Thanks For Clap



【START GIRL】3





〜clap連載〜
※前回話はこちらから


逃げ惑う人達の悲痛な声や、子供の泣いている声に私は動けないでいた。こんな非日常、知らない。知りたくもなかった。海兵さんはその騒ぎに目を見開き、私に向き直る。

「アオイちゃん!ここにいては危ない!なるべく騒ぎから離れた方へッ!!!」

「っ!!まっ、!」

待って!と声をかけようとしたが、その声は素早く走り去っていった海兵さんが悪いのか、周りの騒がしい声にかき消されてしまったのか、彼に届かなかった。ぐっと拳を握り、震える足を思いっきり叩く。動け!動け!動け動け動け!!するとようやっと動くことが可能になり、人の波に呑まれるように山奥へと駆けて行った。


暫く経った頃だったか、そんなに経っていないかもしれないが、だいぶ遠くへ来た。元から少し足が速いのもあり、人の波から外れ、奥深い山に足を進めた。買ってもらったのがサンダルだからか、たまに木を引っ掛けてできた傷がドクドクと痛い。早く治療したいが、お金もないし、街へ行っては危ないかもしれないし…突然トリップして何だこの仕打ちは。
はぁと溜め息を吐く。体力にも限界がきており、どこか休める場所がないかとキョロキョロ辺りを見回す。

すると、ポツンと小屋が目に入った。
誰かいるかもしれない!速く脈打つ心臓を押さえて、小屋に近づく。人の気配はしないみたいだが、そろりと扉に手をかけ、中を伺う。誰もいない。残念なようなほっとしたような気持ちが襲ったが、暫くはここに居させてもらおう。タオルらしきものも何もない為、私はパジャマの余っている裾部分を頑張って引きちぎり、足に巻いた。
そして小屋の隅っこに腰をかけ、顔を膝に埋めた。これから、本当にどうすればいいのだろうか。あのまま海軍に保護してもらったほうが身の安全の為には良かったのかもしれない。あ、海兵さんの名前、聞きそびれてしまったなぁ・・・・・・あの人、生きていてほしいなぁ・・・・・・夢、から覚めないかなぁ。
途端に人々が逃げ惑う姿や、街が壊されている様子を思い出してしまい、不安が押し寄せ、疲れからか次第に落ちていく瞼をそのままに眠ってしまった。





「おい!お前、大丈夫か?」

「・・・ん、んぅ・・・・・・」

誰かに身を揺すられ起きてみると、目の前にわりと至近距離に人がいた。私はそれに驚いて、ビクッと肩が揺れる。え、待て待て、この人・・・誰だっけ。その人は白い髪を後ろに撫でつけるようにしており、とても渋い強面の人だった。でも、何か見覚えのあるような顔に眉を寄せた。私、内容は覚えているけど、名前覚えるの苦手なんだよなぁ。

「・・・驚かせて悪いな。こんな山奥まで避難してる奴がいるなんて、驚きだ。大丈夫だったか?」

再度聞いてくれたその人は厳つい顔にも関わらず、かっこいい笑みを浮かべた。それに安心した私はお礼を言おうと声を出そうとするが――ひゅっと音が鳴るだけだった。
あ、あれ・・・声が、出ない・・・・・・??

「なんだ、声・・・出ないのか?」

そう言うと困ったように頭を搔く。私はそんなことよりも、自分の声が本当に出なくなるとは思わなかったのだ。目を見開き、自分の喉に手を当てる。最初は、きちんと声が出ていたのに・・・どうして。

「お〜!ここにいたか!・・・ん?そのお嬢さんは?」

「どうやらここまで逃げてきたみたいなんだが、声が出ないみたいでね」

「ほぅ、そうか・・・」

ガチャりと音がした扉へ目を向けると、私は更に目を見開く。赤い髪に目には痛々しい三本の傷を携えて、太陽のように笑うその人は身を屈めて、手を出してくれた。私でも知っている有名な、海賊――


「とりあえず、立てるか?」


――四皇の一人、赤髪のシャンクスだった。


感想など励みになります!↓
※お名前も記載していただければ、replyでお返事します!


top