突然のにわか雨
君とふたり、雨宿り





あめふりのおつかい





俺があいつとイイ感じになるときは、大概いつもこうなんだよな。
ツいてないんだ。


「もーっ!!
 いきなり何だよ、この雨!」


地面を叩く雨粒に思わず不快感を露にした。
そんな俺の様子を見た権兵衛は、何が楽しいのかくすくすと吹き出している。


「どーして笑うんだよっ」

「え、ああ、ごめんね。
 かわいいなーと思って」


……今のは大ダメージ。
かわいいって何だよ、かわいいって。
俺だって男なのに。

ますます俺は不機嫌になる。


「ねえ、悟空。
 さっきからどうして怒ってるの?
 別に早く帰らなきゃいけないわけじゃないでしょ」

「そうだけど、でも……」


せっかく久しぶりに2人きりで買い出しに出かけるチャンスだったのに、真っ黒な雨雲に邪魔された。
不機嫌になるのも当然だろ?
だけど権兵衛はそれほど雨が嫌いじゃないらしいことを知っていたから、言いかけた言葉を胸にしまい込んだ。


「でも、何?」

「……何でもない」

「変な悟空」


雨さえ降らなければ今頃はまだ買い出し中で、仲良くいろんな店を見て回れたはず。
きっと権兵衛と2人きりで出掛けるのが羨ましくて、三蔵たちが俺に呪いをかけてるんだ。
八戒とかホントにやりそうだもんな。

そんなことばかり悶々と考えてはみたものの、雨が止む気配はなくて。



「……静かだね」


少しの沈黙のあと、権兵衛がぽつりと口を開いた。
周囲に俺たち以外の人影はなく、水滴が地面に打ち付けられて跳ねる音だけが耳に届く。
普段は三蔵が俺たちにキレて発砲したり、悟浄が手当たり次第女の人に声をかけたり、八戒がものすごく黒い笑顔で怒ってたりして、こんなに静かな時間は滅多にない。

だからなのか、妙な感覚に襲われる。
まるで世界に自分だけしか存在していないかのような、そんな感覚。

怖いくらいに静かで、寂しくて。
そう、あの頃みたいに。


「――悟空?」

「……っ!」


権兵衛の声で我に帰る。


「ご、ごめん」


もう檻の中なんかじゃない。
わかってるはずなのに。


「……ね、悟空」

「ん?」

「手、繋いでもいい?」

「え」


思わぬ申し出に困惑した。
権兵衛の大きくて丸い瞳が、真っ直ぐに俺を見つめている。
こんなこと三蔵たちにバレたら絶対に殺される、けど。


「繋いでもいい?」

「……ん」


こくりと頷くと、権兵衛は嬉しそうに指を絡めてきた。
――指、細くて長い。
女の子だもんな。

ドクン、と心臓が跳ね上がる。


「権兵衛っ……」

「私がいるよ」

「……は?」


予期せぬ言葉に目を丸くした。


「悟空は、1人じゃないから」


そう言って権兵衛は微笑んだ。

――どうしてこう、いつだって言ってほしい言葉を、見せてほしい表情を、ほしいときにくれるんだろう。
雨に打たれた俺の心を温かく包んでくれるみたいだ。


「……サンキュ」

「どういたしまして」


雨音が響く中、繋いだ手から伝わる温もりにそっと心を寄せた。





うちの悟空とヒロインは常にこんなふうにじれったい感じです。
とっくに両想いなのに、なかなか一歩が踏み出せないチェリーたち。
そんな2人を温かく見守るヒロインラブなお三方も忘れずに。

それでは、最後まで読んでいただきありがとうございました*゜


2012/01/13 ちろこ