「すみません、遅くなりました…!」
「いいよいいよ。気にしないで。私服も可愛いね」
先日飲む約束をしてからすぐにその約束を果たすことになった。仕事が終わりスーツ姿で近場を行くわけにも行かず普段着を着て約束の居酒屋に到着したかと思えば先に五条が来ており慌てて駆け寄るなまえ。
「んじゃ入ろっか」
まるで女性慣れをしている彼は先になまえを入らせてくれる。五条と飲むのはこれが初めてでありなまえも緊張してしまう。用意されていた席に座るとメニューを渡してくれる。
「好きな物頼みなよ」
「五条さんもちゃんと飲んでくださいね?」
「程々にね」
そう言う五条の口元は嬉しそうでなまえが何を頼むか悩む姿を見てはにやにやしている。決まったメニューと飲み物を頼むと暫くして運ばれてくる。2人は乾杯とグラスを合わせるとそれを合図に飲み始めた。
*
「五条さん全然飲んでないじゃないですか〜」
「……なまえちゃんはお酒が弱かったんだね」
お酒2杯目で既に酔っているなまえ。頬を染め少し呂律が回ってない様子を見て酔ったのは一目瞭然だ。
「ねぇ、なまえちゃんさ」
「??はい」
「付き合ってる人いるの?」
「あはは、そんな人居ませんよ〜」
「ふーん、じゃあ僕とかどう?」
「五条さんは高嶺の花みたいで近づき難いですよ」
五条家を知らない人は最早呪術界では居ないだろう。そんな家柄と付き合うだなんて発想もなまえには微塵もなかった。水を飲み干すとサングラス越しから綺麗な瞳が見える。
「ん〜、こりゃ困ったな」
「どうしたんですか?」
「いや、手強そうだなと思って」
「??変な五条さん」
くすりと笑うと五条もつられて笑みを浮かべる。話す内容も他愛もない話で時間が過ぎていってしまう。
「五条さんの瞳って綺麗ですね」
「そう?」
「何だかずっと見てられそう」
「……見てみる?」
サングラスを外すと整った顔が見える。真っ直ぐになまえを見る。澄んだ瞳がより良く見えてなまえもまじまじと見てしまう。
「五条さんモテるんだから早く結婚したらいいのに」
「まぁ、周りからもそろそろ身を固めろとか言われるけどね」
「やっぱり」
「でもそうゆーのって好きな子としたいもんだしねぇ」
「っふ、五条さんにもそう言う考えあるんですね」
「…僕のことなんだと思ってるの」
「でもいいなぁ、五条さんと結婚」
「そう?」
「毎日甘やかしてくれそう」
「そりゃもちろん」
「自信満々ですね?」
「こんなナイスルッキングガイな五条悟と結婚とか毎日甘やかすよ?」
「ふふ、頼もしい」
からんと水を飲むと少し眠気くるなまえ。かと言ってせっかく誘ってくれたのにそんな素振りを見せるのも失礼だと彼女の中で葛藤し始める。
「なまえちゃん疲れてる?」
「え」
「あんまり無理しない方がいいよ」
「そんなことないです!」
「そう?でも心配だからここまでにしとこうか」
「五条さん…」
「あ、どうしてもって言うなら今から僕の家で宅飲みしてもいいけど?なーんちゃって」
「??いいですよ」
「え」
まさかの返答にまたもや自分の耳を疑う。今のは完全に下心のある誘いだったのにまたいいと言われるとも思っても居なかった。恐るべし飲みの場。幸いここから家までそう遠くもない。
「……じゃあ行こっか?」
彼の苦悩
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