「ええい、散れ泥人形ども!」
およそ細身の少女が震えるとは思えない巨大な斧が、人型をした【何か】を薙ぎ払う。首のとれた【何か】以外は、次々と不愉快な音を立てて再生を繰り返している。
そのあまりにも気味の悪い/人間とは思えない光景に、目まいを感じてしまう菖蒲は、一歩後ずさりした。が、それを許す少女――いや、王様ではなかった。
「何をしておるショーブよ。焼き払え」
「は……!?」
「ふむ、王に対してその反応……余の妃でなければ首がとれておったところだぞ?」
にっこりと微笑む様子は、花畑を目の前にして喜ぶ乙女と何ら相違ない。けれどその威圧感は、乙女の持ちえないものだ。
今すぐ逃げ出したい、と思った。この場からか、王様からかは、よくわからないが。
「ああ、そなたが愚図っていた故に、またぞろ再生し始めた。もう余はつかれた!」
「王様!」
「そう喚かずとも解っておる。そなたのフラミンゴのように愛らしい声がかれるではないか」
「そ、それ、褒めてるの?」
「むむ? そなたはフラミンゴは好かぬのか?」
思わずツッコまずにはいられない、感覚のずれだ。ローマ人はフラミンゴの鳴き声とか知ってたのだろうか。
一瞬にして緩む空気、しかし【何か】にその文脈は通じないのか、あるいは無視を決め込んでいるのか。視界の端に、一斉に移る【何か】の姿。
速い。あまりにも速い。刃がすぐ目の前に移り、
「――不敬だぞ」
それを上回る速さで、王様の魔法が【何か】を吹き飛ばした。
本能的に目をふさぐ。眩しい閃光が、突き刺さるような音をあちらこちらで立てている。瞼の裏の白んだかんじがなくなったころ、目を開けた。
「ウッ……」
頭蓋部分がはじけ飛んだような体が、いくつも転がっている。
しかし、ぐちゃぐちゃとグロテスクな音も幾らか聞こえてきた。まだ、再生している【何か】があるようで――
「ショーブ。我が妃よ」
「!」
鈴の鳴るような美しい声(ふつうはこういう比喩を使うはず……)が、菖蒲を妃と呼んだ。――思わず、足がすくむ。
あまり、妃と呼ばれるときに、いい思い出がないのだ。
「とどめを刺すがよい、ほら、」
ずるり、と、かろうじて残っている頭部を掴み、美しく微笑む王様。
「自分は手を汚せぬなど、言わぬであろう?」
「そ、それはそうだけど……」
「本当は、そなたにこそ火炎を使わせたいのだが」
うっとりと、金の瞳が菖蒲を射抜く。
ユーリューのそれとは深みが違う、深淵のような視線。
「炎になにもかも焼かれたそなたにこそ、赤が似合う。余の赤を纏うことを許そう。青も緑も、そなたの傍にあってもありきたり過ぎてつまらぬ。余の美的感覚に少しも掠らぬのだ」
ゆえに、と彼女――彼は息を零して、
「王の命令である。これを焼け、ショーブよ。余はそなたのどんな表情(かお)も見てみたい」