
「なるほど、ユニットの皆様とクリスマスパーティーで必要なお料理の調達を任されたと」
それでは私にお任せ下さい。とんと胸を叩いた高岡が、時間になったら作った料理を学校に届けるからと司を言いくるめ、クリスマスプレゼントの選別に集中してくださいと送り出した。
♪
『なぁお前、人をベッドに縛りつけるの得意だろ!?』
そんな電話が来たのは、司を見送ってからしばらく。家で置いてきた仕事をしていた時だった。開口一番なんてこと言うんですか!と憤慨する名前に、電話口の向こうで、レオがちょっとシュウを縛ってくれないか!という声と、そのさらに向こうで騒ぐ宗の声が聞こえた。
「何事ですか」
『シュウのやつ、風邪ひいて死にそうになってんのに動こうとするからさ!前にボンクラ『皇帝』が名前に怒られてベッドに縛り付けられた!って言ってたから!』
「……………、分かりましたよ。行きます」
『ほんとか!?たすかるー』
「住所教えてください、車で向かいますので」
『おう!待ってる!』
電話を切った名前がパソコンを閉じれば、すぐさま後ろでコートが差し出される。腕を通し、作り終えた料理を一つの大きなバスケットにまとめた高岡が、それでは行きましょう。とドアを開けて待っててくれた。車に乗り込めば、車はゆっくりと走り出す。閑静な住宅街を通り抜け、賑やかな商店街も通り過ぎる。そこから少し進んだところにある、少し古びた、ここの辺りでは少し大きな屋敷が宗がみかと住んでいる家らしい。車を降りてインターホンを押せば、しばらくしてからみかが顔を出した。
「ごめんなぁ、名前ちゃん」
「いいえ、むしろこんなことで来てしまって申し訳ないです」
優美で趣がある内装の家を、みかの先導で歩く。大きな扉の前で立ち止まったみかが、コンコンとノックしてドアを開いた。騒がしい部屋の中を名前が中を覗けば、中は大騒ぎになっていた。ベッドが出ようとする宗を、抑えるレオと嵐。顔をのぞかせた名前に気づいたレオが、お!来たか!と叫んだ。
「今のうちだ!縛っておいてくれ!」
「一体何をするつもりかね!?」
「ごめんなさい斎宮先輩、でも風邪を完治させないとできることも出来なくなっちゃいますから…」
「宝生、そのな縄はなんだ……!?」
「先輩ごめんなさい!失礼します!」
*
「と、言うことがあってな!」
「鮮やかな手つきだったわ〜、見とれちゃった」
「ちょっと嬉しくない特技ですけど、役に立てて良かったです」
ケーキをつつきながら言う名前に、本当に助かったのよ、ありがとうと嵐が頭を撫でる。されるがままなりながら、飾りつけの施されたスタジオを名前はぐるりと見渡した。
「飾りつけ凄いですね」
「当たり前でしょ?」
でもまぁ後片付けが大変だからそのことは考えたくないけどぉ。少し肩を落とした泉に笑いながら、片付けはみんなで手伝いますよ、と言えば、ま、言い出しっぺが片付けるのもありだよねぇと泉がにやりと笑う。それにレオが反応し、凛月が乗っかり嵐が宥める。賑やかな雰囲気に、名前の頬が緩む。
「こんなに賑やかなChristmas Partyは初めてです」
「そうね。私たちのクリスマスパーティーは表面上は賑やかだけど、水面下ではみんなギラギラしてるもの」
「はい、うちの場合は挨拶を交わすだけの粛々としたものですけど」
「うちのに来る?招待状出すよ?」
名前の言葉に、司はピンと一瞬背筋を伸ばしたが、次の瞬間には少し緩んだ。大丈夫ですよ、と断った司は、今こうやって一緒に過ごしていますし、とはにかむ。
「…………、」
「えっ、あの?」
「なんでもなーい」
「二人ともー?プレゼント交換するから来てちょうだい」
「はーい、行こ」
「はい」
色とりどりのラッピングは、見ていて心が踊る。まずは、といち早く動きだしたのは泉だった。真に編んでいたというマフラーの試作品で、色違いのあみぐるみがみんなに手渡される。それから、と泉は四角い箱を名前に差し出した。
「はいこれ。スケジュール帳」
「わぁ、ありがとうございます」
「来年も俺たちKnightsのプロデュース、よろしくねぇ」
「もちろんです!任せてください」
「よしよし、いい子」
じゃあ次はアタシかしら!ファンシーショップの袋を開けながら、嵐が配っていく。ダイエット器具に抱き枕、可愛らしいボールペンにヘアバンド。名前ちゃんはこれよ。渡されたラッピングを開けば、可愛らしいぬいぐるみのストラップが顔をのぞかせた。