叱られるのは愛ある証拠?





イノセント





1人きりでとても退屈だったから、私はふらりと散歩に出かけることにした。
私がこうやって勝手に出歩くことはいつものこと。
そして帰宅後、ある人からこっぴどいお説教を受けるのもいつものこと。
この日も周辺を少し歩いて、すぐに帰ってくるつもりだったのに。


「……迷子、かな」


帰れなくなってしまった。

見知らぬ森の中、私はすっかり途方に暮れた。
どこまで行っても同じような景色ばかり続くものだから、これ以上歩くのも無駄な行為としか思えない。


「……疲れた」


そう呟いてその場にへたりと座り込む。
これからどうしようかと考えてみたが、どれだけ考え込んでも妙案は浮かびそうにない。
どうしようもなくなって不意に空を見上げた。


「――あ」


その瞬間、ぽつりと私の頬を濡らした一粒の水滴。
あれよあれよという間にその水滴は量と勢いを増し、私は慌てて雨宿りできる場所を探した。
そして大木の根元が腐って人1人分の穴が空いているのを見つけると、そこへ体を押し込むようにして隠れた。


「……寒い……」


雨に濡れた体は時間と共に体温を奪われていく。
私は体を小さく丸めて俯いた。
体はあまりの寒さで小刻みに震えている。
辺りは日没後のように暗い。
太陽は完全に厚い雲の上に隠れてしまったようだ。
こんなことになるなら彼の言いつけを守っておとなしく留守番をしているべきだったと、今さらになって反省する。
雨はまだ止みそうにない。
次第に心の不安が大きくなる。


「ハオ……」


その名を呟いた瞬間だった。


「――権兵衛!!」


顔を上げるより先に強い力で腕を引かれ、視界が暗闇に包まれた。
同時に感じたのはあたたかな温もりと愛しい彼の香り。

ああ、来てくれたんだ……

そう思った瞬間、私は意識を手放した。
びしょ濡れの体はかなりの体力を消耗していたようだ。

彼の声が、遠い――




「あれほど勝手に部屋を出るなと言っただろ?」


数時間後、目を覚ました私は彼の部屋で拷問とも言える説教を受けていた。
彼は至極落ち着いた口調で笑顔も見せていたが、その表情は明らかに造られたものだった。
目が笑っていない。


「それで、他に何か言いたいことは?」

「……ごめんなさい……」


小声で謝罪の言葉を口にすると、彼は深くため息をついて私の手を取りそのまま自分の方に引き寄せた。


「……手」

「え?」

「寒かっただろ」


そう言うと彼はグローブを外し、私の手を両手で優しく包み込んだ。
彼の体温が直に伝わり、冷えきっていた私の手は少しずつ温度を取り戻していく。


「……ハオ」


彼の表情を見ると、もういつもの優しい笑顔だった。


「大好き」

「僕も同じく」





ハオ様に叱られたい←
彼は普段こんな風に誰かを心配したりしないと思うのですが、ヒロインちゃんは特別なのです。

それでは、最後まで読んでいただきありがとうございました*゜


2012/02/12 ちろこ