華奢な体に眠る力 手に入れるために近づいた ただそれだけだったんだ 愛しい君へ 「……権兵衛」 誰にも聞こえないくらいの小さな声で呟いて、隣で眠る少女の髪を優しく撫でる。 そっと頬に触れると、んっ、と身動ぎして少女はゆっくりと目を開いた。 「ハオ……起きたの?」 「うん、権兵衛の寝顔見てた」 僕がにっこり微笑むと、少女の頬は微かな薄紅色に染まった。 「やだ……恥ずかしい」 「可愛かったよ」 僕が吐くのは、偽りの愛の言葉。彼女をそばに置く理由は、ただ単に利用価値があるからに他ならない。 必要なくなったら捨てればいい。 今まではそうしてきたじゃないか。 非力な少女1人消すことくらいどうってことない―― 「ハオ」 急に呼び掛けられ、ハッとして我に返る。 気づけば権兵衛が心配そうな瞳で僕を見つめていた。 「どうしたの?」 「え、ああ……何でもないよ」 そう言ってお決まりの笑顔を作る。 感情を隠した穏やかな笑顔。 知られてはいけない。 彼女にだけは、決して。 そんな僕の心を知る由もない権兵衛は、へらっと屈託のない笑顔を見せた。 「大丈夫ならよかった」 疑うことを知らない純粋な瞳。 ズキンと胸が痛んだ。 「権兵衛」 「ん、なあに?」 「……好きだ」 絞り出すようにして言葉を紡ぐ。 言い慣れているはずの言葉。 今は口にするのがこんなにも苦しい。 「好きなんだ、君のことが」 こんな気持ちは初めてだった。 その笑顔を守りたいんだ。 他の誰でもない、僕自身の手で。 気づかないふりをしていた。 ずっと前から気づいていたくせに。 「え、あのっ……」 権兵衛は一瞬パッと目を丸くしたかと思うと、すぐに頬を染めて恥ずかしそうに俯いた。 しばらくそわそわと落ち着かなかったが、意を決したのか軽く息を吐いて顔を上げた。 そして僕と目を合わせると、照れながらも柔らかく微笑んだ。 「私もハオのこと大好き」 ストレートな言葉にドクンと心臓の鼓動が大きく波打つ。 ――止められない。 「きゃっ……」 次の瞬間、僕は乱暴に権兵衛を自分の胸へと引き寄せた。 か細く柔らかいその身体は、少し力を入れれば容易く壊れてしまいそうだ。 これまでにないほど腕に力を込め、彼女を強く抱きしめる。 「ハ、オ?」 「少しだけ……このままでいさせてくれないかな」 権兵衛は腕の中で小さく頷くと、それ以上は何も言わなかった。 ――もしもこの先、彼女と共に在ることが許されるのなら。 彼女の笑顔が決して曇ることのないよう、守り続けてみせる。 ――そして、この命尽きるまで守りきることができたなら。 そのときは君に、僕の素直な気持ちを伝えよう。 偽りなんかじゃない。 真実の愛の言葉を。 うちのハオ様は寝込みを襲うのが趣味らしいです。 こうなるとただのヘタレながきんちょですね。笑 それでは、最後まで読んでいただきありがとうございました*゜ 2012/01/13 ちろこ |