#04
荷物の運搬の往復を終えれば、ちょうど迎えの青葉が来たところらしい。
だいぶ慌ててきたのだろう。頬には汗が伝っている。
「あれっ、妻瀬さん?日和くんと一緒だったんですね」
「さっき偶然会って。用事も案外早く終わったから、差し入れとか買ってたんだよ」
「うんうん!ぼくたちは感動的な再会をはたしたんだよね!つむぎくんも聞きたい?」
「言わなくていいから」
たしかに漫画とかドラマっぽい展開ではあったけど、他の人に伝えられるとなると気恥ずかしい。
それを察したらしい巴はニコニコして私を撫でている。私はベンチに乗り切らない荷物の山を抱えているというのに。
「待っている間にキッシュも買ったからね!あとで一緒に食べようね」
「此処で買ったの?」
「うん。ぼくたちの思い出の場所だし、なによりたくさん種類があったからね。再会も記念して。……まぁ?鹿矢は一度『Eden』のライブに来ていたみたいだけど」
よく考えればぼくだけが久しぶりだったんだよね、と零す巴にこの雰囲気は不味い、と荷物を盾に彼の視界から逃げれば、そうはさせないと積み上がっている箱を持ち上げられて再び視線が合う。
「あはは。そ、それ知ってるんだ……」
「当然。きみの『インターン』を知ったきっかけでもあるね。……さて、ぼくへの挨拶も無しに帰ったことの言い訳があるのなら一応聞くけれど?」
つい数週間前のことだ。
たしか『インターン』前の事前学習という体で、私は『Eden』のライブに招待された。
豪華なステージに箱いっぱいの黄色い声。
それらを浴びて艶やかに舞う旧友に見惚れたのは記憶に新しい。
もちろん、本来なら挨拶に出向くべきだったのだけど。
招いてくれた“彼”の配慮で、“彼”以外のメンバーに直接挨拶をすることはなく帰路に着いたのである。
『インターン』中ならばともかく、夢ノ咲学院の『広報』として多少顔が知れている私が敵地の現場で『Eden』と接触するのは良い状況ではなかったからだ。
理由は察しているに違いない。
それにこれらの理由を言い訳として並べても巴の機嫌を損ねるだけだろうし、それなら、素直に謝って伝えるべきだったことを伝えることが最善だ。
「……黙っててごめん。今更だけど、すごくカッコ良かったよ。巴もあんな表情するんだって驚いたけど。本当に素敵だった。途中からサイリウム振れなくなっちゃったもん。……次は連絡入れるよ。番号は変わってない?」
「…………ぼくたちの番号は知っているよね。『Eve』の補助係なんだから」
『広報』さん、とわざとらしく吐かれたそれはたぶん、仕返しに近いもので。
頭では理解しているものの突然距離を置かれたみたいで少し悲しい。
「……巴の意地悪」
「……冗談だね。分かっていると思うけど今のはちょっとした当てつけだからね、鹿矢?」
でもその顔はまあまあ可愛いね?と巴は私に荷物を押し付けてぽんぽんと頭を撫でる。
どの顔が良かったんだか。今なんか絶対、眉間に皺が寄っていたのに。
「はぁ、巴のほうが可愛いよ。すごく可愛い」
「うんうん、ぼくが可愛いのは当然だね!」
「……あ、あの。二人とも、仲良しなのは分かったので、とりあえず学院に向かいましょうね。英智くんが首を長くして待っていますから」
いつの間にか目の前には二台のタクシーが止まっていて。
バタン、と後部座席のドアが開いて、青葉はやりにくそうに声を上げた。
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