「動かないで*」
 菖蒲の細い脚が、俺の肩を軽く押した。何故かおとなしく布団に逆戻りしている自分に混乱しつつ、うすら微笑む菖蒲の唇にごくりと唾をのんだ。
「良い子でねんねしててね?」
「菖ちゃん、ちょっ……」
「こぉら、誰がしゃべっていいなんて言ったかなぁ?」
 うふふ、と吐息交じりに笑って、俺の股の間に体を滑り込ませた菖蒲。べろんべろんに酔っている彼は、熱で赤くなった指先で俺のズボンの上を撫でた。まるで猫でも撫でているような優しい触れ方だったが、視覚の暴力ともいえるような様子を見せつけられて、すぐに下半身が重くなる。
「よしよし、いい子いい子[V:9825]」
「ぐ、ぅっ、菖蒲、やめ……」
「もう……ここはこんなにいい子なのに、どうしてお口は悪い子なのかな」
「っあ、んっ、んぐ」
 ちゅ、と唇が触れ合った。さすがに酔っぱらっていても、キスの仕方まで上手くなる訳ではないらしく、バードキスばかりが送られてくる。
 これが逆に、もどかしくてたまらない。舌を入れたい、と頭の中でガンガンと響く欲求は、ますます俺を焦らした。触れた唇をなめてみても、菖蒲は目を細めるだけだ。
「どうしたの?」
「っ、し、舌入れてェ……」
「えへ、ごめんね。僕のお口、今からふさがっちゃうから……」
「は……!?」
 がちゃ、と俺のベルトが外れる音がした。
「わぁ、もうこんなにしてるの?」
 細い指が、僅かに俺の下着をずらした。自覚があるくらいにガチガチになってしまったそこは、あっさりと菖蒲の手で引きずり出されてしまう。
 自分のことながら、引くくらい興奮して、腹につくんじゃねぇかってくらい起ち上がったそこにビビッてしまう。ひきつった顔のまま、菖蒲の方へと視線を上げると、彼とばっちり目が合った。
 横髪をすらりと耳にかけて、菖蒲はくすくすと笑い声を零した。
「……文句ばっかり言うお口より、こっちのほうを可愛がらないとね?」
 股座にゆっくりと近づく小さな唇に、喉が震えた。
「菖蒲!! やめ――」
「僕に命令しないで」
「あ、っっ?!」
 ぎゅう、と根本を握られ、痛みに思わず声をあげた。と同時に、赤く小さな舌が、その根元に這わされた。先走りで既に滑ったそこに、菖蒲の唾液が絡まっていく。
「へぇ、なんだか不思議な味。ちょっと苦いんだ」
「菖ちゃんがンなことしなくても……」
「なぁに、気持ちよくないの……?」
 不満そうに頬を膨らませると、菖蒲は顔をあげた。やっと止めるか、と思ったが、今度はその口が亀頭のあたりを一気に咥えこんでしまう。
「っあぁ、ぐ……」
「んぅ、ふふ、あむ」
 思わず声を漏らすと、平素の無邪気なトーンで、彼が笑った。この状況でその声で笑われると、自分があの菖蒲にとんでもないことをさせているような背徳感に襲われる。……実際は、彼が勝手に進めているコトなんだけど。
「……