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奇怪な名を付けた天才たちは、ひとり、またひとりと踏み躙られ嬲られ。屠られ、護られて――今日がその最後。
スポットを浴びる美しい蒼白の青年は、今まさにこの夢ノ咲学院の頂きを手に入れようとしていた。

フィナーレを知らせる鐘の音が聞こえる。
それは終わりの始まり。
鳴り止まない歓声はその合図。
散って行く鮮やかな血にどうか祝福を。

「(これが、最後)」

この終わりを無かったことにしてはいけない。
そうだ。残さなくては、ならない。
無かったことになんて、絶対にしてはいけないのに。
私はシャッターを切ることを忘れて、ただひたすらにその光景を目に焼き付ける。

これはひとつの正義の果て。
悪しき怠惰のもたらした革命。
きっと未来の幾万の人が救われ、安寧を得ることになるのだろう。

私は何にもなれなかったのに。
私は何もなせなかったのに。
そんなのは関係なく、決して消えない傷と痛みを残して、時計の針は進んでいく。

ああ、私はこの景色を。



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